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116うさぴょんとの別れ


ビリビリビリビリビリビリーーーーーーーーーー!!!バリィッ!!!


えっ?


違和感がありまくる音と感触に正気に戻ったオレは、サークル内を見渡し、そして足元を見下ろした。



おもわず開いた口元から、それは解放されてコロコロと足元から遠ざかるように転がっていき止まった。


オレが今踏みつけている物体はなんだ!?


答えが分かっていても、違っていてくれと願うように足を退けて数歩後ずさる。


踏みつけていた場所にあるものは、『うさぴょんの胴体』であった。首はなく、本来首があったところには雲のような綿が胴体から溢れ出ていた。


恐る恐る視線を上げて、先程転がっていったものを確認する。

そこにあったのは耳が取れかけ、生地が引っ張られすぎたために、顔面もいびつとなった『うさぴょんの頭』であった。


『うさぴょんの顔』はオレの方を向いており、オレはうさぴょんと目が合った瞬間、思考がただ1つに絞られた。


な、治さなきゃ!!


慌ててうさぴょんの無事な方の耳を咥えて『うさぴょんの胴体』の方へと連れて行く。


そして『うさぴょんの頭』と『うさぴょんの胴体』をつなげるように、サークルの壁を利用しながら押し込んだ。


うさぴょんごめんね!治れ治れーーーーー!!


ビリビリビリビリビリビリーーーーーーーーーー!!!


再び布が限界の声をあげる。

『うさぴょんの胴体』は背中がパックリと大きく開き、これでもかと詰め込まれていた綿が、逃げ場を求めるようにうさぴょんから溢れだした。


あとから冷静になって考えれば、魔法使いじゃあるまいし、押し込んだだけで元に戻るわけじゃないということは分かるが、うさぴょんの目がオレを責めている気がしてたまらなかった。


うさぴょん、ごめん!!


オレは心から謝った。



ぬいぐるみとはなんでこんなに恐ろしいんだろう。


同じ表情のはずなのに、こちらの心持ちで、笑っているように見えたり、悲しんでいるように見えたり、怒っているように見えたりする。


オレは今うさぴょんに怒られ責められているように感じた。


胴体から頭を引きちぎり、さらに頭を胴体に押し込もうとしたことで、背中を引き裂いた。


本当に犬がどうして治せると感じたのだろうか?

追加で何もしなければ、まだみのりが頭と胴体をつなげてくれたかもしれないのに・・・。


オレはうさぴょんから距離を取って伏せた。


どの角度に逃げてもオレを責めるうさぴょんの目からは逃れられなかった。


うさぴょん、本当にごめん!!






夜になってみのりが帰宅して、サークル内の惨状に驚いた声をあげた。


みのりはサークル内を片付ける時に利用するダンボールにオレを入れると、大きめのジップロックを持ってきて、うさぴょんをカケラも残さずそれに入れ、サークル内を整えてオレを戻したあとで、うさぴょんを持ってキッチンへと戻っていった。


目の前でゴミ箱に入れられることを想像すると、みのりの心づかいがありがたかった。


ペットショップの時からずっと一緒だったうさぴょんの空間がポカンと空き、寂しさと後悔を感じながら、もう一度うさぴょんに謝った。


本当に本当にごめんね、うさぴょん。


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