表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Cloud=NOISE  作者: 下野 枯葉
学校祭編
14/17

十三話 仕組まれた即興劇(インプロ)

 学校祭が始まり、十三時を回った。

 お昼時の混雑が一段落し、飲食系のクラスは一息入れていた。

 体育館では午後のステージ発表が始まろうとしていた。

「なぁなぁ、一時半から軽音部行かね?」

「宮下が歌うんだっけ? 行く行く」

 校内の見回りをする修慈の耳にそんな声が届く。

「順調だな」

 安心した様に笑った修慈は無線機で指示を出す。

「体育館の誘導が終わり次第、風花に調整に入れと」

『わかりました』

 生徒会の面々は体育館の混雑を整理し、月研と連携を図る。


 金髪の男は体育館の中で不敵に微笑む。

「ヴィス……裏切りはいつまで経っても許されないからな」

 小さく呟き、笑う。

 竜巻をイメージしたLSがキラリと光り、起動する。

「雲なら簡単に動くさ」


「中世古、圦本、準備は?」

 美術室で先生は最終確認を行う。

「とっくに」

 短く答えた悠太は、椅子に座り目を閉じている。

「そうだな。やるぞ」

 その言葉を最後に、先生は体育館へ向かった。

「ニコライ……執念深い」

 眉間にシワを寄せながら拳を強く握る。

 残された美術室では月鳥神と烈が語り掛けてくる。

「悠太君……無理のし過ぎだよ」

 いつもの陽気な雰囲気は何処へやら。

 月鳥神の重い声が悠太に刺さる。

「……」

 わかりきっていることなので返事をすることもできなかった。

「日向」

「はい」

 烈と日向は端的にやり取りを終えた。

 既に起動されているふたりのLSは、更にその処理を加速させる。

 悠太は神の力を禍々しく振るう。




 十三時三十分。

 体育館のステージでは軽音部が音出しを始める。

 観客達は演奏がまだか、まだかとざわつき始める。

 生徒指導の先生達はステージを睨みながら腕を組む。

 対して軽音部はそれを一瞥し鼻で笑った。

 一触即発。

 開始を前にボルテージは最高潮。

 宮下はLSを起動し、メンバーに視線を送る。

 ドラムの多田はスティックでカウントをとる。

 そして流行りの曲を演奏し始めた。

 リズムに合わせ観客は跳ねる。

 爆音に惹かれ、観客は更に増えに増える。

 二曲目が終わったところで、宮下は超能力を使うことを決心する。

 三曲目が始まった瞬間、それぞれの意思が動き始めた。

 宮下はギターの音色に合わせ、炎を空中で舞わせる。

 生徒指導の先生達はそれを見てLSを起動し、高速でステージに接近する。

 身体強化の超能力は慣れたように発動され、右手を伸ばした。

 しかし、炎の激しさから近づけない。

「クソっ! 宮下ぁ……」

 その頃、先生は金髪の男と対峙していた。

「……ニコライ」

「よお……ヴィス」

 喧騒の中、ふたりは睨み合う。

「しつこいわね」

「仕事だ」

「……ならば今ここで」

 見開かれた目が殺意を帯び、不敵な笑みを浮かべる。

「俺達が騒ぎを起こしちゃまずいだろ?」

「そうね。私が手を下すまでもないわ」

「あぁそうだ、いいことを教えてやる。雲は蒸発するんだぜ?」

 金髪の男は超能力を使い、炎を激しくする。

「なっ!」

「神の力と聞いて身構えたが、対処法さえわかれば無意味だな」


 美術室では異変に気付いた日向が声を出した。

「おかしい、軽音部の雲が消えてる」

「……やっぱりか」

 日向とは対照的に悠太は冷静にそう一言。

「ふえ?」

「一つ目、終わり」

「あっ、うん!」

 指示を受けて日向は『二重』に作った世界の一つ目を消し去る。

「それじゃあ頼んだぞメインキャスト」

 悠太は全く動かずに、月鳥神の力に集中する。


観客は悲鳴を上げながらもこの状況を楽しんだ。

(行ける……行けるぞ!)

 宮下はリズムに乗りながら超能力をより強く発動する。

(えっ――)

 その刹那、宮下の超能力が本人の意思に反し、暴走する。

炎が段々と大きく膨れ上がる。

「風花、今だ」

『はいっ!』

 LSでの通話で修慈は紅輝に指示を出す。

 紅輝は超能力を発動。

「雪姫にも見せたかったな……」

 チェッカーベリーを竜に変え、跨り飛び出した。

飛び回り、炎を操る。

悪魔の面を着けた紅輝は見る者を惹き付ける。

 同じタイミングで曲はベースソロに変わる。

 竜の舞とベースソロ。

 最高のマッチング。

「こんなアレンジ……」

 宮下は予定と違う流れに驚く。

「私ってそんなに怖いのかな?」

 そう言い笑うのは美嘉だ。

 美嘉は軽音部の宮下以外のメンバーを恫喝し、こちらの演出に合わせる様に仕向けたのだ。

 そうして軽音部の演奏は最高の状態で終わった。

「「「アンコール! アンコール!」」」

 熱が冷めぬまま、観客は声を上げる。

『他の発表もありますので、これで軽音部の発表は終わります。また、軽音部が来月末にライブを行います。案内を体育館入り口の掲示板に掲示してありますので是非ご覧ください』

