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とある夫婦の会話より

2020年、6月。とある都内のタワーマンションの一室で、

一組の夫婦が話していた。

「何度も言うようだけど、あたしらが地球で魔力を放つ時に必要になるのが

銃のカタチをした物体なんだよ。いわば依り代、媒質って奴だな」

「依り代がないとどうなるんだ?」

 夫の質問に、レムリア人の妻は無言で首を横に振って、

掌を向けて魔力を放出した。

 掌からは、ぼんやりとした透明なエネルギーが放出されているのが

傍目から見ても分かった。

 妻の行動を見て、夫―鳴河六郎なるかわ・ろくろう―はそれを見て、一言言った。

「なるほどね、イメージを収束出来ないとこうなるのか」

「無理矢理にイメージを収束させるなんて事も出来るが、

それすると効率が極端に落ちるんだよ」

 レムリア人の妻―レベッカ・ニールセン・鳴河―は魔力放出を止めて言う。

「拳銃には拳銃の、アサルトライフルにはアサルトライフルの射程ってモンがあるだろ?

射程距離はその者の持っている依り代の射程に準じるんだよ」

「でも待てよ?99年のささやかな争いの最中にレムリアの軍隊が放った

魔力光線ってのはどういう原理なんだ?」

「アレも原理的には同じだな。炎の属性に魔力の属性を調節して、

砲口から収束させて放つんだよ。こっちの戦車の装甲を貫通は出来ねェが、

装甲を溶接して砲塔の動きを封じる位の熱に調節して放つのさ」

 夫はなるほどね、と言って頷いた。

「あたしたちにとって、銃弾の種類はあんまり重要じゃねぇんだよ。

重要なのは、弾を放つってぇイメージを収束させて射放つ事だからな。

今日お義母さんから頂いたL96AWSは狙撃銃だから、

狙撃銃の射程と威力が得られるってぇ話になる。

因みにレムリアで実包を装填した本物の銃を持つ権利がある職業なんざ、

軍人と警官と郵便局員と警備員と銀行員だけだぜ?

しかも厳格な検査をパスしねぇと許可が降りねぇようになってる。

その他の職業にゃ絶対に許可が降りる事はねぇだろうな。

他の職業に許された武装は古式ゆかしき弓と剣と盾と鎧兜類ぐらいなもんさ。

あたしゃ220年前に従軍義務を終えちまってるから、軍務の終了時に全部返却したぜ」

「そうなのか?てか220年前って、日本じゃ明治か大正くらいだから、なに銃?」

「あたしが貰ったのはそんな上等なモンじゃなかったな。

フリントロック銃ってぇ奴だったよ。

それから較べたら、今の装備はスゲー進歩してると思うぜ?

レムリアの軍隊も小火器類は地球産のを装備してるってぇ話だし、

今やったらこっちの軍隊ともいいとこいくんじゃねーか?」

「そうなのか?」

「そもそもレムリアじゃあ、鉄は地球でいう宝石や金銀プラチナ並に貴重だしな。

アルミやミスリルは死ぬほどとれるが、鉄は殆どねぇもんよ。

連中、鉄が売るほど採掘出来る地球が羨ましくってたまんないだろうぜ」

 妻レベッカは、そう言うと背後の空間からサブマシンガン型のエアガンを

取り出して左右に振ってみせた。

「BB弾だけで人を殺せるってホントか?」

「勿論、殺そうと思って魔力を込めて撃ったらエアガンでも人間を殺せるぜ?

でもあたしゃやらねーな。そんな手間をかけずとも、人を殺すなら殴ったら殺せるし。

なんたってあたしゃあ黄金龍だからな。レムリアに住まう種族の中じゃあナンバー2の強さだ。

そりゃあ神龍エンシェント・ドラゴンにゃ負けるが、この地球でなら怖いものなんて殆ど無いぜ」

「スクールモンの狂犬は?」

「…アイツぁ別格も別格、あたしたち龍族が唯一恐れる人間だ。

人界から来たりし厄災、まさに異常天才と言っていい。

何せ悪なる神の遣わした悪なる神龍スクールモンと勇者アーデルハイド=アイゼンヴェルケ様に見出され、

鍛えに鍛えられた人外の才覚を持つ人間だ。

アイツを敵に回すってぇのは、最強の古龍であり稀代の錬金術師、

スクールモンと勇者様を敵に回すって事になるからな。

皇室のお偉方でさえ、手出し出来ねぇ別格の存在よ。

少なくとも、あたしなんざ手も足も出せねえ、じゃなくて出したくねぇな。

正直言って恐ろしいからよ!」

 六郎の質問に、レベッカはかぶりを振って答えた。

まだ暖かいこの時期に、彼女が鳥肌を立て震えているのは近年頻発する異常気象のせいではないだろう。

それぐらい、スクールモンの狂犬は恐ろしい存在なのだ。

「話を戻すけど、エアガンで撃てる魔弾の数って何発なんだ?」

「そりゃあ装弾数により前後するさ。リボルバー式なら6発、

電動ガンなら装弾数が桁違いに増えるから、実質撃ち放題ってな感じだな。

勿論、弾無しでも撃てなくはねぇが、その場合効率がガタ落ちになる。

とてもじゃねぇが、殺しにゃ使えねえよ。

後ろに勢いよく吹っ飛ばすだけになっちまうんだよ。他の女に目移りせずに、

少なくとも、魔弾を撃つには何らかの動力源と弾が要る。

動力と弾が尽きねぇ限りは撃ち続けられる事になるな」

「あ、動力源は必要なんだ…」

「たりめーだ。逆に言えば何らかの動力源無しじゃあ、魔弾は放てねぇ。

その代わり、放ったら最強だぜ?地球の防御技術じゃ防げねぇんだからな」

「しかしまぁ、レムリア人ってホント気長で金持ちが多いんだな。

都心のタワーマンションを現金一括で買えるなんて、こっちが申し訳なくなる位だ」

「そりゃそうだ。なんたってあたしたちは惑星一丸となって400年待ったんだ。

待つのは慣れっこだよ。それに、余計な苦労なんかわざわざ背負う必要はねぇよ。

この部屋だって、あたしが大学生やってた時に小遣いで買ったんだから。

腐らせるのは勿体ねぇし、遠慮なく使えるモンは使っちまおうぜ?

何せ夫婦なんだからよ。二人三脚で行かなきゃ、地面にぶっ倒れるだけだ」

「そりゃありがたいけど、男の甲斐性ってのはどこにやりゃあいいんだ?」

「そんな屁の役にも立たねぇ代物なんざ、犬にでも食わせりゃいい。


毎日同じ職場に通って稼いでくれてるだけで、あたしゃ十分だよ。

夫婦なんだから、荷物は半分持たせてくれよ。

そっちの方がこの先楽しい未来が待ってる感じがしないか?

飲めるところとバッティングセンターさえあれば、

世は事も無し。それじゃあ人生つまんねぇぜ?」

「そりゃあ、そうだけど」

「あと、ロクローは他人任せ過ぎるんだよ。

テメーにとってのナンバーワンとかは、他ならぬ自分自身で決めるモンさ。

売れているモノがいいモノだなんて考えてたら、

世界一のラーメンはカップヌードルになっちまうぜ?

それじゃあ人生つまんなくなるばかりだ。

限りある人生、有意義に使っていかなきゃな」

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