化け物
翼が朱雀の殺し屋となってから軽く3年は過ぎたであろう。翼は相変わらず人を惜しみなく殺すばかりだ。昨日なんか翼に殺された人々は100じゃ収まらない。こうして語っている今でも翼は戦場に立って人を斬っては燃やす、いつもと変わらず人を殺していった。
「お前か、最近噂の「朱雀の殺し屋」ってのはぁ?見る限りに弱そうじゃないか?」
翼は横から斬りかかってくる戦士に火弾を放ちつつ、後ろの声に振り返る。火弾を食らった戦士は灼熱の炎に包まれ、死んでいく。
「へぇ~、噂通り、ほんとに燃やしてやがる。」
「なんだ、あんたは。」
「まさか、何も知らずに戦場に立ってるのか?この、「西山 裕四郎」を知らずにか?」
翼は、西山裕四郎と名乗った男をジッと見つめた。
「そうか、あんたか。九紫さんが殺せと命じた「西山 裕四郎」は。」
「ああ、そうだ。殺されるつもりはないけどな。」
翼は怪しい笑みを浮かべ、剣を構えた。西山も、翼に剣を向ける。
「俺はなぁ、数々の戦士や将軍の首を取ってきた。俺は天下に最も近い男だ。もはや、朱雀の殺し屋もネズミ同然。お前は俺を殺せないのよぉ!」
西山は翼めがけて走り出す。そして、翼に剣を振り下ろす。
「死ねぇぇぇぇぇぇい!!」
力強い剣が翼を襲う。しかし翼はそんな剣をも振り払った。裕四郎の手から剣が吹っ飛び、裕四郎は丸腰の状態になった。
「な、なぜだ?なぜ?」
裕四郎は初めての出来事に頭を混乱させている。
「なんだ?たいしたことないなぁ。」
翼は裕四郎をジッと見つめる。その視線に気づいた裕四郎は自分が置かれた状況に気づいた。
「たっ、たのむ、見逃してくれ!!」
裕四郎は腰を抜かし、後ずさりをしている。そんな裕四郎を見て翼は再び笑みを浮かべた。
「いいねぇ、その表情、さっきまで、調子に乗っていたくせに、絶望に染まってる・・・。こんな奴を殺すのは、やりがいってものがあるんだよ。」
翼は剣を振り上げた。
「ひぃっ、ばっ化け物!!」
翼の剣は振り下ろされた。
「うわぁぁぁぁぁ!!誰か!!助っっ・・・・・。」
助けを求める前に裕四郎は地面に伏せた。もう二度と、起き上がることはないだろう。
「引けーーーー!!西山将軍が殺されたぞーーーーーー!!」
西山の軍隊が一斉に逃げ出し、勝利は朱雀の国のものとなった。
翼はまだ剣を収めていなかった。翼は、剣を持っていない左手で西山の顔に手を伸ばした。
「報告します。」
場所は変わって朱雀城。広間で九紫は明に西山との戦いでのことを話していた。
「西山との戦、翼が西山裕四郎の命を取り、見事我々朱雀の国の勝利となりました。
「そう・・・・。よくやったわ。九紫、翼。」
明は戦の勝利の報告を聞くたび、いつも暗い顔をしていた。
「九紫、今回の戦で疲れている戦士たちをよく休ませなさい。」
「御意。」
「翼、こちらへおいで、あなたも休息が必要よ。」
「はい、姉上様。」
明は翼を連れて自分の部屋へと去っていった。そんな姿を見た九紫はゆっくりと広間から出ていった。