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Cloud=NOISE  作者: 下野 枯葉
学校祭編
16/17

十五話 偽られた月鳥神の最期

 時は夕刻。

『これにて月鳥商業高等学校、学校祭を終了致します。本日は――』

 放送が学校に響き、一般客が帰宅の路に就く。

 終了したにも関わらず、片づけは賑わっていた。

 修慈は生徒会長の指示を受け、メンバーに仕事を割り振る。

 美嘉はクラスの仕事は部活を理由に逃げ、部活からも逃げ、一足早く帰っていた。

 つまりは、バイトへ向かうのだった。

 紅輝はクラスのメンバーに囲まれ、体育館でのステージ発表について聞かれていた。

 そして、美術室では悠太が椅子に座っていた。

 微動だにせず、呼吸もしていない。



 何故なら日向が悠太の首に太刀を突き刺していたのだから。



 ゆっくりゆっくりと、太刀を引き抜く。

 錯乱しながら、涙を堪えながら、確実に悠太の息の根を止める。

「あっ……いや、いやっ…………ゆ、ゆーた、ゆーたぁ……」

 堪えられなくなり、涙が溢れ、その場に崩れ落ちた。

 雲は消え去り、夕日が美術室を照らす。

 埃がゆっくりと舞い、美術室に一切の動きがない。

「どうして、どうしてっ! 烈、助けて……助けてよぉ…………」

「いいえ、仕事は終わりです。これ以上は何もできません」

 冷淡に、淡々と、烈は現実を告げる。

「そんな……それじゃあ、ゆーた、ゆーたは!」

 日向は全身から力が抜けていくのを感じる。

 LSは脳からの雑音が消えたのを確認し、自動的に処理を最小限に落とす。

「嘘だよ……こんな世界、嘘。嘘嘘嘘だよ……」

 超能力の発動が抑制されたことで太刀は消え、世界は守護するものを失い、閉じる。

「いいや、神に嘘は無い。根拠は俺が神だからだ」

「え?」

 屍に成り下がったはずの悠太から声が聞こえる。

「……ゆーた、なんで」

 首を触りながら溜め息をついた悠太はゆっくりと起き上がった。

 一度死んだ身を案じ、体の動きを確認する。

「流石だね日向。うまくいってよかった」

「え? ……え?」

「あれ? 『月鳥神の最期』読んでると思ったんだけど」

「うん、読んだよ……だから私がゆーたを殺して……それで、それで」

 目を伏せて続きを語ろうとするが、辛さが込み上げ詰まる。

「さては最後まで読んでないな?」

 その様子を見て、疑いの目を向ける悠太。

「ふえ?」

「それに心臓も貫いたし、今更首を刺したくらいで」

 過去の出来事を振り返り、ほんの少しだけ込み上げた怒りを否定しながら笑う。

 悠太は過ぎたことと割り切るが、日向は思い出す度、心に強く焼き付けていた。

「だって、だって……だってぇ」

「ほら、行くぞ……学校祭は終わりだ」

 落ち込む日向を見て、話題を変える。

「あっ……ゆーた!」

 美術室のドアの前に立ち、悠太は振り返る。

 大きく深呼吸をし、死んだ魚の目を切り替える。

 決心。覚悟を宿した瞳を日向に向けた。

「最後くらい……日向といたい」

「……私も」

 恥ずかしさと嬉しさを混ぜた表情と共に、笑顔で答えた。


 少年少女はその日初めて一緒に下校した。

 裏道に入り、静かに歩く。

 体格差があるにもかかわらず歩幅は同じで、日向のリュックに付いたストラップがリズムよく音を鳴らす。


 繋がれた手は互いに強く……強く握られていた。


こんにちは、

下野枯葉です。


アニメを見まくって休日を潰す……サイコー。


アニメを見ながらだと、書く作業が何度も止まりますが、インスピレーションドバドバです。


さて、偽られた月鳥神の最期。

如何でしたでしょうか。

これで学校祭編、終了です。

いやー、楽しかった。

次は喜劇家の奇跡編です。

お楽しみに。


それでは、

今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。

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