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翼の過去

今回も、長~い過去話が始まります。

ゆっくり見ていってください。

膝をつき、目の前を見つめている翼。何を見ているのかはわからな

ああ、きっと、あの時と同じように、その瞳に絶望を宿しているのだろう。恵瑠はそう思った。

「翼。」

こんな時に声をかけるのは、いけないことは、恵瑠にはわかっていた。でも、翼が何を抱えているのか、知りたかった。そうすれば、なんて言ってあげられるか、わかるから。ここまで、自分を信頼してくれる翼の助けになりたい。恵瑠はそう思っていたのだ。

「翼!」

翼はハッと恵瑠に顔を向けた。顔は、少し赤くはなっていたが、目は濡れてはいない。涙は意地でも流さないのか。

「ねぇ、翼。あの人たちは、何だったの?」

翼は、少し下に俯いていた。そして、意思を固めたかの様に恵瑠に力強い瞳を向けた。

「恵瑠。とうとう、時はきたんだな。私の罪を明かす時が。私の全てを話す時が。」

「罪?全て・・・・?」

翼は頷き、話を始めた。

「これは、お前と出会う、何十年も前の話だ・・・・・・。」


___________________________________________________________________________


時は、何百年も前にさかのぼる。朱雀城と呼ばれる、赤羽家が治める城ではとある者が城を治める姫の元へ対面していた。

「姫様、これが川で拾った妖でございます。」

家臣と見られる男は、目の前に座る少女にそう告げる。

川で拾われたという妖は、深緑色の髪と赤眼をもった子供だった。

そして、姫様と呼ばれたのは、赤っぽい髪の、城を治めるには幼すぎる少女だった。

「おいお前!!姫様の前だぞ!!名乗らんか!!」

男は妖に怒鳴りつける。妖は、悪い目つきを変えず、ただじっと姫を見つめるのであった。

「おいこら!!無礼者!!死刑に・・・・。」

「静かにしなさい。」

「っ・・・・、申し訳ありません。」

再び怒鳴りつける家臣を姫が制止する。すると、妖はやっと口を開いた。

「な・・。」

「ごめんなさい。聞き取れなかったわ。もう一度、お願いできる?」

姫は妖に優しく微笑んだ。

「名前は、ない。」

妖は、やっと聞き取れるような声で言った。

「貴様、ふざけているのか!?」

家臣は再び、声を荒げた。

「いい加減にして。」

「はっ、も、申し訳ございません。」

家臣は再び、姫に謝罪した。

「そうなのね。じゃあ、親は?親はどこにいるかはわかる?」

姫は優しく問いかける。妖は俯いて、姫の問いに答えた。

「母上様は、とうの昔に死んでいる。父上様は、川に流れる前にはぐれた。でも、きっと、もう・・・。」

妖は途中からかすれた声で言葉を続けていた。

「私が、存在しなかったら、父上様も、母上様も、死んではいなかった・・・・・。」

妖は歯を食いしばっているのであろう。ギリギリと鳴っている。

「ねぇ、あなた、私の妹にならない?」

突然の姫の誘いに妖も家臣も「はっ!?」と驚く。

「姫様!!正気ですか!?」

「あっ、失礼だけど、あなたは男なのかしら?それとも女?」

「そういう問題である以前に!!これは人間ではありません!!妖ですぞ!!危険です!!」

「あなた、男の子かしら?女の子かしら?」

「どちらでもないです・・・・。」

「姫様!!聞いてます!?」

「じゃあ、妹ってことで。」

「姫様!!」

「うるさいわよ!」

姫が怒鳴ってもなお、家臣は言葉を続けた。

「申し訳ございませんですが!!」

「まぁまぁよいではないか。」

家臣が最後まで話す前に何者かが後ろの襖の向こうから声を出した。襖が開くとそこには頭の切れそうな男が立っていた。

「九紫殿!!」

「あら九紫。」

この男はこの城の策士であり、城内では九紫(きゅうし)と呼ばれている。

「姫様は将軍がなくなってからずっと身内がなく一人でこの国の天にに立っているのだ。一人寂しいうえに、ずっと緊張感が走っていたのだろう。」

家臣はもう何も言わなかった。

「ですって。よかったわね、翼。」

「まだ何も言ってません。誰ですか翼って。」

「あなたのことよ。私の名前は赤羽 (あかり)。そしてあなたは今日から赤羽 翼よ。よろしくね?」

ああ、ここに住むことはもう決定したのだな。

姫こと明の優しい笑顔を見た妖のち翼はそう思ったのだ。




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