108ミッション
「じゃあ、もぐはさっきうちにしたみたいに、お母さんの顔を舐めて起こしてあげてね〜♪」
さっきの寝ぼけ様が嘘の様に目を覚ましたことりは、さらりとオレに難題を押し付けて和室を出て行った。
起こしたことに対する仕返しだろうか?
それだとしたら、倍返しどころじゃないんだけど!?
そろりとお母さんを見た。
ちょっとだけ起きている事を期待したけど、爆睡中のようだ。
別に顔を舐めて起こすのが嫌なんじゃない。嫌なんじゃない!大事なことなので2回言わせて頂きます!
ことりはオレのことめちゃくちゃ可愛がってくれてるから舐めても怒らないって考えるまでもなく分かったよ?
でもさ、お母さんってどうなの?
あ!念のため言っておくと、最初オレを飼うことを反対してたからじゃないよ!
お母さんってオレとほとんどスキンシップしないんだ。嫌われてはないと思うけど、会った時に挨拶がわりに一撫でしてくれるだけで、その後はノータッチ。
オレに触った回数って数えるほどしかないんだよ?
オレ、お母さんに嫌われてはないと思うけど、顔を舐めても怒られないと思えるほど受け入れられているとは思えないんだよね。
さて、どうしようか?
結論を言えばオレは逃げた!
よくよく考えるとさ、オレは人間の言葉を完璧に理解しているけど、普通の仔犬は理解してないじゃん!!
教えられてもいないことを出来なくても当たり前じゃね?
っていうことで、お母さんを起こすというミッションはスルーしました♪
なんでこんな簡単な事にすぐに気づけなかったんだろう♪
ことりを追いかけて洗面所に行って足元で甘えても、お母さんを起こしてくれた?とか聞かれないし、やっぱり言ってみただけなんだろうな。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ことり達の朝ごはんの後、半分の量になったオレの朝ごはんをすませて、ことりによる『おすわり』と『待て』の練習をしていると、お父さんが「練習に行ってきます。」と出かけて行く。
練習を中断して玄関で見送っていると、ことりが少しだけ首を傾けて考えたあと疑問を口にした。
「ねぇ、お母さん。」
「なに?」
「お父さんの練習って太極拳だったよね?」
「そうだけど?」
それがどうかしたの?とでも言うようにことりを見るお母さんに、ことりはさらなる疑問を投げかける。
「太極拳って袴でするものなの?」
「・・・・・するんじゃない?」
「・・・・・」
「・・・・・」
疑問を疑問で答えたお母さん。
そういえば、テレビ特集で太極拳をやっている人を見たことがあるけど、ジャージだったような・・・。
本編裏話
父「ことり、お父さんが習っているのは中国拳法でな、ーーーーーーー」
こ「太極拳じゃダメなの?」
父「・・・」
こ「太極拳じゃダメなの?」