193勝てる気がしない
裏山を下山してる途中、ちょうど中腹辺りでみのりが立ち止まった。
みのりに抱きかかえられているとはいえ、命綱なしでこの高さはマジで怖い。
リード?確かに街中では命綱になりそうだけど、今この場所で命綱にはなり得ないよ?オレ、みのりに抱きかかえられているからね?オレが落ちるとしたら必然的にリードを持ってるみのりも落ちちゃうわけで・・・
ニャーオ
えっニャンコ?何処だろう?
首を伸ばして辺りを見渡す。
ニャーオ ニャーオォン
めちゃくちゃ近くから聞こえってみのり!?
ニャーオ ニャーオォン
鳴き真似、上手過ぎるでしょ!?
みのりがその場にしゃがみこみ、一点の方向を見つめてる。
よくこんな狭い場所でバランスキープしてしゃがみこめるな!
落とさないでくれよと願いながら、みのりの視線を追いかけた。
えっ?タヌキ??
木の下にこちらを睥睨するようにこちらを見下ろす・・・やっぱりタヌキ?・・・がいた。
タヌキ?はじぃ〜とこちらを観察したあと、フイッと顔を背けて裏山の上の方へと登って行った。
さすがホームグラウンドというか、怖くないんだな。
「デカくて無愛想やからラッキーかな?」
は?デカくて無愛想やからラッキー??意味分からん?タヌキと会うとラッキーなの?デカくて無愛想やから?他にもいるの?出会ったやつでラッキーかアンラッキーか決まるの?占いか!?
みのりは立ち上がると、先ほどよりも素早く下山し始めた。
やめて!?怖い怖い怖い!!!
下り坂で走るとか意味分かんない!!!
みのりってアレなの!?
風とひとつになりたいタイプの人だったの!?
今、身をもって大地やことり達が車の免許を取る事を反対したのか分かったよ!!こりゃ危ないわ!!
周囲が!!!
分かったけど、こんな方法で知りたくなかったーーーーー!!!!!(泣)
みのりは中庭にたどり着くまでスピードを殺さずに走りぬけた。
死ぬかと思った(泣)
みのりはそのまま勝手口の扉を開けて大声でたずねた。
「お爺ちゃ〜ん!お婆ちゃ〜ん!でっかい無愛想なネコってラッキーで合ってる??」
ネコ!?あんなにデカいのが!?
ラッキーって名前だったのか・・・
「無愛想ではないが、大きいコがラッキーじゃよ。」
「うん、お爺ちゃんに無愛想な動物はいないから、お爺ちゃんの主観は参考にならない。」
「ん?」
お爺ちゃんはみのりが何を言ってるのか分からんと首を傾げる。
「キジ猫っぽかったかい?」
お婆ちゃんがみのりにたずねた。
「あー、うん。そんな感じでデカいの。」
お婆ちゃんが壁の時計をチラッと見て答えた。
「この時間に家の周りをうろちょろしよるんやったらラッキーでおうてるやろう。」
「やっぱりね〜♪もぐ、ラッキーはお爺ちゃんとお婆ちゃんがお世話してるノラ猫だよ〜♪ケンカしたらあかんからね?」
言われなくても!!
キャン!!
オレは自信を持って答えた。