97あざと可愛い
みのりが朝のウォーキングに出かけてから数十分後、ことりの部屋からガサゴソと音が聞こえ出した。
オレは頭を上げて耳を立て、様子を探る・・・どうやら寝返りとかではなくちゃんと起きたようだ。
オレはゆっくりと起きて伸びをしてから、ことりの部屋の扉の前に行く。
相変わらずことりの部屋には入れてもらえてない。
ガサゴソが聞こえなくなった頃、ようやくことりが、部屋から出てきた。
迷わず足に飛びつくオレに「うわッ!」っと女の子らしくない驚きの声を上げたことりはオレだと分かるとボトルスプレーを探し、消毒してから抱っこしてくれた。
「もぐもお姉ちゃん迎えに行こっか?」
ということりにキュンと小さく鳴いて返事をする。朝だしあまり大きな声で鳴くと近所迷惑だしね。
うん?どうしたんだろう?
ことりが何か考え込むようにフリーズしてしまった。
オレに意識を向けさせようとことりの手をペロペロ舐めるが、反射的にオレの頭を撫で返すだけで、考えごとは終わらなかった。
ことり、みのり迎えに行かないの?
キュゥ〜ン。
と鳴いて再びペロペロと手を舐める。
するとことりはオレと目を合わせて、
「とりあえず抱っこして行こうかな。」
とだけ呟いて、玄関へと向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
遠くから両手をブンブン振りながら近づいてくる人がいる!
前にもあったな!この感じ!
「ことり〜♪もぐ〜♪おはよ〜♪」
みのりが遠くから挨拶してくれたおかげで、オレが胃を痛める事にはならなかった。
二度あることは三度あるとも言うが、いや、そういうことわざがあるからこそ、みのりが予防策として、オレに気づかせようとしたのかもしれない!偶然の気がとてつもなくするけども!!
「お姉ちゃんお疲れ様♪はい、お水♪」
「ありがと〜♪」
ことりが持って来ていた水を渡すと、行儀は良くないが飲みながら歩き出した。
散歩中の知り合いとすれ違い様に挨拶しながら、家に向かって歩いているとみのりが(オレが思いもしなかった事を)話し出す。
「えっじゃあ今週の土曜日と日曜日も、もぐを預かるん?」
「うん、もぐってわたしが一緒にいるのが当たり前で、もぐだけでお泊りってしたことないでしょ?いきなり長い時間わたしと離れるんは可哀想やし、練習のためにもええかなって思って♪」
「それで?ホンマはなんなん?」
ことりの声が少しばかり冷たく感じるのは気のせいじゃないと思う。
「大地くんとスノボに行こうと思ってんねん♪だからお願いことりちゃん♪」
みのりが両手を顔の前で合わせて首を傾け、ぎゅっとつむった目を片方だけこっそりと見上げるように開けてことりを見る。
あざといと思う人が多い仕草でも、みのりがやると様になっていた。




