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110ベリーちゃん


DVDを返却して時間に余裕が出来たことりはオレの願い通りゆっくりと歩いて行く。


意外とこの時間帯にお散歩しているワンちゃんは多く、シーズー、チワワ、ダックスと多くのワンちゃんとすれ違った。


すれ違うワンちゃんの多くは、道路脇に生えている雑草の匂いを嗅ぐのに夢中になり、カバンに入ったオレを認識することはなかったが、人好きのワンちゃんはことりの動物好きのオーラ(?)を察知して、ことりに近づいて来た時についでにオレに気づく。


オレに気づいたワンちゃんの反応は3パターンに別れる。


1オレを気にせずことりに突進。

2オレに興味を持ち匂いを嗅ぎに来る。

3ことりの近くでオレに気づき、驚いてバックステップで遠ざかり、驚かせんなよ!と言わんばかりの逆ギレで吠えまくる。


ワンワンワン!ワンワンワン!ワンワンワン!ワンワンワン!ワンワンワン!ワンワンワン!ワンワンワン!ワンワンワン!


あっこれ?これは例外だよ。


一軒家の庭先で飼われている中型犬の雑種のワンちゃんでオレを鋭く察知し門扉の前で待ち構えたようにいきなり吠えられたんだよ!


ことりはお馴染みなのか「今日も元気やね〜♪」と呑気に言っているが、知らないオレは突然のドッキリに心臓が尋常じゃない速度でバクバクいっている!(泣)


そんないろんな出会い(?)がありながらことりはオレに、「もぐ、ここの美容室はうちが中学生の時に行ってたんやで♪」「もぐ、ここはうちが通った塾やで♪」「もぐ、ここは春になったら綺麗な桜が咲くんやで♪」「もぐ、ここは春になったらツバメが巣を作るんやで♪」「もぐ、あの大きなバスはお馬さんが乗ってるんやで♪」などなど、その情報今かな?と思うミニ豆知識を話しながら散歩する。


まぁ、ここがことりの良いところだな♪

さっきすれ違った、イアホンで音楽をガンガン聴きながら歩きスマホをしてワンちゃんを散歩させている男とか、大きな声で電話しながら散歩してワンちゃんの様子を全く見てない女とか、曲がり角から突然車が飛び出してくるとか考えないのかな?

その時に犠牲になるのは先を歩くワンちゃんなんだけど。


まあ、新しい散歩コースは河川敷と違って新鮮だな♪・・・ん?馬ってなんだ!?


疑問が生じたものの時すでに遅く、バスはその場になかった。


くっ、せめて、意思疎通する方法があればッ!


そんな葛藤をしていると、ことりが一軒の家の前で立ち止まった。


そこには花壇に水やりをしているお爺さんがいた。


「おはようございます♪お久しぶりですね♪」


「おぉ、元気にしとったかい?」


「はい、あの今日はベリーちゃんどうしてますか?」


「ベリーは今年の夏に逝ってしもうたよ。」


「そうなんですか。」


ことりの声がだんだん小さくなっていく。上手く言葉が出ないんだろう。


「わしより先に逝くとはなぁ。・・・泣かんでええ、ベリーは十分頑張って長生きした、大往生じゃ。」


ことりの目からは今にも涙が溢れ出しそうだった。


「そうですね。」


「犬を飼ったのか?」


お爺さんがオレを見ながらことりに尋ねる。


「はい。」


「共に生きる時間を大切にしなさい。犬は人間の4倍の速度で生きるんじゃから。」


「はい。」





帰り道、ずっと黙っていたことりが、ゆっくりと話しだした。ベリーちゃんはビークルのメスの甘えん坊さんでことりによく懐いていたこと、ことりが小学生の頃、よく撫でさせてもらったり、散歩させてもらったりしたこと、高校生になってからなかなか時間が取れず疎遠になっていたこと、「最後にもう一度会いたかった。」と呟いて、我慢していた涙が決壊した。


お読みいただきありがとうございます(^ ^)

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