ランデブーまであと少し!
新シリーズです。私は宇宙が好きなのでこういうのを書いてみたかったんです。その欲と恋する小惑星になっても後押しされて、書いちゃいました!
-2003年5月9日-
「まもなくコントローラースタートします。よーい、はい1分前!59,58,57…」
その男性の一言で、私は宇宙ヘ旅立った。
小惑星探査機MUSES-C、のちにはやぶさと名付けられた彼女は、私達に多くの感動を与えてくれた。通信途絶からの奇跡の復活、あの大気圏突入の映像は私の脳裏に焼き付いている。そして、あの日宇宙に行った88万人が宇宙の小さな家に着いた日のこと。私もあの星へ行った。小さなターゲットマーカーに刻まれた
「柳遥」の文字。行った!私は宇宙に行ったんだ!__________
-2019年4月-
「はるちゃん、遅刻するわよー!」
「はぁい」
最近、高校生になった。天白高校ってところ。家から離れてるから、親戚のおばさんの家に居候させてもらってる。
「はるちゃん、晩ごはん何食べたい?」
「なんでもいいですよ」
「そう言わずにさ~あ?ほら、入学式の日、おばさん出張でいなかったから、ね?」
「あ、うん…じゃあ、お言葉に甘えて……すき焼きが、食べたいです。
「すき焼きね!分かったわ!楽しみにしててね!」
「はい。」
『次のニュースです。小惑星探査機はやぶさ2が、人工クレーターを作ることに成功しました。』
「あら、はるちゃん、はやぶさの話題、やってるわよ!」
「はい……そうですね。」
「それにしても、何なのこの、衝突装置ってやつ?」
「…小惑星に弾丸を撃ち込むんです、それでクレーターを作って…リュウグウの風化してない内部の物質を取るんです」
「へぇ、やっぱり詳しいのね!さすが宇宙大好きはるかちゃんね!」
「………はい…ありがとうございます」
「…はるちゃん、どうしたの?何か元気ないみたいだけど?」
「あ、いえ…昨日遅くまで勉強してたので…」
「そぉ?勉強も大事だけど、休むことを忘れないでね!」
「はい、ありがとうございます。」
……………。………………………。
「はぁ」
思わず深いため息が出た。私は宇宙が好き……………だった。あんなに好きだった宇宙がトラウマになってしまった。小学生のときは良かった。でも中学生になって、それが原因でいじめられた。
「お前人工衛星好きなの?ありえねー」
「あんななんの役にも立たない税金の塊が好きとか頭おかしいんじゃないの?うけるー」
とか言われたし、仲間はずれにされたし。どうやら私、ゴミみたいなものを好きになってしまったのかもって思って。3年間の地獄は私の心さえも変えてしまった。そう思いながら、私は灰に染まったかのような空を見上げた。その時だった
「はるちゃーん!おはよー」
「っ!?あっ、のぞみちゃん、びっくりしたぁ」
平田のぞみ、小学生の時の親友である。
「モー、なんだよー♪はるからしくないぞ♪」
「…のぞみちゃん、なんか元気だね…」
「へへーん、実は、彼氏ができたのだーー!!」
「…へえ、良かったね。」
「…なんかさ?はるちゃん性確変わったよね?」
「え、そう?そんなことないと思うけど…」
「えー、変わったよぉ。なんか、暗くなった。」
「………」
嘘をついた。実際、自分でも性確は変わったと思っている。暗くなったのは確かだし、小学生の頃よりもコミュ障になった。
「んじゃ、また放課後ねぇ!」
「うん、じゃあね」
のぞみと別れて、私は教室に入った。と言っても、友達もいないから一人ぼーっとしているだけで暇なんだけど。
(まだ、時間あるし、本でも見ようかな。)
私はそう思って、先日本屋で買ってきた推理小説を読み始めた。しかし、小説はあまり好きではない。文字だらけで絵がない。小さいとき、図鑑ばっか見てたもんだから、都会のビルのように連立した文字は、どうも苦手だ。まだ5分くらいなのに目が疲れてきた。なんで私、小説なんて買ったんだろう。とはいえ、やることがないのだから小説を読む他ない。私は老人のように目を細めて、小説を読んでいた。それから10分くらい経っただろうか。そろそろホームルー厶が始まるので盆をしまおうとしたときだった。
