117黒猫のぬいぐるみ『くろにゃん』
「ただいまー。」
大地が帰宅し、まっすぐオレのところへ来てくれる。
嬉しいけど、元気半減なオレは緩くしっぽを振ることでおかえりとアピールした。
「もぐ、最近あんまりかまえなくてすねてんのか?ごめんなー。ほらっ遊ぼう!うん?あれ?うさぴょんは?」
大地がサークル内を探したがうさぴょんが見つかるはずがない。
「もぐが、うさぴょん壊しちゃってん。」
大地の疑問が聞こえたのかみのりが簡潔に答える。
「そっかぁ、ずっと一緒におったもんな。もぐ、今日はボールで遊ぼう?な?」
そう言って大地がボール遊びに誘ってくれるが気分じゃなくて丸まった。
「「・・・・・」」
そんなオレを心配そうに見つめるが、2人は目を合わせてとりあえずそっとしとこうと頷き合った。
次の日、朝から2人と浜辺へお散歩に行き、ごはんを食べてお見送りして、昼寝して、夜2人の帰りを待つ。
そんないつも通りの生活パターンに戻っていった。
しかし今週末から2人は旅行に行く予定があるので、やはりいつもより少し忙しそうだ。
そんな中でもオレの元気を取り戻そうと、2人はオレのことを気にかけてくれた。
その次の日、いつも通りの生活。
「ただいまー。もぐどないー?」
「まだ元気ないなぁ。ごはんは一応食べてくれるんやけどね。やっぱり寂しんやろうか?」
「うーん。」
心配かけてごめん。
確かに寂しいのも間違いじゃないんだ。
でも、これは自己嫌悪かな。
八つ当たりでうさぴょんを壊したのが一番辛いんだ。
またその次の日、いつも通りの生活。
「もぐ、ただいま!」
明るい大地の声に、伏せていた顔をあげる。
大地はオレのサークルの前までやってくると、背後に隠していた手を勢いよく前に差し出した!
「ジャーン!!ほらっ、もぐ新しい友達やで♪」
キッチンにいたみのりがのぞきに来た。
「黒猫のぬいぐるみやん♪めっちゃかわいい♪もぐ、よかったなぁ〜♪」
うさぴょんと同じくらいの大きさの黒猫のぬいぐるみをそっとオレの近くに置く。
クンクンと鼻を鳴らして、匂いを嗅ぐと当たり前だがオレの匂いはせず、あまり興味がわかなかった。
うっかり壊さないようにしないと。
ただそう思った。
大地とみのりが話し合って、この黒猫のぬいぐるみは『くろにゃん』になった。
くろにゃんかぁ、オレの匂いが移る頃にはお気に入りになるのかな?
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