これで最後
「神々の秘石が・・・・バラバラになっちゃった!!?」
床に散らばる赤い石の破片を見た恵瑠は希望を失ったような顔をしていた。
「ざまぁねぇぜ!!これで俺は朱雀の殺し屋に復讐をし、この世界の王になるのだ!!」
「くそぉ、痛い発言言いやがって!!」
西山は恵瑠の吐いた毒を無視して高笑いを見している。
そんな中翼はバラバラに砕け散った神々の秘石に歩み、しゃがむと、麻で出来た紐を拾い上げた。
紐に結び付いた金具の下にはまだほんの少しだけ秘石の破片が付いていた。
翼はそれを握り、今だ絶望的な顔をしていた恵瑠に振り向き、「恵瑠!」と、呼びかけた。恵瑠はハッとした顔で翼にゆっくりと振り向く。翼は少し優しく笑って、
「そんな顔すんな。私が、何とかして見せる。」
と言った。
恵瑠は顔を変えずに翼を見つめていた。
翼は影たちに向き直り、睨みつけた。そして、少しだけ残った神々の秘石を首にかけ、剣を構える。
「これで、最後だ。朱雀の殺し屋は、これで最後だ!」
翼は影の群れに飛び込み、襲い掛かってくる影たちを切り裂きながら、一直線に走っていく。狙いは西山幸四郎。翼が振るった剣を西山は剣で受けた。翼の勢いが強すぎて、西山は後ろに押されていく。翼は勢いを殺すどころか、増していきながら西山を斬り続けた。そして、西山の剣を折り、翼は西山の胸から上下を分けた、
そして、翼は別の所へ目を向け、走り出した。その先にいたのは、明だった。翼は大きく飛び上がった。
頬から水が流れ落ちる。
翼はそんなことも気にせずに明に向け、剣を縦に構えた。
しかし、明は逃げなかった。逃げずにただ、己の命を断とうとする翼をただ見つめていた。
翼と明の距離が縮まっていく。明は遠い昔のように優しく笑った。
翼は目を見開きながらも、明の目の前で剣を振った。
床に落ちた水を赤い液体が覆った。
斬る瞬間、明が口を開こうとしたのは、翼にだけ見えていた。
斬った瞬間、彼女の声が聞こえた気がした。
「ありがとう」
そうい言った気がした。
後ろから恵瑠が走って来て、翼の顔を覗き込んだ。
翼の頬からは水は一滴も流れておらず、代わりに真っ赤な血を被っていた。
「姉上様・・・・帰りましょう。懐かしきの故郷へ。」
「・・・・翼?」
「なぁ、恵瑠。帰る前に、一つやっておきたいことがある。」
「わかってるよ、翼。私も手伝うよ。」
そうして翌日、二人は昼頃に起きていた。
「恵瑠?早いな。」
「もう昼だよ?翼が昼に起きるって変な感じ。」
「昨日は疲れたからな。それより恵瑠。手怪我してんだろ。料理はすんなよ。」
「これくらいどうってことないよ。翼こそ、疲れてるでしょ?その、肉体的にも、精神的にも。」
「疲れてねぇよ。」
「嘘つかない。」
「めっちゃ疲れた。」
「・・・・春香かミア呼ぼうか?」
「・・・・そうだな。」
そうして、二人は誰も知らない場所で世界を救った。
どこまでも蒼い空の下、朱雀城の真ん中の庭の木の下に小さな墓が出来ていた。
朱雀の国の幼き姫君 ここに眠る




