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真夏ダイアリー  作者: 大橋むつお
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53『禁断のテレポテーション』

真夏ダイアリー


53『禁断のテレポテーション』    



「やあ、ミリー。ま、入ってくれよ」

「思ったより元気そうじゃないの、安心した」

「病気じゃないからね。ただ熱中しちゃうと、もう学校に間に合わない時間になってしまってさ」

「まさか、女の子がいっしょにいたりしないでしょうね?」

「もっとエキサイティングで魅力的なもの」


 フレンドリーだったのは、そこまでだった。


 玄関のドアを閉めると、厳しい顔で、わたしを睨みつけた。


「誰だ、お前は……ミリーは実在の人物だぞ!?」

 

 ウソ……と、わたしは思った。ミリーは、この時代のアメリカに来るために作られたアバターだと思っていた。オペレーターはだれだか分からないけど、実在の人物のアバターを使うなんて、かなり余裕がない証拠。


「ここに来るまでに、誰かに会ったか?」

「ええ、ジェシカに。ついさっき、この家の前で」

「ジェシカは、いまごろ本物のミリーに会っているかもな……ここまでリスクを冒しながらやってくるなんて、相当情報を掴んだ幹部……オソノさんか?」


 省吾は、わたしの正体は分からないらしい。


 黙っておくことにする。


 省吾がトニーというアバターでやろうとしていることは、とんでもないこと……らしいことは分かっている。そして、その実行が目前に迫っていることも。ただ、以前ワシントンDCに来たときよりも情報もアバターの設定も不十分だった。ことは急を要するもののようだ。


「わたしが、だれだか明かすことはできない。でも、あなたが、これからやろうとしていることは、どうしても阻止するわ」


 省吾は指を動かし掛けた。テレポの前兆だ。わたしは反射的に――やめろ――と思った。


「くそ……テレポを封じる力も持っているのか」


 わたしは、自分にそんな力があるとは知らない。ただ――やめろ――と、思っただけ。


「省吾……いや、ここじゃトニーね。トニーがやろうとしていることはルールから外れてる(具体的には分からないけど)やらせることはできないわ」

「まあ、いいさ。今日はまだ二日だ。時間に余裕はある。アバターとはいえ人間だ、いつまでも緊張状態で、僕の行動を邪魔できるわけじゃない」

「そう、あなただって同じ……根比べね」


 わたしたちは、外見的にはソファーに座ってリラックスしていた。まるで恋人同士がくつろいでいるように……でも、精神的には、全力で対峙していた。一瞬も息を抜けない。


 トントントン


 そのとき、ドアのノッカーが鳴った。


「わたし、ジェシカ。やっぱ心配でやってきちゃった……トニー、トニー、居るんでしょ。ミリーもいっしょなんでしょ」

「ご指名だ、君が出てやれよ」

「いいわよ。近くに居さえすればテレポブロックは解けないから」

「半径どのくらい?」

「地平線の彼方ぐらい……はい、待って。いま開けるから」


 ドアを開けると、ジェシカの明るい顔があった。


「やっぱ、気になってやってきちゃった……真実が知りたくて」


 ジェシカの、すぐ横に本物のミリーが現れた。ドアの陰に隠れていたようだ。


「誰よ、あなた……!?」



 本物がスゴミのある笑顔で詰問した。瞬間の動揺。やつはテレポしてしまった……。


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