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朱雀の殺し屋

その日以来、翼は戦士の訓練をすることになった。

朝4時に起きては九紫や他の武士たちに剣の振り方や人の斬り方などを教えらえた。

それからは、ずっと素振りをしたり、他の戦士に組み手をしてもらった。

翼は組手の時なんかは自分の生まれつきであろう運動神経で、跳ぶのが高かったり、宙返りが出来たりなどしていた。

そうして翼と明は引き離された。共に入れる時間は寝る時のみ。それに、翼は起きる時間が早く、寝る時間が遅かったため、その時間はとてつもなく少ないものだった。

九紫は全ての戦士の中で一番強い戦士を作り上げた。そう感じた。

 それだけではなかった。国の公開処刑で罪人の首斬りを翼に任せた。

罪人が縄で縛られてその場に座る。そんな罪人の前に翼は朱影剣を手に立つ。そして、翼は剣を横に払った。中には悲痛な叫び声をあげる罪人もいた。初めは心苦しいものだった。でも、いつしか翼には、そんな悲鳴も血しぶきも、冷たく固まった死体を見るのも、全て快感に変わっていった。

 そうなったころには、翼は戦に出ることになった。九紫は明に反対された。しかし九紫は、「死んでいった父親のため。」と言って明を黙らせていた。

翼はどんな戦士が相手でも負けることはなかった。持ち前の運動神経と国の戦士たちに叩きこまれた剣術、そして、生まれ持った妖術で沢山の敵を殺していった。

翼は火を己の妖力で生み出すことができた。そして、その火で敵を燃やしていった。敵の城に乗り込むときはいつも翼が妖術で城を燃やしていた。

そんな翼はいつしか、「朱雀の殺し屋」と呼ばれるようになった。

 ある日、翼の訓練の日が少なくなってきたとこだった。久しぶりに明と、蒼空を眺めていた。

「ねぇ、翼・・・・。」

明は翼に恐る恐る尋ねた。

「戦、大変じゃない?疲れない?」

そんな問いに翼は笑顔でこう言った。

「いいえ、むしろ、楽しいです。」

明はぎょっとした。だって、翼が、戦を楽しいと言った。沢山の人々を自分の手で殺していくうえ、自分がいつ死んでいくかわからないものを。

「人が死んでいくときを見るのがたまらないのです。特に、血を流して倒れていくのを見ると、死んだな、と、思う。そう思うと、嬉しくなる。一番楽しいのは、斬る時です。斬った手ごたえを感じると、とってもスッキリします。」

翼は淡々と話し始めたが、明は

「あ、ごめん翼!私まだやること残っていたの!後でね!」

と言い、どこかへ走っていった。翼はそんな明をきょとんとした顔で見つめた。

「九紫!?九紫はどこ!?九紫!?」

ドスドスと廊下を歩いて行く明。ある部屋に向き合うと、ピシャァンと襖を開けた。

「おや、どうしたのですか?姫様?」

九紫は手に筆を持ち、紙に何かを書いているようだった。

「どうしたじゃないわ!話があるの!」

「お話ですか?今は、次の戦の戦略を考えているのです。」

「そんなことはいいの!大事な話なの!!」

大きな声で怒鳴る明に九紫は耳を傾けることにした。

「お話とは、何でしょうか?姫様。」

明は九紫を睨みつけながら言い放った。

「翼を戦に出さないで。」

「翼を?なぜ?」

「あの子は私の妹なの。殺人鬼なんかになって欲しくない。」

九紫は「ふっふっふ。」と軽く笑った。

「何がおかしいの!?」

「ははは、すみません。」

九紫はにっこりと笑い、答えた。

「無理です。これが私の答えです。」

「どうして!?」

怒鳴り散らす明に九紫は冷静に答えた。

「翼は妖です。我々人間とは違います。だから、翼は我々人間がまね出来ないことが出来る。そんな翼を、この国は手に入れた。だから、使わなければ損でしょう?」

「妖だとか、人間だとか関係ないじゃない!?翼は誰にもまね出来ないことが出来る!?だから何よ!!手に入れた!?使う!!?翼はあんたの道具じゃないわ!!!ふざけないで!!!」

「理由はもう一つあります。翼が持っていたあの剣、あれは朱影剣。朱影剣の伝説は姫様も知っているでしょう。我々はあの剣が欲しかった。でも、あの剣は翼の本当の父親の形見だと。なら交渉をして譲ってもらうのも、奪うことも出来ません。なら、翼ごと使おうと思い、ね?」

「そんなこと!!理由にならない!!」

「それに、これは翼が決めたことです。その結果、朱影剣に宿る妖が血に反応し、持ち主である翼に乗り付く。翼がああなったのも、全ては翼の判断とあの剣のせいなのです。」

「うるさい!口答えは聞いてないわ!!」

九紫はハァとため息をつく。

「姫様・・・・、何度も言ってるでしょう?これは、あなたのために死んでいった。お父様のためなのです。あなたはお父様の望んだ世界を作る義務があるのでしょう?なら、翼はそのための道具となったのです。」

明は黙り込んでしまい、ついには部屋を出ていった。


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