111一緒にいる時間
家に帰って来てからことりはオレを抱きしめて泣いている。
やっぱり可愛がってたベリーちゃんが亡くなっていたのは辛いんだろう。
ことり、元気出して?
顔をペロペロ舐めて慰さめるが、「もぐ〜。」と抱きしめる力が強くなるだけだった。
オレにあんなことがあったベリーちゃんとこんなことをしたと話すわけじゃなくて、無言で涙を流して悲しんでいる。
そんなことりを見ながらオレはお爺さんの言葉を思い出した。
『共に生きる時間を大切にしなさい。犬は人間の4倍の速度で生きるんじゃから。』
オレはことりより早く死ぬだろう。
ことりは今は学生で時間の自由がきくけれど、社会人になったらなかなか会えなくなると思う。
それこそ今回のベリーちゃんのように、あとからオレが死んだ事を聞くかもしれない。
みのりと大地はいつも一緒にいれるけど・・・
『共に生きる時間を大切にしなさい。犬は人間の4倍の速度で生きるんじゃから。』
ことりとはあとどれくらいの時間を一緒に過ごすことが出来るのかな?
・・・ベリーちゃんごめん!
ことりの心を返してくれ!
オレは焦る気持ちを抑えきれなかった。
ことり!ことり!泣かないで!オレがいるよ!
オレは顔や首をペロペロ舐めて存在をアピールする。
くすぐったいのか、頭を撫でて止めるように促された。
オレの目を見て涙を拭い笑ったことりを見てもう大丈夫だと思った。
ことりの視線が部屋を見渡して一言呟いた。
「それにしても、この部屋はーーーーー。」
ことり?
グゥーーー!
ことりのお腹がなって一気に現実に戻された。
そういえばオレもお腹減ったわ。こんな時でもお腹減るんだなぁ。
「ふふふ、こんな時やのにお腹減るんやなぁ。」
ことりはすっかりいつもの調子に戻り、お昼ごはんの支度を始めた。
そして、ことりがごはんを食べ終わってから、オレの(分量半分の)ごはんが用意され、しっかり『おすわり』と『待て』の練習をさせられた。
気になるのはことりのあの言葉・・・
『それにしても、この部屋は静かすぎる。』
あれはどういう意味だったんだろう?
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