132大人の事情
オレが取り乱したことで、広瀬さんや北川さん達が一瞬ことりに疑いの目を向けたが、ことりに抱っこされてキュゥン キュゥンと甘えた(注射は嫌だと懇願した)オレの様子を見て思い過ごしだと安堵してた。
ことりはその視線を不快に感じたようで、眉間にシワを寄せ目を細めて、自分ら一体なんやねんコラ!と不機嫌なオーラを表したものの、広瀬さん達の安堵した様子に意味わからんと首を傾げ不思議そうにしてた。
まぁ、コーギー先輩を見た後だからな。
タイミングが悪かったんだろう。
そしてバカ正直に虐待を疑いましたと言う人間はいなかった。
当たり前だ。いたらビックリするわ!
お会計をして次回予約はみのりがするからと断り急ぎ足で病院へ行く。
「一体なんやったんやろう?気ぃ悪いわ。」
そりゃそうだ。
断じてオレがややこしい態度をとったせいじゃない。
すべては高野とかいう高飛車なおばさんのせいだ!!
オレはすべての責任をなすりつけることにした。
病院に着くと受付をして、待合室で順番を待つ。
受付終了間際だったからか待合室にいる人は少なかった。
ことりは待合室を見渡して、「ここは犬がやっぱり主なんやろうか?」と言っていた。
その呟きが聞こえたらしく、松嶋さんが「どうしてそう思うんですか?」と受付越しに尋ねてきた。
「聞こえちゃいましたか、すみません。・・・えっと、昔、セキセイインコを飼ってたんですけど、病気になって近所の動物病院に連れて行ったんです。そしたら、そこの先生が『動物病院やけどオールマイティになんでも診れる獣医師は少ないねん。』って言って鳥類に詳しい先生を紹介してくれたんです。その病院ではポスターとかほとんど鳥が描かれていたので、やっぱり専門分野ってあるのかなと思いまして。」
確かに一言で動物って言っても種類が多過ぎるよな。
「確かにその考え方だったら、うちは犬猫のポスターばかりね。ふふ、その先生もおもしろいくらい正直♪・・・あれ?なんで犬専門だと思ったの?」
「それはこのペットショップにワンちゃんしかいないから不思議に思ってたんです。」
そういえば、いないなぁ。
「ああ、なるほど。それはうちの社長の方針というか好みね。」
「好みですか?」
「もふもふペットショップって名前つけるくらい犬や猫とか毛のある動物が好きなの。鳥類もオッケーらしいけど、虫やヘビとかは好みじゃないらしいの。」
本当に好みなんだ・・・
「でも、それだけじゃ犬しかいない理由にはならないんじゃないんですか?」
「ペットを飼おうって思った時、『犬を飼おう!』とか『猫を飼おう!』って思うことはあっても、『犬か猫を飼おう!』と思ってお店に来ることはあまりないと思わない?」
「そうですね〜。ワンちゃんの種類で悩むことはあっても、ワンちゃんかネコちゃんかで悩むことは少ないように感じます。」
「だからうちのペットショップでは犬専門店、猫専門店、鳥・小動物専門店があるのよ!」
えっへん!と胸を張る松嶋さん。
「鳥・小動物専門店って、専門店を名乗るわりにまとめ過ぎだと思います。」
あっ、スルーしないんだ。オレもそう思ったけど。
「・・・需要と供給ってあるのよね。」
急に大人の事情が入ったな!
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