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真夏ダイアリー  作者: 大橋むつお
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52『ニューヨーク郊外・1942』

真夏ダイアリー


52『ニューヨーク郊外・1942』    




 気が付くと、1942年6月2日、ニューヨークの郊外にいた。


 少し違和感を感じた。わたしは視点を第三者モードにして、自分の姿を見た。


 ギンガムチェックのワンピースの上には、ブロンドのポニーテールが載って、脇にブックバンドでまとめた教科書を挟んでいた。前回、ワシントンDCに行ったときよりも、わたしらしくなかった。


 どうやらイングランド系アメリカ人のようで、肌は白く、瞳はブルー。頬に少しソバカスの名残が……頭の上には、02ーMILLIEというIDが付いていた。これは、この時代の人間には見えない。同じ時代に来ている未来人同士が互いに認識しあえるように付けられたIDだ。前回は、これが無かった。タイムリープした未来人が、わたし一人だったせいだろう。その他、いろんな情報が新しくインストールされている。


「ハイ、ミリー!」


 声が掛かって、後ろで自転車のブレーキ音がした。


「ハイ、ジェシカ!」


 この子はジェシカで、ハイスクールの同級生ということになっているで、ブルネットの髪をヒッツメにして、陽気なパンツルックである。


「トニーのとこ?」

「うん、ここんとこ休みが多いから」

「成績はいいけど、あいつなんか変よね」

「変……?」

「あ、いやゴメン。そういう意味じゃないの……」


 わたしは、そんな気はなかったけど、ジェシカの顔には、なんだかトニーを非難がましく言ったような後ろめたい色が浮かんでいた。


「ミリーには勝てないわ」


「どういう意味?」


「わたしも、今日の欠席にかこつけて、トニーに会いに行くつもりだったのよ……でも、たかが二日休んだだけで、お見舞いってのも、ちょっとフライングだわよね」

「ジェシカ……」

「いいの、これでふっきれた。トニーとは上手くやってね。BALL(ボール=卒業式に付随したパーティー)楽しみにしてる!」


 そういうと、ジェシカは口笛を吹きながら、ゆるい坂道を下っていった。

 

 わたしは、この世界では、卒業間近のハイスクールの最上級生で、トニーとは恋人同士に設定されているようだ。


 分かりやすく言えば、恋愛シュミレーションゲームのようなもので、成り行きによるイベントの発生やら、分岐がいくつもある。


 ただ、それがゲームと違うのは、これは現実であり、イベントや分岐は楽しむためではなく、予期できないリアルなアクシデントとして起こること。


 つまり、それだけリスクの大きいタイムリープであるということ。


 さっきのジェシカは、理性的にも感情的にもバランスのとれたいい子。でも、理性も感情も人一倍大きく、時に自分でコントロールできなくなるところがある。トニーへの愛情は、インストールされたわたしの疑似感情よりも強い。早くトニーに会って問題を解決しなければ、とんでもないことになりそうな予感。


 ドアをノックして二呼吸ほどすると、ガレージの方から、トニーが現れた。頭の上には、01-TONYのID。


「ハイ、ショーゴ!」


 わたしは、明るくフレンドリーに、そして、正確なIDで奴に呼びかけた……。



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