第2話
「へぇー、そんで気が付いたら私たちの部屋で寝てたと・・・。」
「ああ。」
秋五は、元の世界で起きたことを一通り話して見た。前回の時、『な、なんだってー。』とリアクションを取っていた二人だが差ほど驚いてはいないようだ。たぶんあの時はあまりにも唐突過ぎたからだろう。
「ふむ・・・、『アレ』かの?」
「アレ・・・かしら」
「??」
金髪の二人が『アレ』と言っているが、秋五には『アレ』と言うのが何か分かるはずもなく。
「さっきから、『アレ』って何だよ」
と、問う秋五。その問いに答えたのは、金髪の中年の男だった。
「『アレ』っと言うのはだな、魔法のこと。異世界から来た君には馴染みのない事だろう、魔法と言うのは。君がコチラの世界に来た時に使われたのは『闇の魔法』だと思うのだよ。正直、闇魔法と言うのは神話か作り話なのか、本当にあるのかなんて判らなかった。だけどそう考えるしかない。それは何故か、他の属性の魔法には時空、いや、世界を飛び移る魔法なんてない。有るとすればさっきも言った、『闇魔法』と言うことになる。」
「はぁ・・・」
何やら熱心に語っているが、魔法なんてゲームか何かしか知らない秋五にとっては何が何やら分からない。その間、中年の横に居る女の子は、前回にまして興味津津な視線を送っている。
ふと思いついた秋五は、そのことを言おうとしたが名前を聞いてないことに気が付いて、名前を尋ねることにした。
「えっ・・とー・・・細かい話は少し置いといて、名前聞いてないんで教えてくれないか?俺の名前は響谷 秋五だ。」
「おお!そうだな。俺は、ガリア・マーティアで、こいつの父親だ。」
そう言ったガリアは横にいる女の子の頭の上に手を置いた。その置かれた手を払った女の子は秋五の手を握って自己紹介を始める。
「私は、マリアリア・マーティア。マリアって読んでね!」
「あ、ああ・・・」
マリアに手を握られた秋五は、ちょっと照れて横を向いて返事をした。手を握られて数秒、ガリアの『娘は渡さんぞゴラ!』と言う目線に恐怖を感じた秋五は早々に手を離した。
「・・・。まぁいいや。よし本題に入ります。先ほど『闇魔法』と言ってましたが、俺がいた世界には魔法が存在しないのになんで起こったんですか?」
その問いに、ガリアは「そんな事か」と自信満々な顔で言った。
「「「君が無意識で使ったんだ!!」」」
「・・・はい?」
いきなり分け解らないことを言い出したガリア。それにどう反応をすればいいのか分からない秋五。
「だから、シュウゴ君が使ったんだ。」
「・・・いやいや、俺には魔力的なものなんてないです」
「いや、それは違うぞ!!人間だれしも隠された力があるように、誰でも少量ながらも魔力はあるものなのだよ!」
「はぁ・・・」
もういいです、と諦めた秋五。そこに突然いなくなったと思ったマリアが、謎の液体が入った五つのコップにそれぞれ、細長い筒が付いている装置を持ってきた。
「父さん、これで属性を調べれば解ります。」
「でかしたぞ!我が娘よ!!さあシュウゴ君、この五つの筒を握ってください」
と、秋五に筒を手渡したガリアだが、秋五は何が何やら分からなかった。コレは何かと聞いたら「属性測定装置」らしい。ガリア曰く、これで君の秘めたる力が判るらしい。渋々受け取った秋五だったが、どうすればいいのか分からなかった。
「どうやるんだ?」
「あー・・・なんと言えばいいのやら。こう、力を筒を持っている右手に送るって感じ?」
とマリアにも意見を求めたが、マリアは期待を胸に装置を見ているため気づきもしなかった。
「・・・え、えーーーーい!」
やり方がまだ分からなかったけど、なんとかなるだろうと思い、声を出して右手に力を集める(実際集まっているのかは本人も分かりません)