「ねぇ、柳さん」
「っ!?なっ、何?」
ビックリしたぁ。振り返ると男の子が一人立っていた。一首誰か分からなかったが、ずぐにわかった。那須田君だ。
「どっ、どうしたの?」
「お前さぁ、宇宙好きなんだってなぁ」
「……ふぇ?」
「だったらさぁ、天文学部入らね?」
「………」
のぞみちゃん、勝手に教えたな。もう。イヤな勧誘が来てしまった。もう好きではないものをなるのは、正直苦痛である。
「まあ待ってるわ。時間ないしまたなぁ。」
あっ、行ってしまった。ホームルー厶に助けられた。そう思って私は校庭の抹茶に染まった桜を見つめた。あの時の私はどこに行ってしまったのだろう。
放課後になった。那須田君のせいで授業の内容が入ってこなかった。………今日はなんだか疲れた。帰ろう。のぞみちゃんは部活だし。勝手に私の事喋ったし(※のぞみちゃんはしっかりと怒られました、遥に)。
若干杏色に染まった空を見て、私は帰ろうとした。その時だった。
「お?」
声をかけられた。しかも、朝の声と同じだ。私は正直、最悪だと思った。
「柳ィー、アンダもこっちだったのかぁ。せっかくだし、宇宙について語り合おうぜ!!」
「あっ……はい」
おい、何言ってんだ私。なぜわざわざ自分のトラウマに首を突っ込む。はぁ、今日はどっと疲かれるだろうと思った。
「俺さぁ、宇宙に行ったんだよ。」
「は?」
一瞬何だコイツと思った。
「何だ知らねえのか?はやぶさのターゲットマーカーだよ」
「あっ…」
知ってる。私も行ったのだから。
「どうだぁ?羨ましいだろぉ?」
「…いや、別に」
ちょっとムカついた。
「私も行ったし」
「へ?あ、そ~なの、なーんだ」
不意を突かれてしゅんとする那須田君を見て、私はちょっと優越管に浸った。
「じゃあこれはどうだ?俺こっちだからこの前各務原行ったんだぜ?羨ましいだろぉ?」
「いや別に」
そんな会話がちょっと続いた。最初は最悪だと思ったのに、今はちょっと嬉しかった。
「ブロロロロォォーーーーン!」
バスが通り過ぎた時、ふと我に返った。………。………………。(あれ?私、楽しんでる?)そうだった。私はこんな話題は嫌いなんだ。そう、嫌いなんだ…。私は、早急に那須田君から離れようとした。
「…じゃあ、私こっちだから」
そう言おうとした時、遠くから馴染み深い聞こえてきた。
「あら、はるちゃんじゃないのー!」
おばさんだ。
「あら?隣にいる子…」
………あ。
「もしかして彼氏さん?あらー!いつの間に!」
「!?」
「へぁ!?」
「ああああのっこれは違っ!!!」
「もぉー言いなさいよー、おばさん、びっくりしちゃたわぁ!」
「あの、こ、これはその、ぼ、ぼくは別に」
「あらー二人とも照れちゃってーかわいいわねぇ」
「はぅ!」
「はぅ!」
……これは大変なことになってしまった。
「あっ!そうだ君、家でゴハン食べてかない?おばさん食材買いすぎちゃってぇ!」
「え!い、いやいいですよぉ!」
「まぁそんなこと言わずにさぁ!」
まずい!これはまずい!とーーーーーーってもまずーーーい!
心の中で叫びまくった。なんとしてもこの状況は回避しなくてはならない!だが………
「今日うちすき焼きなのよー!」
「すき焼き?へっいいんですか!?」
「あっ。」
あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!
那須田君、態度変わりすぎ!!
〈はみ出しコラム〉
小惑星探査機はやぶさのターゲットマーカーには88万人の名前が刻まれている。これははやぶさ2のをターゲットマーカーも同じ。名前の募集はインターネットを通して募集している。
もし、はやぶさ3ができて名前募集がされたとき、ぜひ応募してみてほしい!
宇宙に行きませんか?