172証拠
オレは不安になったが、リビングの電気も消されて薄暗くなったので、和室の窓の近く(ことりが寝てる頭上)に陣取り伏せをしながら窓の外を見ていた。
相変わらずの雨にうんざりして、まだ起きないかなぁ?とチラッとことりを見ると、ことりの目が開いていた。
えっ?起きたの?
じ〜っとことりの目を見ていたが、その目はただ開いているだけで何も映してなさそうな光のない目だった。
そろっと立ち上がり、ことりの視界に入るようにことりの目を覗き込む。
すると、まるでピントを合わせるかのように目を何度か瞬かせた。
ことりの目に光が戻った瞬間、ことりはふわっと笑ってからガバッと勢いよく起き上がり、
「もぐおはよ〜♪」
っとオレをぎゅっと抱きしめた。
お父さんとお母さんがことりを起こして行かなかった理由がなんとなく分かった。
今まで知らなかったけど、ことりは目覚めから起動に時間がかかるタイプらしい。
確かに朝の忙しい時間にわざわざ起こすのはめんどくさそうだ。
ましてや本人の予定が何もないなら、ほっとこうってなるのかもしれない。
現にリビングが真っ暗で誰もいない様子を見て、
「あっ、放置された。」
と言っていた。
ことりん家ではいつものことらしい。
ことりは珍しく自分の朝ごはんよりも先にオレのごはんを気にした。
「もぐ、ごめんね。二度寝し過ぎたわ。今すぐごはん・・・ん?入ってる?もぐ、ごはんもらってたん?」
そう言って、オレの脇の下に手を入れて、視線を合わせるようにオレを持ち上げた。
「それにしても、えらい残してどないしたん?体調悪ーーー」
ことりの視線が下へと、正確にはオレのぽっこり膨らんだお腹へ向かった。
「もぐ、これなんなん?」
ことりの低く問う声にしっぽがしゅるんと丸まった。
それからことりの視線は、リーヤの鳥かごに洗濯バサミで固定されたバナナに移る。
もしかしなくてもまずい!
かくはずのない汗がダラダラと全身から噴き出てきた気がする(汗)
ことりの視線が再びオレの目を捕らえた時、すーっと深く息を吸い込む音がした。
お、怒られる!!
お父さんとお母さんどっちか分かんないけど、証拠隠滅くらいしといてくれ!!(泣)
耳をぺたんと倒して怒声を覚悟した。
「フーーーーーッ。今、もぐに言ってもあかんよなぁ。そのかわり今日は様子見やで?お父さんから変なもんばかりもらったらホンマにあかんねんで。」
と心配した声で言われた。
お母さんも一緒になってヨーグルトくれたよ?と心の中でお父さんを援護した。
お読みいただきありがとうございます♪
もぐが居るとテンション上がって、わりとすぐに目を覚ましてたことりですが、二度寝により油断しました。