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82side広瀬・・・逆まつげのチワワ

本日2話目です。


広瀬さん目線で、もぐが産まれる前の話です。


「この仔犬は売ることが出来ないよ。」


いつも通りの先生の健康診断のはずが、いつもと違う『売ることが出来ない』という言葉に思考が停止した。


「えっ?どういう事でしょうか?」


「この仔犬の目の下まつげをよく見てみて。」


先生に言われて仔犬の目を見ていると下のまつげが目に貼りつくように生えていた。これは逆まつげ?えっ?逆まつげがダメなの?


私の心の声が顔に出ていたのだろう。先生が深刻さを理解させようとするように、真剣な声色に変えて説明し始めた。


「下のまつげが逆まつげになっているだろう?確かに逆まつげでも生涯治療をしなくても問題ない場合もあるが、この逆まつげはダメだ!放っといたら角膜炎や結膜炎にもなるし、逆まつげとしても永久脱毛させるなど、治療が必要になる。まだ小さすぎるし、お店としても大きくなるまで待って治療してから売るわけにもいかない、この店の販売ルールとしても健康な犬を売る事が第一であり、基本なんだ。広瀬さん、君は治療が必要な犬をなんて言って売る気だい?」


何も言えなかった。私は健康診断をしっかりしてるとお客様にいつも言っていたし、ジアルジアなどお腹に虫がいる場合も、お客様にしっかり説明して、例え飼う事が決まっても虫下しのお薬を飲ませて先生の許可がない限り、お客様にお渡しする事はない。


それがこの店が大切にしている事。


休みの日に他の店の接客など勉強する為に、ペットショップ巡りをよくするが、ショッピングモールに入ってしまっていて、すぐ側に病院がなかったり、ワンちゃんの説明カードに泉門やヘルニアなどの説明も書いてない。酷いところでは、ワンちゃんを抱っこして、さりげなく質問しても説明しない。あと購入を決めた途端に初めてワンちゃんのお腹に虫がいるからと説明して、犬を初めて飼う人に虫下しのお薬を飲ませるように当然のように言って必要な分のお薬を渡し、飲ませ方も飲ませた後、再診の説明もしてなかった。


だからこそ、健康に重きを置いているこの店が誇りであり、私自身もワンちゃん達を自信を持ってオススメ出来た!


まだまだ未熟な自分に喝を入れる!


「まだまだ勉強不足で申し訳ありません。ご指導ありがとうございます!」


そう言って頭を下げた。


「うん、じゃあ店長か副店長を呼んでくれるかい?さっきから内線で呼び出しているんだが、繋がらないみたいなんだ。」


先生の後ろに受話器を置いて残念そうに首を振る松嶋さん(動物看護師)を見て、「分かりました」と返事をして診察室を出た。




今日は副店長は休み、店長はどこだろう?


1階のレジにいたスタッフ達に店長の居場所を聞くと、トリミングのお迎えに行っているらしい。(範囲はあるがプラス500円で送迎サービスを行なっている。)


店長がお迎え?


「お迎えのワンちゃんってもしかして・・・」


「「ラヴィ」」


「マジかぁ!」


思わず頭を抱えてしまった!


ワイヤー フォックス テリアのラヴィ(メス)は可愛い名前のくせに、飼い主さんも怖がるもの凄い噛み犬で、彼女ラヴィに噛まれたスタッフは数知れず!・・・というと嘘になるが(スタッフ全員数えれるし)、ほぼスタッフ全員が噛まれた!甘噛みじゃなくて本気噛み!!


トリマーさんも誰もが担当を嫌がって、困った北川さんが「店の責任者である店長が担当すればいいじゃないですかッ!」と鬼の形相で店長に押しつけた!


それから何回か店長がトリミングを担当しているうちに、ラヴィが店長だけにはそれほど噛まなくなり(多少は噛まれる)、それを見た北川さんが店長をラヴィの送迎からトリミングまで全て行う専任担当にした。


店長の休みの日にラヴィのトリミングの予約が入り、当然のように休日出勤を要求した北川さんは記憶に新しい。


確か店長と副店長で休み交換したんだっけ?

あれ、今日だったかぁ。


ラヴィのトリミングとなると、すぐに病院に行ってもらうのは難しいだろうから、1度病院に戻り先生に状況を説明する。すると逆まつげのチワワをこのまま店長が来るまで預かってくれると言われて、お言葉に甘える事にした。あとは2階のフロアで待って店長がトリミング室に入る前に用件だけ伝えよう。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



しばらくするとラヴィを連れた店長が来た。幸いお客様もいないし、今だ!


そう思って店長に駆け寄ると


ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!


案の定ラヴィに吠えられた。

私がアンタに一体何をしたっていうんだ。


「どうした広瀬、なんか用か?」


思わず固まった私を、店長が促してくれた。


「はい、本日健康診断した仔犬はお店に出せないそうです。その説明をしたいので病院まで来て欲しいと、先生にはラヴィの事を伝えてあるので、終わったら来て欲しいと言われました。仔犬は病院で預かってもらってます。」


「そうか・・・広瀬はなんで出せないか聞いているか?」


「逆まつげだと言われました。」


「なるほどな・・・分かった。伝言ありがとう。」


いつまでも私に向かって吠えるラヴィと一緒にトリミング室に入る店長を見送った後で、チワワの今後を考えて沈んだ気持ちになる。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



私の嫌な予感は現実になった。


店長と先生が話し合った結果、やはりお店に出せない事が決まった。


ブリーダーさんに返す為に連絡をしたら、ブリーダーさんから「そんな犬、育てられない!返金なんてしないから!そっちでなんとかしてよ!!」と拒否された。


スタッフ全員当たり前だけど犬好きだ!その言葉に怒らない人間はいない!


そんな空気の中で店長は


「あんなブリーダーの元に戻す必要がなくなって良かった!」


と言った。店長の言葉でみんなの怒りが霧散したのがよく分かる。


「社長にこの事を話したら『流石にタダで譲ることは経営者として出来ないけど、仕入れ値で譲れる人を探しましょう』って言われた。」


どうする?そう尋ねる様に店長が全員を見渡した時、


「じゃあ、私にください。病院うちの看板犬にします♪そしたらみんなも会いにこれるでしょう?」


と松嶋さんが手を上げていた。




あとから聞いた話によると、病院で預かってた時にあまりの可愛らしさにノックアウトされてたらしい。


どうりで手を上げるのが早いわけだ。


こうして松嶋さんに引き取られたチワワはノエルと名付けられ、病院の看板犬になった♪



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