 修慈は冷静に会場の空気を纏め上げ、次の段階への移行をスムーズにする。

 舞台袖に戻った軽音部。

 状況を理解できない宮下は考えを巡らせていた。

 そこに美嘉は追い打ちをかけた。

「先生と風花に話を合わせろ」

「……漆原」

「行け」

 抑揚のない冷徹な一言。

「何で――」

 命令された怒りから、声を上げようとする。

「――行こう」

 しかし、多田は宮下を止め、舞台裏へ誘導する。

「クソッ!」


 舞台裏には生徒指導部の先生が勢揃いしていた。

「お前達! こんなことしてただで済むと思うなよ!」

「先生、これはちょっとした演出なんですけど」

 紅輝が遅れてやってきてそう言った。

「風花、お前もこんなことして……」

「まぁまぁ落ち着いてください、校長には許可を得ていますから」

 先生は白衣を翻し、笑いながら舞台裏に入る。

「な、宮下? うまくいってよかったな」

「えっ……は、はい」

 驚いた宮下は曖昧ながら、肯定する。

「しかし、一歩間違えれば大きな事故に繋がっていたんだぞ?」

 生徒指導の先生は怒りが鎮まらず、声を荒げる。

「いちいち……」

 宮下はそう溢す。

「あ?」

 互いの怒りは収まらない。

「チッ」

 宮下の舌打ちが響く。

「なんだ今の舌打ちは!」

 胸ぐらを掴まれ、宙に浮いた宮下は睨み返す。

「……は?」

「歯を食いしばれ!」

 拳が振り上げられ、誰もが衝撃を覚悟したその瞬間。

「やっとか」

 中世古の声が全員の動きを止めた。

「上手くいってよかった。始めよう」

 LSは唸り、月鳥神の力を使う。

 理不尽に、一方的に、神々しくも禍々しい力を使う。


「その憎しみ……引き受ける」


 そうして惨劇は始まる。

 軽音部が、生徒指導の先生が今まで抱えてきた醜悪。

 それを引き受ける……即ち、終わりの見えないような不安と苦しみ。

 無限とも思える程繰り返したはずなのに、はずなのに……。



 どうして今日は涙が出るんだろう。


 人々の雲を消し去った悠太はフラフラと感情を殺しながら体育館を後にした。



「……あれ? 何があったんだ?」

 宮下は一瞬意識が飛んだような気がして、状況を確認する。

「確か、軽音部の演奏……」

 生徒指導の先生も同じく考えを纏める。

「いやー、それにしても凄かったですね」

 関心混じりにいやらしく笑う。

 いつものように、全てがうまくいったのだ。

 ならば状況を纏め、神の御業の手助けをする。

「え?」

「軽音部も風花もお疲れ様、お客さんの盛り上がりは今日イチだろうな」

 褒めながらの誘導。

 手慣れたものだ。

 神の手伝いなんて本来経験するはずもない。

「はぁ……どうも」

 宮下は釈然としない様子ながら、先生の言葉のみを聞き、それに反応する。

「今の……この感覚」

 一方の紅輝は自分の身に起きたことに違和感を覚え、既に経験したような感覚を一体いつのものかと思い出そうとしていた。

「それじゃあこの辺で解散としましょう。みんなも色々と周りたいだろうしね」

 柏手を一つ。

 切り替えられた場に、生徒達にとっては嬉しい一言が付く。

「そうですね」

 生徒達は互いにアイコンタクトを行い、片づけをして体育館を後にする。

「残りの学校祭も楽しむんだぞー」

 そして生徒指導の先生は頭を掻きながら仕事へと戻っていった。


「…………まったく、あの小さな身体に神は……いや、お似合いだ」


こんにちは、

下野枯葉です。


あの頃好きだったアニメ……もう十年近く前に放送されていたのです。

あれ?

あの時と今の違いは何だろうか。

……。

年齢だよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!


さて、遂に学校祭ですよ。

リアル学生時代の学校祭は思い出したくありませんでしたが、そうせざるを得ませんでした。

悲しい記憶。

でも、この作品に繋がったので良かったです(泣)

ちょっとネタバレしますが、体育館の発表って色んな部活が行いますが……。

時間の割り振りガバってる気がするんですよね。

何を基準にして平等に割り振ってますとか言ってるんですかね?

忖度忖度。

まぁ、私の作品では私がルールなので私の基準です。


さあ、続きを書いてこようと思います。


では、今回はこの辺で。





最後に、

金髪幼女は最強です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