142ことりの目当て
それからのことりは早かった。
嘘です。長かった。
トイレットペーパーやエチケット袋を用意してるうちに、「多いな、もぐも持たなあかんし、これやったらカバン、リュックに変えた方がええかも。」と言って、荷物を移していった。そしてリュックを持ってなんか考えてるなぁって思ってたら、「あかんわ、このリュックやったら服と合わへん。」と言って着替え始めた。そのまま部屋着に着替えて出かけないっていうのはどうですか?ダメですか?そうですか。最後に一言だけ、ダウンコートは変わらないんですね。
とにかく、やっとことりの2度目の準備が出来て出発だ。
ことりはマンションを出ると、河川敷の方へ向かった。
河川敷に着くと橋が架かっている方へと向かい、その橋を渡った。
また新しい道だ。
ことりは迷いのない足どりで歩いて行くと大きな道路に出た。
家電店、家具屋、古本屋、大型の店が並んでいる。
ことりが向かったのは大型ホームセンターだった。
店内に入ると、ことりは迷わず右へと進んだ。
向かった先は突き当たりにあるペットコーナー。
「わぁ、もぐ、チワワやで♪こっちは柴犬♪どの仔犬も可愛いな♪」
一通り見終わると、鳥のいるコーナーへ移動する。
「あっいた!」
ことりの目当てはセキセイインコだったようだ。
そこには身を寄せ合って眠る7羽のヒナがプラスチックのケースに入れられていた。
「緑とこれは青って言うより水色やなぁ。」
ことりは残念そうに言った。
期待していた色ではなかったらしい。
「それに小さすぎるな。」
大きさ?それとも年齢的に?
どちらかは分からないけど、期待通りではないことは分かった。
鳥かごの方を見ると1羽のセキセイインコがいる。
ヒナと違って止まり木に自力で止まっている。
ことりはまっすぐにそのセキセイインコに手を伸ばした。
ことりさん、鳥かごの下の方に『手を入れないでください!』と書いてあるけど見えてますか?
ことりが手を鳥かご越しにセキセイインコまであと数センチというところまで近づけた途端、セキセイインコは飛び退くように手から離れた。
「このコもあかん。人慣れしてない。完全に手を怖がってるわ。」
それだけ言うと、用は済んだと言わんばかりに脇目も振らずに店を出た。
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