72『ダイアリー最終章』
やっと最終回です。
書きすぎ、書き足りないところがいっぱいありますが、満足するまで手を加えていたらいつまでたっても手放せないので、これで最終回といたします。
真夏ダイアリー
72『ダイアリー最終章』
気が付くと、ベッドの中だった。
天井が……違う。
部屋の中を見渡す……。
まだ夢を見て居るんだろう、もう一度目をつぶって開けてみる。
「……なに、これ!?」
雰囲気は自分の部屋だが、自分の部屋ではなかった。つまり、部屋の家具や、いろんな小物たちは自分の趣味なんだけど。見覚えがない。いや、見覚えのあるものはいくつかあったが、それは雑誌やネットで見て欲しいと思ったけど諦めたものたち。PS5の最新バージョン。お気に入りのグランツーリスモのハンドルコントローラーもロジクールの最高級品。クローゼットを開けると、ポップティーンなんか見て、ため息だけついておしまいになっていた服たちがならんでいた。
壁にかかっている制服は、都立乃木坂高校ではなく、グレードの高い、坂の上の乃木坂学院高校のそれだった。
ドアの向こうで気配がするので、ドアを開けて、恐る恐る廊下を進んだ。
「あら、真夏、早起きなのね。今日は学校休みなのに」
「休み?」
「そう、入試の発表で休み……うん、休み」
お母さんは、リビングのカレンダーを見て確認した。
「ここ、わたしの家……?」
「どこかで、頭うった?」
わたしは、頭のあちこちを触ってみた。とくにタンコブなんかはできていない。
「留美子、そろそろ行くよ」
え……お父さんが、スーツ姿で現れた!
「なんだ真夏、親の顔がそんなに珍しいか?」
「な、なんでいっしょに居るの……?」
「え、あてつけか。このごろ帰りが遅いから」
「だって、二人は離婚して……」
「おいおい、かってに親を離婚させるなよ。じゃ、行ってくる」
「いってらっしゃい」
お母さんは、そのままキッチンへ行ったが、わたしはお父さんの後をついていった。
「なんだ、真夏。パジャマのままで」
わたしは、自分がパジャマにカーディガンを羽織っているだけなのに気づいた。玄関のドアを開けても寒いとも思わなかった。
事態が飲み込めない。
「お父さん……潤は?」
「潤……だれだ、それ?」
わたしは、お父さんの袖を引いた。
「お父さんの娘、わたしの腹違いの姉妹!」
「真夏、ほんとにおかしいぞ。おれの娘は真夏一人だ。だから、多少の贅沢もさせてやれるんだぞ」
「う、うん……」
納得はしなかったけど、勢いで返事をしてしまった。お父さんは、そのまま歩いて行ってしまった。
そこで、初めて寒さを感じて身震い一つ。そして門扉の表札を見て驚いた。
そこには鈴木と大きく書いてあり、その脇に真一、留美子、真夏と親子の名前が書かれていた。
慌てて自分の部屋に戻り、カバンからスマホを取りだした。今まで使っていたのとは違う高級機種だったけど、もうこの程度では驚かない。潤のアドレスを探した……無かった。記憶を頼りにかけてみた。
――お客様のお掛けになった、電話番号は現在使用されて……――
最後まで、聞かずに切った。AKRの事務所や、マネージャーの吉岡さんのアドレスも消えていた。事務所の電話番号……急には出てこなかった。悪い予感がして、PCを点けてAKR47を検索してみた。事務所の電話番号はすぐに分かったけど、少しためらわれ、メンバーを確認した。
リーダーの服部八重さんも、仲良しだった矢頭萌ちゃんの名前、他のメンバーの名前もあったけど。小野寺潤と鈴木真夏の名前は無かった。
わたし……ちがう世界にリープしたんだ。
「真夏、朝ご飯!」
「あとで……!」
わたしは思いついて、第二次大戦を検索してみた。
――電撃的な真珠湾攻撃に成功した日本は、湾内の戦艦群のみならず、運良く発見した空母4隻も撃沈。主導権を握り、翌1942年(昭和17年)6月ハワイ諸島を占領。アメリカ側から講和の申し出を受けるが、これを拒否……――
そこまで、読んだところでスマホの着メロがした。
「はい、真夏」
「わたし……」
「ジーナさん!」
「ビックリしてるでしょうね……」
「はい、しっかりビックリしてます」
「あなたと省吾がやったことは成功したわ。パソコンの画面にも出ているでしょう。講和の話にもなったんだけど、国民が納得しなくて講和は決裂。そしてやっぱり日本は戦争に負けて、歴史は変わらなかった。で、このプロジェクトに関わったものは、それぞれの時代にもどったわ。だから、真夏、あなたも本来あなたの居るべき世界に戻ったの」
「でも、でも、潤が居ないの、存在しないの!」
「ティースプーンの存在意義よ」
「ティースプーン……」
「さっき、四阿で話したでしょ。紅茶を飲むためにはティースプーンが必要で、そのためにはカップやお皿、さらにそれを置くテーブルが必要だって。真夏、あなたというティースプーンが存在するために、潤という子は、テーブルのように必要な子だった。だから、プロジェクトそのものが無くなった今、潤も、その存在の前提になった真一さんと留美子の離婚もなかった」
「そんな……そんな都合のために」
「ごめんなさいね、真夏」
最後の言葉はステレオになった。振り返ると、そこに居た……。
「お婆ちゃん……!?」
「少し馴染みはじめたようね」
「どうして、ジーナさんのこと、お婆ちゃんだなんて……でも、お婆ちゃん。ああ、分かんない!」
「最初は、わたしが適合者だった。でも力が不十分なんで、孫の真夏が大きくなるのを待ったのよ」
「……思い出した。お婆ちゃんは十八歳でお母さんを産んで、そのあと行方不明になったのよね」
「真夏が、以前いた世界ではね」
「潤にも、省吾にも……もう会えないんだね」
「もう少しすれば、真夏の記憶からも消えるわ。わたしも真夏に事実を伝えるために、時間を限ってインスト-ルされたことを話しているの」
「イヤだ。潤のことも省吾のことも、他のことも、みんな忘れたくない!」
「忘れるわ、だって存在しない世界のことなんだもん」
「どうして、こんなことにわたしを巻き込んだのよ!」
「このプロジェクトが失敗したから、三百年後、日本という国が無くなるのよ……それを知って、わたしは協力することにしたの」
「そんな……」
「最後に、省吾のお父さんが言ってた。過去をいじるんじゃない。未来を変えていくんだって……」
――真夏も、お母さんも、朝ご飯。片づかないわ!――
「はーい、いま行くわ!」
お婆ちゃんが、見かけより大きな声で返事して、わたしとお婆ちゃんはダイニングに急いだ。
「お母さん、今夜も泊まっていくんでしょ?」
「ううん、今夜は高校の同窓会」
「ハハ、お母さんは人気者だものね」
「そうよ、あなたをお腹に入れたまま卒業式に出たんだもん」
「それを、わざわざ卒業式の日に、クラスで告白するんだもんね。わたし、お腹の中で恥ずかしかったわよ」
そのとき、テレビで『ニホンのサクラ』の制作発表をやっていた。主要メンバーはAKRだけど、主役の一人をオーディションで公募すると出ていた。
わたしは、瞬間で応募することに決めた……。
真夏ダイアリー 完
拙い作品ですが、少しでも面白いと思って読んでいただけたら嬉しいです。
まだまだ書き溜めた作品がありますので、少しづつお目に掛けられればと思います。




