勘違い3。ただの気の迷い
「ほら。立ち止まってないで入った入った。部屋とか決めなきゃいけないんだから」
「あっ。うん」
僕はスフレちゃんの腕を引っ張って、屋敷の中にれる。かなり部屋数はあるから、結構自由に選べるよ。20部屋近くあるんじゃないかな?
スフレちゃんの部屋を決める前に、荷物を置いてもらって主要な部屋を紹介しておく。具体的には、キッチンとかリビングとかお手洗いとか。あと、僕の部屋とかも。
それが終わったら今度こそスフレちゃんに部屋を決めてもらう。……なんだけど、スフレちゃんの部屋から出て行こうとしたとき、
「結局シット君、何?近くに住んでる子?12歳くらい?」
最後の質問にカチンときた。
確かに見た目は幼いし、初見だとそう思うかもしれない。でもさ!僕も学校にいた訳じゃん!同い年以上なのは分かるでしょ!若作りなエルフなのかな?とか、もうちょっと考えようはあるでしょ!
……それを12歳だなんて、許せないよね。
「教えてあげる。その身体に、しっかりと」
「え?……っん!ちょっ!?そこっ//」
押し倒して、しっかりとスフレちゃんの身体に刻んであげる。僕が大人に近いって事をね!
奴隷だし、これくらい強引なことをしても問題はない。奴隷契約は結んでないけど、奴隷と同じ扱いをするって言うことで肩代わりしてるのを職員も聞いてるから、証人もいるしね。全く問題ないはずだよ。
そして、何連戦かした後、
「……ハァハァハァ!」
「そろそろ思い知ったかな?そんなに僕はスフレちゃんと年齢変わらないから。同じ新入生だから」
「……全然見えない。そんなに背伸びしなくても良いんだよ?」
………………。
ほぅ?これはあれかな?僕の教え込みが足りなかったかな?
「そんなこと言うと、また襲うよ?」
「……次は負けない」
再戦がお望みだったらしい。僕は何も言わずにその唇を塞ぐ。悪いことを言う口は塞いでおかないとね。
さぁ。次は何連戦しようかなぁ。獣人はこのくらいの年齢になると発情期に入るから、そっち方面は強いって聞いたんだよね。10連戦くらいいけるかな?そこまでやったら僕が逆に死にそうだけど、ほどほどに抑えつつ頑張ろうかな。
《女神視点》
「やりましたね」
「そうね。やったわね」
女神と天使は揃って苦笑いを浮かべた。分かりきったことだったのである。
どこが分かりきっていたのかと言えば、
「お金をすぐに出せるのは予想済み、そして、女の子へ手を出す速さも相変わらずと」
「うんうん。ゲーム始まる前にすでにハーレム築いてるからね。スフレちゃんも奴隷扱いだから、ハーレムに組み込まれても文句は言えないという」
「このハーレム状態は主人公だから、という問題ではないですよね」
実はすでに、シットは何人かと関係を持っている。言ってしまえば、シットへ入学式延期を伝えた王女もその1人である。
「この女性関係の多さや、やり方の強引さを考えるとやはり悪役なのではないかと思いますね」
「そうね。でも、原作主人公より救ってる人数は多いのよ。一概に悪役とも言えないわ」
「それもそうなんですよねぇ」
ゲームでは死んでいるはずだった王女。そして、大抵は見捨てられるスフレ。まだまだ救われている者は多い。
シット自身は悪役だと思い込んでいるが、主人公のように活躍している場面も数多くある。
「スフレちゃんを救った場合は、ゲームだとどうなるんですか?」
天使は気を取り直して、女神へ質問をする。女神は待ってましたと言わんばかりに頷き、どや顔で説明を始めた。
「まず、借金返済のためにお金を稼ぐ必要はあるわね」
「はい。分かります」
「そこで、何やかんやあってダンジョンに潜ることになるわ」
「ダンジョン、ですか」
シットの転生した世界には、ダンジョンが存在する。幾つかの層があり、最深部にいるボスを倒すと宝物が貰えるタイプのダンジョンだ。ダンジョンマスターなんていうものも存在はするが、めったに出てくることは無い。あくまでも出てくるのはボスであることが一般的だ。
「モンスターを倒してお金を稼ぎ、装備を強くしていく。そしてまた強い敵を倒してお金を稼ぐ。それが基本的な流れね」
「なるほど。だから、最初から強い装備を買うためにスフレちゃんは見捨てられてしまう、と」
「その通りぃ~」
なんとも悲しい理由である。天使は軽く同情した。
それから、シットと激しく絡み合っている現在の彼女を見て、
「今回は幸せになれると良いですね」
「そうねぇ。そこはシット君の頑張り次第だとは思うけど……原作破壊は確実ね」
「あぁ。シット君のシナリオブレイクは本編始まる前からも十八番でしたからね。きっと学校でも大量改変が起こるんでしょう」
そんなことは容易に予測できる。
期待を胸に、女神と天使はシットを眺め続けるのであった。
「……ちょっと私も混ざりたくなってしまったのは気の迷いでしょうか」
「うん。たぶん気の迷いだよ。……でも、私も火照ってきちゃったし、やる?」
「……はい」