未知との遭遇
プロローグ
1999年、夏。
ノストラダムスの予言に書かれている通りにはならなかったものの、
世界には異変が生じ始めていた。
突如として世界中の各主要都市に謎の門が出現、その中から謎の軍勢が出現したのである。
日本には旧日本軍の軍服を着た兵士や馬に乗った鎧武者が、
アメリカには西部劇さながらのカウボーイと第2次世界大戦時という古めかしい装備に身を包んだ兵士たちが出現。
世界同時多発的に行方不明、生死不明になったとされている者たちが突如として現れるという怪奇現象に、
世界は混乱の只中へ叩き落されることとなったのであった。
異世界からの侵略ともとれるこの行為に、
人類は唖然騒然とされるまま手を拱いている訳にはいかず、
事態の鎮圧にあたる為、軍事力をもって異世界からの帰還者たちに対処しようと試みた。
最新鋭の兵器の前に、時代遅れも甚だしいカウボーイたちとM1ガーランドしか持たない旧米軍の兵士とでは
軍事力では現代兵器を擁する分遥かに勝っており、異世界からの侵略(?)はあっという間に鎮圧できる…筈であった。
そう。事態はあっという間に解決できる…その筈だったのだ。
異変に気付いたのは、いの一番に謎の軍勢と交戦状態に入ったアメリカ軍が最初だった。
陸海空の3軍で大規模な攻撃を仕掛け、それこそあっという間にカウボーイたちと旧アメリカ軍兵士たちを殲滅…出来る筈だったのだ。
十字砲火にクラスター爆弾の爆炎が彼等を覆い、カウボーイと兵士たちはそれこそ跡形もなく消滅している筈であったが、
驚くべきことに、これらの攻撃は彼等に有効な打撃を何一つ与えられておらず、カウボーイと兵士たちは全くの無傷であった。
それならばと化学兵器が使用されたが、これも全くの効果なしであった。
驚くべきことに、異世界からの帰還者たちは降り注ぐ銃砲弾雨を全く意に介していなかったのである。
降り注ぐ爆弾、銃撃、噴射されるガスは彼等に傷一つ付けることはできず、虚空に吸い込まれ、拡散していくのみであった。
彼等の多くは向けられる敵意や放たれる銃撃を全く意に介さず、流暢な英語を始めとしたそれぞれの言葉で敵兵士たちに話しかけた。
「ヘイ、GI!一杯やりたいんだが、いい店知ってないかい?」
―異世界とのファーストコンタクトはこのようにして始まったのであった。