177ホームシック
「だから、もぐがホームシックになってもあかんし、あんまり2人のことを思い出させんようにしようって言うてたやんか(小声)」
「ああ、でも朝出かける時にお父さんが『今日でお別れやな。』みたいなこと言うてたよ?」
「なにおう!」
「まあまあ、肝心な名前とかは言うてへんし、だいたい聞かれたってもぐちゃんに分かるわけないやんなぁ。」
『分かるわけないやんなぁ。』ってオレに同意を求めないでくれ。
むしろ2人がどこに旅行に行ってるかも分かるし、4泊5日ことりん家に泊まることも知ってたから、特にホームシックにならなかったし。
そんな暇なかったし!!
スッとお母さんから視線をそらしてうさぴょんとくろにゃんの元に避難する。
「あっ逃げられた。人が話しかけてんのに無視するやなんて・・・やっぱり言ったところで、もぐちゃんには分からんよ。」
「いや、たまたまちゃう?」
伏せをして左右の前足を交差し、その上に顎を乗せて、ため息じゃなく鼻息をついた。
お母さんはオレに理解力を求めてんのか、求めてないのかハッキリしてほしい。
みのりと大地が迎えに来ることが、もうオレにバレていると判断したことりは、先程までの何か言いたそうな態度を止めて、ハッキリ口に出すようにした。
「もぐ、早かったらあと2時間くらいで、お姉ちゃんとお義兄ちゃんに会えるよ〜。嬉しい?嬉しい??嬉しいの〜♪」
いや、何も言ってないよ?
「お母さん見て見て!!もぐ、めっちゃ笑顔で嬉しそう♪」
「あー嬉しそう嬉しそう。もぐちゃんじゃなくて、台所をかまってくれるともっと嬉しいわ・・・お母さんが。」
「そんな殺生な!もぐとは今日でお別れやのに!!」
ことり〜(泣)
「1 週間もせんうちに、おじいちゃんの家で合流するんでしょ。」
「そうやけど〜。」
ちょっと寂しくなってたけど、再会のペースの早さに寂しさが吹き飛んだ。
「ほらほら、さっさと終わるように晩ごはんは簡単なものにしといたら。」
お母さんがことりをキッチンへと押しやる。
「簡単って言うなら、お母さんがやればいいやん!」
「嫌やわ、作り方分からへんし。」
「えっ?晩ごはんなんなん??」
「餃子鍋♪」
「あー。分かった作るわ。白ネギ使うからもぐのこと見ててや。」
「はいはい♪」
お母さんは晩ごはんの支度をことりに押しつけることが出来て気分良く遊んでくれた。