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コレが噂の悪役令嬢!  作者: 浅野明
第一章 幼少期の悪役令嬢
4/7

3 続・王子さまと話をしてみる

今日二話目。ほぼ勢いだけで書いてる。

王子が定期的に我が家を訪問しはじめて、4ヶ月がたった。正直めちゃくちゃ鬱陶しい。しかも何故か毎回赤い薔薇をもってくるのだ。


「何故赤い薔薇なんです?」


「女の子は赤薔薇を欲しがるものだろう?」


・・・・なに、その偏見。しかし、わざわざやってきて薔薇を手渡したら少し話をして帰っていく。あの俺様ぶりはどこにいったのか。いまや片鱗もない。


「わたくしはあまり好きではありませんわ」


前世で旦那と子供たちとバラ園にいったら、何故か私だけ蜂に追いかけ回されて大変な目にあったのだ。おかげで薔薇は苦手である。


好きな花はグラジオラスだ。昔は狭い庭でよく育てたものだ。グラジオラスはいい。どんな花も枯らしてしまう魔法の手を持つとよく友人にからかわれていたが、グラジオラスだけは上手く育ってくれたのだ。ちなみに今世でも魔法の手は健在である。部屋に緑を、と鉢植えを置いたらものの見事にすべて枯れてしまった。もはや呪いといって差し支えないレベルだ。泣ける。


「そ、そうなのか」


しょぼんと肩を落とす王子さま。はじめは俺様だったくせに、今は捨てられた子犬のようだ。どうやらこっちが素らしい。はじめのあの態度はなんだったのかと、小一時間くらい問い詰めたい。長く話したがるのに毎回追い返すのは、骨がおれる。王子が天使のような可愛らしい顔のため、罪悪感が半端ない。しかし断っておくが、私は断じてショタではない。


いや、私も見た目は5歳。問題はないはずだが、精神的に許されない気がする。


あえてもう一度言おう。可愛い生き物は大好きだが、ショタではないよ。5歳児相手にときめく趣味は持ち合わせていません。


それにしても王子とは暇なのか?それともそんなにレンドルフ公爵家の後ろ楯がほしいのだろうか。


まあ、後者だろう。いくらミーナが可愛くても将来はアレである。ミーナに恋することはなかろう。しかし、ルドルフも優秀な王子ではあったはずなのだが。


正直、あの少女はヤバかった。理由はよくわからないが、本能が拒絶した。目があったとたん、背筋に悪寒が走ったのだ。


「ミーナ嬢?」


「はっ、いえいえすみません。なんでもありませんわ」


にっこりと微笑むと、王子が赤くなった。まだまだ子供なだけあって、女の子には不慣れらしい。


「今度はグラジオラスをお持ちしますね」


王子も柔らかく微笑む。素直。そして可愛い。変な意味ではなく。おばちゃんとは可愛い生き物に弱いのだ。


「ふふ、ありがとうございます」


にこにことご機嫌で、王子は帰っていく。


「いったいなんなのかしら?」


よく分からないが、機嫌はいいにこしたことはない。


私は首を傾げながら今日もまた、図書室へ通うのだった。





「お嬢!」


ようやく王子を追い返して、一息ついた。やっぱり図書室は落ち着くわ。


さあ、昨日の続きを読もう、と気合いを入れたところに、誰かの呼ぶ声がした。この野太い声はマッチョな料理人、ビクトルのものだ。そもそも私をお嬢と呼ぶのはこの男くらいのものである。


「ここよ!」


「ああ、やっぱりここでしたか。一大事です、お嬢」


「何事?ビクトル、妊娠でもしましたか?」


「あっしは男ですぜ?しかもまだ、独身!」


「あら、彼女いない歴何年?」


「26年・・・・ってお嬢、なんすか、その顔」


いや、だってビクトルって体はマッチョでイケメンではないけど、それなりに顔もいいし。公爵家の料理人で将来は料理長にも期待される腕前、つまり高給取りのうえ、将来性もバツグン。なのに彼女いない歴が年齢とイコールってどういうこと?おかしくない?


「・・・・お嬢、人生にはいろいろあるんすよ」


なぜか重々しく呟くビクトルに、はっとなる。そうよね、誰にでもふれられたくないことってあるわよね。わかるわ。


私はひとつうなずいて、この話題を終了したのだった。ちなみに後日判明したビクトルの彼女ができない理由は、ただのヘタレだった。緊張しすぎて話すことができないどころか、睨んでいるかのように視線が鋭くなりすぎるらしい。せっかくの超がつくくらい優良物件であるのに、残念極まりない。


「って、そんなことより大変なんすよ!」


「だからなにがあったわけ?」


「実はお嬢発案の抹茶スイーツが大当たりしちまって」


それのどこが問題なのかしら?大当たりするのはいいことよね?


「なんでか王妃さまも気に入ったらしくて」


「・・・・え、」


王妃さまといえば、第二王子の母君だ。とてもお綺麗な方らしいのだが、性格がかなりキツイ。少なくとも前回はそうだった。関わりたくない人物ベストファイブに入る。王妃の名が出た時点でイヤな予感しかしない。


「ビクトル、わたくしちょっと気分が優れませんわ」


「いやいやいや、いまめっちゃ元気でしたよ!?逃がしませんぜ?」


がし、と肩を捕まれて捕獲された。いや、ひどくない?かりにも主家のお嬢様、しかも5歳児ですよ?


「だってイヤな予感しかしないわよ!関わりたくないわ!」


「関わりなくないのはあっしも同感っす。でも依頼は強制っす。逃げられないですからね」


ふっと諦めたように微笑むビクトル。くっ、たかだか26年しか生きてないくせにまるで菩薩のごとき悟りきったこの微笑みはなんなのかしら?


「お嬢、人間諦めが肝心です」


一体なにがあったのか。怖くてきけないわ。これは絶対聞いたら後悔するやつ。


「で、結局なんなの?スイーツの注文なら普通に作れば良いじゃない」


このままでは一向に話がすすまないので、仕方なく続きをうながす。


「それが、ただの注文じゃねえから困ってるんですって」


「どういうこと?」


「なんでも今度王妃さま主催のお茶会を開催するらしいんですが」


「ふうん、お茶会ね」


全然お菓子とか美味しくなさそう。ぜったい落ち着けないわ、それ。


「そこで新作のスイーツを出したいらしいんです」


「新作?」


「ええ」


「誰の」


「喫茶ルミエールの」


喫茶ルミエール。それは私の抹茶スイーツを売り出したお店。ビクトルの友人の店だ。潰れる一歩手前だったのを、抹茶スイーツで立て直したのだとか。


「・・・・誰が新作を作るの?」


「だから言ったじゃないですか、一大事だって」


「ちなみにお茶会はいつなの?」


私の問いに、ビクトルの視線がスイッと逸らされる。コラ待て。


「非常に言いづらいのですが」


そう言いつつ指を五本立てた。


「五週間?」


「五日っす」


ふざけるな!五日で新作スイーツ開発しろとかどんな無茶ぶりよ?!


私とビクトルは顔を見合わせて、揃ってため息をついたのだった。






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