101みのりの八つ当たり
オレ達を迎えに来た大地の車に乗って、みのりが今日の出来事を報告していると、大地が予想外と言わんばかりの声を上げた。
「えっ?みのりがメールした時にことちゃんにお願いしてくれたんやなかったん?」
大地はオレのトリミングや病院のことを忘れていた訳じゃなくて、最初から旅行が重なってしまったんだから、みのりからことりへ頼んであると思っていたそうだ。
「ええ!!大地くん分かってたんやったら言ってよーーー!!!」
「そんなん言われても、分かってると思ってたし。」
みのりに八つ当たりされてる大地は、さらりと怒りを受け流すが、受け流されやり場のない気持ちを抱えたみのりは『大地くんさえ、ちゃんと言ってくれてたらことりに怒られる事もなかったのに!!』とさらに怒りが増幅し、オレを抱きしめる力が強くなっていった。
ぐ、苦じいぃッ!!はなじで!みのりッ!!
翌日ささやかな復讐とばかりに、大地のお弁当のおかずは大地の嫌いな物でうめつくされ、唯一の逃げ場のはずのご飯は、珍しくおにぎりになっており、味を変えようとかぶりついたら、おにぎりの具さえも嫌いな物になっていた。本当にさんざんな昼食となった。
「ただいま。」
「おかえり大地くん♪今日のお弁当はどうだった?♪」
ニコニコ笑いながら尋ねてくるみのりに、文句を言っても意味がないことを確信し、自分の何がみのりを怒らせたのかはよく分からないが、早く機嫌を直してもらおうと空の弁当箱を差し出しながら言葉を選んで答えた。
「ん、まあまあ。」
選んでもあれだけ嫌いな物づくしのお弁当を『美味しかった』と言えない大地であった。
大地の嫌いな物づくしであったお弁当箱が、綺麗に空になっているのを見て、機嫌を直したみのりは、晩ごはんを大地の大好物に変更し作り始めた。
なんでオレがそんなことを知っているかって?
大地がオレを抱っこしながら愚痴っているからだよ。
さすがに気の毒になったオレは、おとなしく撫でられる事にした。
大地、お疲れ様。
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