その直後、装置の五つの液体が左から、赤、青、黄、緑、茶。に徐々に変色して色がどんどん濃くなっていく。それを見たガリアとマリアは目を見開いて驚いている。どんどん濃くなっていく液体は元の鮮やかな色をなくしていく。そこで止めに入ったガリア。
「も、もういいぞ!シュウゴ君!!」
「え!?あっはい。」
ガリアの声で右手に持っていた筒を話す。力を籠めるのに集中していた秋五は装置を見ていなかったので、装置を見る事にした。
「うお!色が付いてる。てか濁ってません?」
「・・・それだけ君の魔力がすごいってことだよ。」
「まじっすか!?」
まさか、自分に魔力があるなんて思ってもいなかった秋五はまるで夢を見ているみたいだったがその直後。
「シュウゴすっごーい!!」
と言って飛びついてきたマリア。その勢いで体制が崩れて床に頭を打つ、頭には激痛が走った。夢じゃないんだなーと秋五は悟った。
「すごいことなのか?」
さっきマリアは「すごい」と言っていたが、よく分からないので聞いてみることにした秋五。
「すごいって!濁るほどの魔力もすごいけど、五つの属性も持っているんだよ!」
「属性?」
「うん!属性は色で判断されるの、赤色が出たら、火属性。青色が水属性。黄色が雷属性。緑が風属性。茶色が土属性。だよ。属性の数は鍛錬しだいで増やすことができるけど、初めのころは多くても三種類。最低でも一種類なんだよ。それなのにいきなり五種類なんだよこれはすごいとしか言いようがない!!」
「そうなのか・・・(五色か、まさかこの右手。)」
爪の事を言おうとしたが昔のことがあるため怖くて言い出せなかった。俯いていると、目の前にはマリアの顔があった。
「うわっ!びっくりした!!何なんだよ」
「あはは〜、だって髪の毛が長くて表情が見えなかったもん。なんで切らないの?」
「・・・事情があるんだよ」
と言った秋五は明後日のほうを見た。そんな様子を見たマリアは、どこから出したのか鋏をだしてニヤリと笑った。
「んふふふ・・・。その前髪邪魔だから切ってあげる。」
「いや・・・いい。・・・・ってちょっとまて!くるな・・・・くるなーーーーーーー!!」
数分後
「眩しい・・・光が、眩しい。」
秋五はマリアにより前髪を切られ、全体を整えられ、後ろ髪は束ねられた。それをみたマリアは顔を赤くして部屋の隅で、「アレはヤバイ・・・危険だ世の女性が・・・・ブツブツ」と何やら言っているがまあ気にしないでいよう。と思った瞬間両手をゴツゴツの手によって包まれた。
「君こそが我が跡継ぎに相応しい!!」
まさかの後継者任命。それには俺もマリアも驚いた。
「跡継ぎってまさか・・・」
「そう!マリアの婿さんだ!よかったなマリア。いい人が見つかったぞ。」
と涙を流しながら言うガイア。マリアはただ、顔を真っ赤にして人形のように佇んでいた。
しばらくしてさっきの跡継ぎ騒動が治まり、三人でティータイムをしているとき。突然マリアが言い出した。
「そうだ!シュウゴも魔法学院に行こうよ!」
「そうだな、その力も自由に使えんと不便だろうな。」
「そう・・だな。行ってみようかな。でもお金かかるんじゃぁ?」
秋五の不安は金銭だけじゃなく、字の読み書きもある。だけどその不安もガリアの言ったことで消えることになった。
「そこは大丈夫だ、城はないが貴族なみに金はある、なんせ俺は騎士団の総隊長だからな!確か、字の読み書きもできんかったな?それも大丈夫だ、学院が始まるまで一カ月あるその間に覚えれるだろう。」
「ありがとうございます。」
と礼を言った。
後で聞いた話、マリアは秋五の一つ年下で今年から入学するらしい。歳の関係で秋五が学院に入ると一年の授業をしないでいきなり二年の勉強からになるので、秋五の歳を一歳偽ることにした。
秋五が来て一カ月が経ち、字の読み書きを完璧にマスターした秋五は、マリアと共に、隣町にある『訓練都市ファミーリア』にある魔法学院に向かった。