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コレが噂の悪役令嬢!  作者: 浅野明
第一章 幼少期の悪役令嬢
3/7

2 王子さまと話をしてみる

食事が終わって早速図書室に行こうとしたら、にこやかな笑顔を浮かべたお母さまに捕まった。王子さまはスルーできないらしい。


しぶしぶお母さまに連行・・・・もとい、付き添われて王子の待つ部屋に行く。


そもそもなんで王子さまは我が家に来たのかしら?子供のくせにどうやって?お付きの人たちは止めなかったのかしら?謎です。


それとなく確認したら、お母さまも困ったように首を傾げていた。予想はつくけどはっきりわからないといったところらしい。


声をかけて応接室へ入ると、俺様王子がソファでふんぞり反っていた。金髪碧眼の可愛らしい顔立ちで、いかにも王子さまといった見た目なのだが、いかんせん、態度が最悪だ。前回はこちらも子供だったしなんとなく逆らえなくて大人しくしていたが、これはない。うん、二度言うが、ないわー。少女漫画の王子さまとして残念極まりないな。だから主人公になれなかったのかしら。


「遅い!」


「・・・・・」


えー、勝手に食事時に乱入してきたくせに、なにいってんの?ミーナの目が点になっている間に、母と王子の付き人の間で何かやりとりしていた。かと思うと生暖かい目で私を見て、王子の向かいに促す。


「それじゃあミーナ、頑張ってね!」


・・・・何を?って母よ、何故にかやかに去っていくのです!王子の付き人も私の専属メイドのエナもさりげなく壁際に移動。ええー、明らかにこっちを見下した王子と二人にされてどうしろと?


・・・・気まずい。5歳児の挨拶ってどんなんだっけ?


「あー、本日はお日柄もよく」


・・・・・・・。


「・・・・なにいってんだ」


なんだか王子の視線が痛い。うん、これはあれだ。お見合いをセッティングしたときよく言ったセリフだ。5歳児の挨拶じゃないね。


うーん、挨拶、挨拶。


「本日はいい天気ですね?」


「・・・・何故疑問系なんだ?しかもいまは曇りだ」


知らないよ!起きてから天気見てないよ!挨拶って言えば天気の話か子供の話から入るのがおばちゃんってもんなんだよ!察せよ!!


「うるさいですよ」


「なっ」


早くも面倒になってしまった。自慢じゃないが私の忍耐力は刺繍糸より細い。ないも同然だ。


「結局なにしに来たんです。用がないならお帰り下さい」


王子とはいえ、相手は5歳である。遠慮とかいらなくない?


「おま、お前、不敬だぞ!」


え、どう考えても敬う要素ゼロでしょ。


「ソウデスネ。お帰りはあちらです」


もう帰れよ、威張りたいなら城でしてくれよ。ようやく前回の出来事を思い出して私はうんざりしながら扉を指さす。前回は王子の勢いと尊大な態度に戸惑っているうちに、なし崩しに婚約が決まってしまったのだ。冗談ではない。今度は前世の夫のような地味でも優しい人がいい。間違ってもキラキライケメンの俺様王子は願い下げである。ちなみに第二王子も一歳しか違わないが、腹黒そうなのでパスだ。


「いや、まて。なにさりげに追い出そうとしている!」


え、察してよ。5歳児でも教育のたまものかかなり大人びてるんだから、空気読んで欲しいものだ。


食後はほうじ茶を飲んでまったりしたい。この家は紅茶派なのよね。緑茶やほうじ茶、抹茶は前回は出会ってなかった。あるのかしら?抹茶スイーツが食べたいわ。


「くっ、無視するな!お前、俺の婚約者になれ!」


「え、いやです」


いきなり?速攻お断りしました。


「なっ、なんでだ!」


「好みじゃないです」


・・・・・。さらっと言うと王子が沈黙した。


「お帰りはあちらです」


重ねて言うと、青い顔して立ち上がると付き人がとんできた。そのままふらふらしながら帰っていく。


「お嬢様」


「なあに?」


「容赦ないですね」


え、人間正直が一番ですよ?





※※※※※※




王子来襲から一週間がたった。この一週間でしたことは読書と、抹茶スイーツ作りだ。なんとなんちゃって和食がある国に抹茶はあった。しかし、抹茶スイーツはなかった。いや、ダメだろう。あの絶妙な苦味と甘味のマッチした至高のスイーツがないとか、あり得ない。


屋敷のマッチョな料理人、ビクトルに協力してもらって抹茶アイスを作った。抹茶ケーキも作った。ついでに抹茶クッキーも作った。家族に大好評です。


「お嬢、このレシピを知り合いに渡してもいいですかね?」


ビクトルに聞かれて頷く。なんでも友人が喫茶店を経営しているらしい。


「いいですわ。ただし、このレシピで得た売り上げの一割はいただきますわ。アイデア料ですわ」


まさかの知識チート?しかし自分で売り込む自信はないため、利益だけもらうとしよう。ラッキーである。


「・・・・・お嬢、しっかりしてますね」


知り合いでも、タダは駄目ですよ?


契約はあっさり成立した。もちろんお父さまを通したが。お金は私の口座に入るように取り決められた。まあ、どうせ大して入ってはこないだろうが、別にお金に困っているわけではないので問題はにい。


それはそれとして、なんとこの世界、銀行にキャッシュカードがあるのだ。使われているのは科学技術ではなく、魔法技術だが。魔法凄いなー。ちなみに前回の私の得意魔法は、まさかの広範囲殲滅型魔法である。怖っ!


そんなこんなで日々をまったり過ごしていると、再び王子がやってきた。今回は事前にアポがあった。


「お久しぶりですわ」


今の私は超絶ご機嫌だ。なぜならこのあと久しぶりにお休みの取れたお父さまが街に連れて行ってくれるからだ。お父さまとデート!楽しみです。だから俺様王子には用件だけさっさと聞いて、お帰り願いたい。


「あ、ああ、その・・・・」


顔を赤くしてもじもじしている。


「どうしました?」


「お、俺の婚約者になってくれ」


真っ赤な顔で真っ赤な薔薇を差し出された。


「・・・・え、いやです」


この間も同じ返答をしたような気がするけど。最近第二王子の母君である王妃さまの勢力が増しているらしいから、第一王子も大変なんだろうな。レンドルフ公爵家を味方につけられれば、しばらくは安泰なのだろう。まだ、5歳なのに好きな相手を選べないなんて王子さまは大変だ。


だがしかし、それはそれ、これはこれ。


私は王子さまの相手はまっぴらゴメンです。面倒事しかやってこない気がするし。まさに前回がそうだったし!そう、私は学んだのです。転生令嬢でしかも少女漫画のモブとくれば、目立たず地味に生きるのです!


「・・・・少しは考えようとか思わないのか?」


「え、なぜ」


断ることは決定事項なのに、なにを考えるのだろうか?


「王子妃になれば好きなことを好きなだけできるぞ」


「間に合ってます」


今も好きなことしかしてません。平凡なおばちゃんだった前世と違って、お父さまの権力とお金でやりたい放題である。これ以上どうしろと?むしろ家族の溺愛ぶりにどん引くくらいですよ。ダメ人間になりそうで怖いわー。


薔薇を手渡した王子は、わりとあっさり帰って行った。そして目一杯お父しまとのデートを満喫した私は、このあとの3日ごとの王子の訪問に悩まされることとなる。


いい加減にして欲しいですわ!









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