167オレが寝てる間に
「じゃあ、トレーニング頑張ったからご褒美やね〜♪」
ご褒美?
言葉の響きにテンションが上がって、しっぽがゆらゆら揺れる。
「もぐ、どっちがいい?」
ことりが取り出したのは、『ロープ』と『ボーン(ミルク味)』だった。
オレは迷わず右手にあるボーン(ミルク味)に飛びついた。が、それを察知したことりが右手をサッと上げてオレを避けた。
どういうこと???ご褒美じゃなかったの?
見上げて目が合うと、ことりはにっこりと微笑んだ。
「もぐ、『おすわり』」
・・・ラストという言葉の意味をオレは間違えて覚えていただろうか?
結局、『おすわり』→『伏せ』→『待て』をもう1回してからボーン(ミルク味)をもらう事が出来た。
ボーン(ミルク味)をかじって夢中になっていたが、急にトイレに行きたくなった。
ボーン(ミルク味)を置いてトイレまで行こうかと思ったが、置きっ放しにしてことりに回収されたら、もう一度もらうのが大変な気がして咥えていくことにした。
トイレシートでちゃんと用をたして、再びリビングに戻ろうとしたところで、お父さんの部屋から微かな寝息が聞こえてきた。
正直、お父さんにはリーヤが来てから思うところがある。
気持ち良さそうに寝ているお父さんにだんだん腹が立ってきて、オレはお父さんに向かって走り出した。
オ レ を か ま え ーーーーーー!!!!!
バフン。
おもいっきりジャンプしてお腹の上あたりに(毛布かぶってるから大体だけど)着地した。衝撃はそれほどなかったのか、お父さんは眠ったままだ。
オレはボーン(ミルク味)を口から放して、お父さんの上や頭の周りを走りまわった。
起きろー!!
だけど、お父さんが起きるより前にオレの方が疲れてしまい、お父さんのお腹の上で丸まって寝ることにした。
もちろんボーン(ミルク味)は回収した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「もぐ〜?・・・あっお父さんと一緒に寝てんのか。」
耳がピクピク動いてことりの声を拾うが、まだ眠たくて目が開かない。
バタバタバタ
うん?玄関の方に向かう足音が聞こえる。
その瞬間ぱちっと目が開いた。
急いで玄関に向かって走って行くと、ことりがブーツを履いて今にも出かけるところだった。
キャン!キャン!キャン!
オレの声にびっくりしたのか、ことりはサッと振り返ったが慌ててドアを開けて「行ってきま〜す♪」と笑顔を見せて出て行った。
まだ間に合う!まだ声は届くはず!
オレの声を聞いたらきっと戻ってきていつもみたいに『しょうがないなぁ。』って言いながらも連れて行ってくれるはず!!
そう思ったオレはドアの向こうにいるはずのことりに向かって鳴き続けた。
キャン!キャン!キャン!キャン!キャン!キャン!・・・キャン キャ・・・
キュゥ〜ン
だけどいくら鳴いても、ことりは戻ってこなかった。