199めんどくさいこだわり同士
ことりが居間へ戻り、近況報告の続きを始める。
「それで、そこの学校は少人数制でしっかりと技術が学べるかなと思って決めたの。」
「ほーか、頑張りんしゃい。」
ことりは洋裁の学校に進学する予定らしく、どれだけ沢山の学校を見学して決めたのか一生懸命話してた。
「ことりよ、お婆ちゃんこんなん作ったんやで。」
すると、いつの間にか居なくなっていたお婆ちゃんがお菓子の缶カンを持ってことりの元に戻ってきた。
するとみのりがそっとことりの側から離れていった。
みのり?どうしたんだろう?
不思議に思ったけれど、オレはことりの膝に乗ったまま、ことりとお婆ちゃんの話を聞いていた。
お菓子の缶カンの中にはお婆ちゃんが作ったと思われる小物が沢山入っていた。
「ことりよ、これは『鍋敷き』でな、前にことりからもらった布で作ったんやで。」
「わぁ!めっちゃかわいい♪」
みのりもきっとここまでは褒めることが出来るんだろう。
しかし、ことりは違った!
あのめんどくさい洋裁娘である。
「うわぁー♪パッチワークの幅も揃ってて綺麗やし、この柄を主役に全面に押し出して横の柄を落ち着いた色で押さえてるから、全体で見てもまとまってて素敵やと思う!!あと、このステッチの色がアクセントになっててええわ♪あっこっちはわざと柄を全面に持ってきてないんかな?へぇ〜、同じ生地使ってんのに全然違うね〜さすがお婆ちゃん!勉強になるわぁ〜♪」
お婆ちゃんが嬉しそうにうんうんと頷いている背後で、みのりは「わたしには話せないジャンルやわ。」とため息を吐いた。
お菓子の缶カンから次々出てくる小物を、ことりが事細かに褒めてお婆ちゃんが嬉しくなってまた新たなお菓子の缶カンを持ってきた時に、お爺ちゃんとお父さんと一緒にのんびりお茶を飲んでいるみのりを最初から分かっていたならなんでオレを回収してくれなかったんだとちょこっと恨んだ。
そうこうしてるうちに大地が起きてきた。
「大地くんおはよう♪ニャンコのお皿に鯛が入ってたんやけど、まだある?」
みのりがそう尋ねると、大地は回りを確認した。
「残ってないみたいやで。」
「ほーか、じゃあネコどもが食べたんやろうなぁ。」
「え〜!お婆ちゃん今日はもうこうへんの?」
「腹が空かんかったらこうへんやろうなぁ。」
「そんな・・・せっかく缶詰め持って帰ってきたのに、初日から全く会えないなんてッ!」
いや、ことりの登場でニャンコーズはみんな逃げだしたんだよ?
一瞬だけどニャンコーズの視界に入ってるはず・・・この事実が慰めにならないと分かってても、三つ巴の戦いから解放された感謝は伝えたいなぁっとちょこっと思った。