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明と翼

 朱雀城に来てから翼は、いつも明と共に時間を過ごしていた。いつも広間では明の隣にいつも座らせられたし、明が遊ぶ時も一緒だった。寝る時まで同じ部屋で寝ていたのだ。

「翼?つまらない?」

指に糸からめた明は翼を見て、不安そうな表情で問う。

「いえ、別に。」

翼は伏し目がちに答える。翼は、とある事情で人と共にいるのは抵抗があったのだ。しかし、明はまだ幼い少女。翼の姉と言い張っているが、実のところ、歳は翼の方がずっと上だ。翼は種族の関係で、人よりもずっと長い気なのだ。だから、翼よりもずっと勘が鈍く、世の中の認識も狭い彼女にはそんなことわかるはずがない。説明してもきっと頭の上にハテナを浮かべるだろう。

「あ、そっか、翼は体を動かす遊びがしたいのね!」

明はパァッと自身ありな顔をして、指の糸を外し、翼の手を引いて走り出した。

「え?あっ、。」

翼は驚き、明の行くままに走る。二人は中庭に飛び出した。

「あの木で、木登りしましょ!」

明は湖の真ん中に立つ大きな木を指さす。

「どっちがてっぺんまで速く登れるか、競争しましょ!」

「え?そ、そんなことしたら・・・」

「よーい、どん!」

明は翼をおいて、猛ダッシュで木へ走った。翼は慌てて明を追いかける。

木のふもとまで来れば、明はすでに大分高いことろまで登っていた。

明はまだ下で見上げている翼に「はやくはやく~!」と、手を振る。

その時、明が次の枝に足をかけた時、うっかり足を滑らせてしまった。

「きゃーーーーー!!?」

明が背を下に落ちていく。

「あ、姉上様!!」

翼は明の元へ走り、両手を伸ばした。明の膝の裏と、背中を抱える体制になる。翼の中ではこれで明が地面に落ちずに済むとこだったが、翼は重心が前に来ているうえ、そこに明の重みも加わり、翼は前に倒れ、結局、明は翼の腕を下に地面に落ちたのだ。

「いたたた、あっ、翼!」

明は飛び起きて、翼を見た。

「あ、姉上様・・・けがは?」

明はじ~っと翼を見つめた。そして、

「あはははははは!」

と、笑っていた。

そんな明を見た翼は、最初は不思議に思ったが、少し遅れて明と同じように笑うのであった。

 その後、土まみれになった二人は、家臣にこっぴどく怒られたのだ。


 その後日、二人は夜にこっそり抜け出して中庭に出ていた。二人は地面に座り込み、星を眺めていた。

「ここの暮らしは慣れたかしら?」

「はい、姉上様のおかげです。」

「私何かしたかしら?」

クスクスと笑いながら明は翼に尋ねれば、翼は「いえ」と答えた。

「変なのね、翼。」

「変も何も、まず種族が違います。」

話が微妙にずれる二人。それでも明はクスクスと笑い続けていた。

「知ってる?翼。」

明が星空に指を指した。

「死んだ人って皆、空に昇るの。そしたら、どうなると思う?」

「・・・・わかりません。」

「お星さまになるんだって!あの星一つ一つが死んでいった人で、いつも私たちを見守っているの。」

「・・・・・迷信じゃあないですか?」

「迷信でも、迷信じゃなくても、この世で死んでいった人はあの星と同じくらいの数なの。戦があるからね。」

「戦?」

「国同士が戦士たちを率いて一斉に殺し合いをするの。勝てば、負けた方の国を支配できるから。それで死んでいった戦士たちはたっくさんいるの。」

「残酷なことですね。」

「私のお父様の夢は、この世界の戦をなくして、平和な世界にすること。そのためにお父様も戦をする決意をした。でも、お父様の夢は叶わずに死んでしまった。お父様は私にこの夢を託したの。だから・・・!!」

明はスッと立ち上がった。

「私は、この世界を平和にして見せるの!お父様のために!!」

明の告げた決意は立派なものなのだろう。でも翼から見て明は親に縛られたかわいそうな子にしか見えなかったため、翼は何も言えなかった。

「翼?」

明は翼の顔を覗き込む。翼は明の顔を見て、「なんでもありません。応援していますよ。」と、作り笑顔で告げた。


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