65『こんな感じのストーリー』
真夏ダイアリー
65『こんな感じのストーリー』
潤とわたしが主役に抜擢された!
《二本の桜》は。山畑洋二監督の手によって映画脚本にされ、タイトルは『ニホンのサクラ』とされた。
話は、戦後日本にやってきた米兵の記憶をたどるカタチで進んでいく。
松下香奈子と松下真奈子という双子の女学生が主役で、その役が、潤とわたしに回ってきた。
香奈子は活発で、考える前に手や口が出てしまう。
真奈子は大人しく、考えてから行動に出るタイプ。
「そんなことしてたら、考えっぱなしでオバアチャンになっちゃうよ!」
これが、香奈子の口癖。香奈子は双子の姉を、いつももどかしく思っている。
「香奈子みたいにしてたら、人生の半分は事件だよ。今は、お父さんとかが後始末してくれてるけど、大人になったら、困るのは、香奈子自身なんだよ。だいたい香奈子ったらね……」
「分かった、分かった、マナが説教すると長いんだから。あたし友だちんち行ってくる!」
「ちょっと、待ちなさい、カナ!」
と、いつも、こんな調子。
双子でも、こんなに性格が違うので、友だちも、近所の人たちも二人を間違えることはなかった。
しかし、女学校に行くと同じ制服なので、パッと見には区別がつかない。
そのうち、ふとしたことから、真奈子に好意を寄せる旧制高校の学生が現れる。真奈子は、慎重で、なかなか学生に惹かれながらも、思いを受け止めることも、伝えることもできない。
「もう、まどろっこしいんだから!」
加奈子は、真奈子にすり替わって、学生に近づき、仲良くなってしまい、学生と真奈子の付き合いを強引に進めていく。
「カナ、あんた、あの人とお付き合いしちゃうことにしちゃったのね!?」
「マナ、あの人のこと好きなんでしょ。だったら、ここから先は自分でやりなさいよね!」
「余計なことを……!」
「余計とは何よ。惚れておいて、声も掛けられないくせして!」
「カナ!」
「マナ!」
二人は、生まれて初めての大げんかをやった。
そして、ようやく、真奈子は学生と素直な付き合いができるようになった……その直後、学生は学徒出陣で、戦場に行くことになった。加奈子にお膳立てしてもらったことを心苦しく思っていた真奈子は、学生の出征直前に、学生に秘密を明かす。
「あなたが、会っていた半分は加奈子なの。あなたが好きになってくださったのはどっち?」
「ちょっと、マナ。こんなことしたら、全部オジャンじゃないよ!」
おかしくうろたえる加奈子。真剣な真奈子……。
「……知ってたよ。二人が入れ替わっていたこと」
ポカンとする双子の姉妹。
「いつから……?」
「あの、桜の木の陰で、キスしようとしたら、拒んだだろう……あれはカナちゃんだったから。だろ?」
「だって……あんな大事なこと、身代わりができるわけないでしょ……あ、それでバレたか!?」
「でも、わたしには……そういうこと、なさらなかったわ」
「それは、マナちゃんが、そういう……愛情表現を望んではいなかったから。カナちゃん、ありがとう。マナちゃん。帰ってきたら、あの桜のところで待っている!」
そう言い残して、学生は、戦場への列車に飛び乗った。
それから、二年、学生は復員兵として、約束の桜のもとにやってくるが、そこにはマナもカナも居なかった。
学生は、語学の力を活かしてGHQの通訳の仕事につき、仲間の米兵といっしょに「これが最後」と思い定めて、あの桜のもとに足を運ぶ。戦災で焼けて枯れたと思っていた桜のうち、二本だけが、枝が重なり、そこから一輪だけ花を咲かせていた。
「日本の桜は生命力が強いなあ」
「……米兵のあんたに、そう言わせただけで、ここに来た目的が果たせた。行くぞ」
そう振り返った彼の目の前に彼女が居た。
「君は……マナ!?」
「……うん。やっと会えた」
自然に抱き合う二人、重なる唇。
「会いたかった、やっと会えた……カナちゃんは?」
「わたしと一緒に居る……」
そう言って、マナは自分の胸を押えるのであった。
まあ、こんな感じのお話。主な配役は記者会見の時に発表されたが、主役のマナとカナの発表は、記者会見の場で発表された。
「それでは主役二人の発表をいたします……」
山畑監督の声に、カメラマンがいっせいにカメラを構えだした……。




