173嫌われたくない
オレを床に下ろしたことりは鳥かごに洗濯バサミで設置されたバナナを回収した。
「リーヤはバナナもまだ分からへんみたいやな。」
ピィーピィーピィーピィーピィー
鳥かごの近くにいたことで、遊んでもらえると思ったリーヤがことりに『遊んで♪お外に出して♪』というようにアピールした。
また、リーヤタイムかぁ。
ちょっと寂しく感じたけれど我慢我慢。
ことりはリーヤの足元に交互に人差し指を出して、階段を上がるように遊ばせる。
「ーーーッ。」
ことりの息を呑む声が聞こえて、近づいて心配すると、ことりはオレがリーヤに危害を加えるとは思ってないようで、慌ててリーヤを隠したりはしなかった。
それよりもどうしたの?
キュゥ〜ン?
ことりはリーヤを目線より少し高く持ち上げて、爪を確認した。
「うわぁ、リーヤの爪めっちゃ伸びてるなぁ。」
どうやら、リーヤの伸びた爪が指に食い込んで痛かったみたいだ。
じゃあ、切れば?とも思うが、ワンちゃんみたいにギロチンのような専用の爪切りを使うのだろうか?
なにそれ!めっちゃ怖い!!
一歩間違えれば足ごと切り落としそうッ!!!
そもそもトリマーさんとかセキセイインコにいるのか?
やっぱり獣医師さんか??
「よし、爪切ろう。」
ことりがやるの!?
ことりはリーヤをカーペットの上に下ろして、鳥かごの下にある引き出しの中から、軍手と(人間の)赤ちゃん用の爪切りを取り出した。
あっ、ギロチン爪切りじゃないんだ。
「やっぱりなぁ。せめてもう少し大きくなってからにしようかなぁ。うぅぅ、リーヤにまだ嫌われたくない。」
リーヤにとっては爪切りは嫌な記憶になるかもしれないからかな?
爪切り=嫌われる。がことりの中で確立していて、爪切りすることを躊躇してる。
「3代目ピッチは、自力で爪切りしてたし、ほっといたらリーヤも自分でするようになったりせえへんかなぁ。」
いや、比べてもしょうがないでしょう?今の段階で伸びてるんだから。
「ううぅ、まだ嫌われる心の準備がーーー」
ビィィィー !ビィィィー !ビィィィー!
「あっあかんわ!」
カーペットにリーヤの爪が引っかかって自力で取れなくなり、リーヤがパニックなったところで、ことりの嫌われる心準備が完了した。