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197三つ巴の戦い


みのりは器用にしゃがんだまま、すり足で数歩後退するとその場に持っていたお皿を置き、ニャンコーズを刺激しないように『離れ』の横に置いてあるウッドベンチに座った。


『母屋』に戻ろうと思っても勝手口から正面玄関へと続く道が戦場になってるし、『離れ』に入ろうと思っても、大地の眠りの妨げにならないように鍵がかかっている。らしい。


みのりが「困ったな〜。」と言いながら愚痴ってた内容を整理すると、そんなところだった。


それでも大声で叫んだら(大地は爆睡中だから別にしても)お爺ちゃんとお婆ちゃんが気づきそうだけどなぁ。


それをしないということは、みのりもこのニャンコーズのにらみ合いを見守るつもりのようだ。


オレ?今すぐ逃げたいですが、何か?


一番ごはんの近くに居るのは勝手口に居るハッピーだが、ラッキーとフーに挟まれた状態だから動けないみたいだ。


一番身体の大きいラッキーは、どうやって隙を突いて鯛をまるまる一匹掻っ攫えるか考えてるようで、体勢を低くしていつでも獲物(鯛)に飛びかかれる準備をしつつ、唸り声を上げて2匹を牽制する。


一番小柄なフーはハッピーとラッキーを警戒しつつも一番気になるのは、この場でイレギュラーな存在である、みのりとオレのようで、オレ達にも注意を払っている。


フーさん、オレ達なんかスルーしてちょうだいな。

鯛は羨ましいけど、こんな三つ巴の戦いに巻き込まないでおくれ。


二"ャーオ"ォォォ


とお爺ちゃんに甘えている時とは、別人もとい別ネコと思えるほど低い声で唸りながらも、誰かが動けば他が隙を突くのは分かりきっているので、にらみ合いが長く続いている。


肉弾戦にはならなそうだなとちょっと安堵の溜息をつく。


それにしても3匹で仲良く分けるとか出来ないのかねぇ。


すっかり上から目線の観戦モードのオレは、呑気にそう考えてた。


しかし、そう考えていたのはオレだけではないようで、


「わたしが鯛を三等分に分けたら、平和的な解決になるのかな?そもそも、今この状態でお皿に触れるんやろうか?」




・・・やめとき!!!


思わず関西弁でつっこんじゃったけど、危険すぎるよ!!!


そんな事したら瞬時にニャンコーズに敵認定されちゃうよ!!!



みのり!考えなおして!!



オレの願いが聞こえたのかは分からないが、みのりは動かなかった。






そして長く続いた三つ巴の戦いは意外な幕切れを迎えることとなる。




ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ



ん?何の音?



何かを引きずるような音が、道路の方から聞こえてきた。


ニャンコーズも気にしてはいるが、目の前の戦いから視線をそらすことはなかった。



ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロピタッ。



えっ?止まった?


思わず音のしていた方を見ると、ことりが駆け寄ってくるところだった。



「もぐ〜♪お姉ちゃ〜ん♪ただいま〜〜〜♪」


突然の乱入者に驚いたニャンコーズは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。



「あっ!ハッピーのやつ、うちを見て逃げやがった!!缶詰めの恩を忘れたか!?めっちゃ重かったのにッ!」



こうして長かった三つ巴の戦いは、乱入者ことりのせいで誰もごはんにありつけないという残念な結果となった。


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