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131side広瀬・・・コーちゃん

本日2話目です。

ご注意ください。


それからしばらく経った日曜日のこと、もぐちゃんの飼い主の妹さんをお見送りして、1階にあるランドリールームへ行く。そろそろ洗濯機も止まっただろう。今のうちに干しておこう。


それにしても、うさぴょん壊されちゃったか。

妹さんはもぐちゃんのシャンプーの間に糸を買いに行くそうだ。うさぴょん無事に直るといいな。


そんなことを考えながら、バスタオルを干して戻ると、慌てた様子で先輩に声をかけられる。


「広瀬さん!今高野さんが来てたよ!」


うっ!あのおばはんかぁ。でもラックスくんの様子も気になるし、挨拶してこよう。


「ありがとうございます。高野さんはどちらに?」


「高野さんは帰ったけど、それよりもトリミング室に行って!コーちゃんが!」


先輩の切羽詰まった様子に、私はそれ以上何も聞くことなく、トリミング室に向かった。


トリミング室に入ると、お店にいた時には想像出来ないほどにボロボロになったコーちゃんがいた。


私はふらふらと駆け寄り抱きしめた。


「コーちゃんーーーッ!!」



コーちゃんの肌を見ると脱毛だけじゃなく、傷も沢山あった。

おそらくスリッカーブラシでブラッシングしたんだろう。

あれほどボーダーコリーとコーギーじゃ毛の長さが違うからブラシの種類も違うと説明したのに!!

もしかしてボーダーコリーにもスリッカーブラシで押し付けるようなブラッシングしてたの!?

痛いに決まってるじゃない!そりゃ脱走もするよ!剣山で全身洗ってみろよ!痛いだろうが!血だらけになるだろうが!それと同じだ!!


北川さんに休むように言われ、休憩室に戻ると店長がいたので全て話した。

私も店長も高野さんにボーダーコリーのことを話す気にはなれなかった。


コーちゃんのトリミングが終わった頃、様子を見に行った。


さすが北川さん、傷はあるけど綺麗になっている。


嬉しそうに私に甘えるコーちゃんにどうすればいいのか分からなかった。


ただ申し訳なくて、やるせなくて、少しでも多く人間から愛情を感じて欲しいと抱きしめた。


ピンポン!ピンポン!ピンポーン!!


高野さんが迎えに来たと同時に、コーちゃんの表情が変わる。

ガブリと私の手首にかみつき低く唸った。


また!おれを捨てるのか!?

裏切り者!裏切り者!裏切り者!!


そう言われた気がした。


あんなに優しかったコーちゃんが、人を憎むような感情を持つくらい酷い目にあったというの?


コーちゃんを引っ張っていく高野さんを慌てて追いかけて、北川さんと2人で傷があったことやブラシが違うことを説明した。


コーちゃんの悲痛な声と姿がいつまでも頭から離れなかった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



それから数日後、高野さんがコーちゃんを連れてやって来た。


「ラックスくん、高野さんこんにちは。」


心の中でコーちゃん!と叫びながら抱きしめた。


傷は増えてなさそう。

状態が悪化してないことに安堵する。


「今日はラックスを返品にきたの!」


今なんて言った?


「契約上、生き物の返品はできません。命を預かる覚悟の上で家族に迎えて下さいと何度も説明しましたよね!?」


コーちゃんがおばはんを気に入らないのはともかく、おばはんがコーちゃんを気に入らないだと!ふざけんなッ!!


「だって懐かないんだもの!ラックスを返品して、そのお金で新しい犬を買ってあげるわ!なんなら今度は少し高くてもいいわよ?それならお店にとっても損はないでしょう?」


はぁぁぁぁぁ!?


「申し訳ありませんが高野さん、それは契約違反です。そんな勝手な理由で返品はできません。」


私の怒りが頂点に達した時、店長の声が聞こえた。


「契約違反がなによ!懐かないように育てたあんた達の責任でしょ!!返品して新しい犬を出しなさい!!」


「あなたのようなワンちゃんを物扱いする人に、うちの可愛いコ達を渡すことはもうできません。」


「生意気な!」


「確かに、高野さんに懐かないように育ててしまったのは、こちらの落ち度かもしれません。」


「そうでしょう!」


「しかし、契約は契約。返品はできません。ですが、ラックスくんを保護して新しい飼い主を見つけることは出来ます。」


「保護ですって!?私が加害者とでも言いたいの!?それに新しい飼い主を見つけてまた売るつもり!?ずいぶんとがめつい商売をするのね!」


「いいえ。新しい飼い主さんには販売はしません。保護したワンちゃんに新しい家族を見つける。ただそれだけです。探せるな?広瀬。」


店長が私を見て問う。


探す?バカ言わないで!!


「ラックスくん、いえ、コーちゃんは私が引き取ります!」


私はまっすぐ店長を見て言った。


「あら?じゃあ、あなたに私が直接売ってあげるわ♪」


良いことを思いついたというように高々と話すおばはん。


アホなのか?


あれほど説明しといたのに。


「高野さん、資格を持たない人間がペットを売るのは犯罪行為になりますよ。ラックスくんを手放すつもりなら、うちの広瀬が引き取ります。何度も言いますが返品はできません。あなたに売るワンちゃんもいません。」


店長がそう言うと、顔を真っ赤にしたおばはんはコーちゃんのリードを床に叩きつけて、「ネット悪評拡散してやるッ!!!」と怒鳴って帰っていった。


ふぅ。2階のフロアにいた全員が息を吐いた。


「広瀬、本当にひきとるのか?」


「当たり前ですよ♪」


店長の言葉に即答する。


「広瀬の勤務時間も長いし、コーちゃんも沢山傷ついた。家に閉じ込めるよりも店に連れてきて、出来るだけ側にいてやれ。店の2階なら外に出る心配もないし、リードなしでも大丈夫だろう。うちには看板犬もいないし、ちょうどいい。みんなもいいな!」



こうしてコーちゃんは、私の愛犬&もふもふペットショップの看板犬になった。


コーちゃんの名前は元々はコーギーからきてる。

私の愛犬になったのにそのままの名前はちょっと思うところがあったので改名した。


新しい名前は広瀬 コウちゃん。愛称はコーちゃん。


コーちゃんの未来が明るい光に包まれていますように♪


お読み頂きありがとうございます。


次話より、もぐ目線に戻ります(*^▽^*)

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