171早く帰って来てね
スーッと音を立てないようにお母さんが襖を開けた。
「ことりどう?起きた?」
「まだ、寝てるみたいやね。」
「そっか、疲れが出てるのかな?」
「そうやろうね・・・」
お父さんとお母さんがふと目を合わせた。
「・・・・・」
「・・・・・」
どうしたんだろう?ことりのこと起こさないの?
オレは2人の顔を交互にみたが、しばらく黙ってからお父さんが「じゃあ、仕事行ってくる。」とお母さんから目をそらした。
玄関までお母さんと一緒に見送りに行くと、お父さんは嬉しそうに頭を撫でてくれた。
「早く帰ってこれたらいいんだけど、残業になったらもぐっちともこれでお別れかぁ。」
あっ!今日お迎えの日なんだ!!
すっかり忘れてた!
そっかぁ、お父さんが残業になったらこれでお別れか。寂しいな。
キュゥ〜ン キュゥ〜ン
出来るだけ早く帰って来てね〜!(泣)
お父さんを見送りリビングに戻るとお母さんがあらためてオレの朝ごはんを用意してくれた。
みのりが1食分ずつ小分けにしてくれていたから、お母さんもすぐに分かったみたいだ。ただ・・・
ジャラジャラジャラ
フヤもなく、もちろん缶詰めやヤギミルクもなく、ドライのドッグフードのみだった。
ドライオンリーはオレにはまだ早い、けど、食べれないことはない。
そしてお母さんは『食べれるんでしょ?じゃあいいじゃない。何か問題でも?』
という感じでオレにごはんをあげる任務を終わらせた。
ちなみに、お母さんのこの性格を知っていたせいか、リーヤはちゃんとお父さんからフヤかしたごはんをもらっていた。
お父さん・・・なぜオレの分を用意してくれなかったんだ。(泣)
「じゃあもぐちゃん、お母さんもお仕事行ってくるからイイコにしててね?インターホンとかなっても吠えちゃダメよ?ことりが起きるから。」
はいはーい・・・ん?今、なんて?
お母さんはオレの疑問に答えることなく出かけていった。
そういえば、ことり寝起きが悪かったような?
でも、そこまでだろうか??
もしかして、お父さんもお母さんも起こそうとしないのそれが原因か?
ちょっと待って、ことりアラーム解除した上で二度寝したよね!?
一体いつ起きるんだろう?
玄関のドアを見つめ、出かけたばかりのお母さんに今すぐに帰ってきて欲しいと願うほど、オレは不安になった。