178素直になれない
グツグツグツ グツグツグツ
生姜の効いた鶏ガラスープの匂いが漂い、空腹を刺激する。
ことりはコンロの火を弱火にして、キッチンから出てきて、時間を確認した。
「お父さんもう帰ってきてる途中やろうか?お姉ちゃん達も何時になるんやろ?お母さんのところにメールきてる?」
「どっちからもきてないよ。」
ピロン♪
「あっ、噂をすれば♪」
ことりがスマホを手にしてメールを開く。
「どっち?みのり?お父さん?」
「いや、お父さんやったらお母さんに連絡いくでしょ。お姉ちゃんからやで。」
「それもそうか。で?なんて?」
「あと10分くらいで着くらしいわ。もぐ、あと10分でお姉ちゃんとお義兄ちゃんに会えるで♪よかったな♪」
あと10分かぁ・・・うぅ、なんだか急に緊張してきた。どんな反応をするべき?久しぶり?違うな・・・元気だった?これも違う・・・みんなに会えて嬉しいよ〜♪って、ミッ◯ーかッ!!!
ぐるぐる頭の中が回っている。
「もぐちゃん、さっきからぐるぐる回ってどないしたん?トイレか?」
実際にぐるぐる回っていたみたいだ。
ガチャ
「ただいま〜♪」
「お邪魔しまーす。」
みのり?大地?
「あっおかえり〜♪」
「いらっしゃい。」
「もぐ、お迎え行かへんの?」
ことりの言葉に反応して玄関にダッシュする!
そうだ!おかえりでいいんだ!!
みのり〜大地〜おかえり〜〜〜!!!
みのりが嬉しそうにしゃがんだところで、つまりあと1メートルといったところで、オレは急ブレーキをかけてリビングに向かって逆走した!
「えっ?」
「もぐなんで〜!!!???」
みのりが悲痛な叫び声を上げているが知ったこっちゃない。
「もぐ?どないしたん?お姉ちゃんとお義兄ちゃんやで?」
知ってるよ!
でもさ、なんかこう自分から飛び込んでいったらオレだけが会いたかったみたいじゃないか!
「もぐに逃げられた〜。」
しょんぼりしながらリビングに入ってくるみのりと大地。
「もぐに忘れられたとかないよな?・・・もぐ、俺のこと分かるか?」
「ちょっと大地くん怖いこと言わんといてよ!」
そうだそうだ!リーヤと一緒にするんじゃないよ!
「まぁ大丈夫ちゃう?お姉ちゃん達見て『遊ぼう♪』のポーズで誘ってるし。」
オレは上半身を伏せてお尻を高く上げてしっぽをブンブン振っていた。
ことりが言う『遊ぼう♪』のポーズだ。
頭で分かっていたとはいえ、どうしても素直におかえりって言えない。
だからみのり、大地、遊んでくれたらオレのこと、撫でてもいいよ?
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