Departed or Escapee ~Illa side~
登場人物
ガリル=サルディ (26) ♂
本作の一応の主人公。
大量殺人で捕まった死刑囚の男、執行まであと1ヶ月。
殺人に銃火器を使用していたのもあり、銃の使いはお手の物。
気性が激しく、カっとなるとすぐにでも人を殺しかねない。
チェルシー=デリンズ (32) ♀
麻薬の密輸により終身刑を言い渡された女。
面倒ごとは嫌い、この度の事態を軽視しているが
自由になれるならと一緒に脱獄を試みることに。
ヴルネス=ダネール (35) ♂
強姦致死傷罪で無期懲役を言い渡された男。
酒癖が非常に悪く、もともと暴れやすい。
4人の誰よりも島に居た時間が長く、
監獄について非常に詳しい。
ディデル=ネイジー (29) ♂
ガリルと同じく大量殺人で捕まった死刑囚。執行まであと2週間。
薬品に非常に詳しく、医療にも詳しいが
彼自身相当な精神異常者で、何が起こるか、何を起こすかわからない危険な奴。
スイッチがあるようで普段は普通…?
イラ=ゲオント (?) ♂
監獄の監守。
そして繰り返される輪廻に関係がある(?)人物。
ほぼほぼセリフが無いので聞きがメインになります。
ガリル ♂:
チェルシー ♀:
ヴルネス/ケイサツ ♂:
ディデル/ケイブ ♂:
イラ ♂:
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ガリル『それは唐突に起こった。300人が収容されていた監獄島から人が消えた、そう。俺たち4人を除いて』
イラ「ガリル、調子はどうだ?」
ガリル「あ? なんだ、また馬か?」
イラ「お前もラジオを聞いていたんだろう? 今回はセシールとミリアが注目だ、どうする?」
ガリル「俺はダッシュって決めてるんだ、用がすんだらとっとと消えな」
チェルシー「馬の話なら別んとこでやってくんな、アタシは興味ないんだよ」
ガリル「チェル、やけにピリピリしてんじゃねぇか? ヤニに脳までやられちまったか?」
チェルシー「あぁ? あんたの両目、煙草の火を欲してるのかい? なんならおいでよ、どうせ一か月もすればあんたは電気椅子の上だ」
イラ「お前ら、面倒ごとを起こすな」
ディデル「面倒事も何も、こう隣接するような配置にしたのは君達、監獄の管理側の問題だろ?」
イラ「はぁ…ディデル、お前も入ってくるな」
ディデル「入ってくるな? 寝ようと思ってるのに騒がれちゃたまったもんじゃないね。あら、ヴルネス。帰って来たんだ?」
イラ「……夜時間だ、くれぐれも騒がないでくれ。いいな? ヴルネス、さっさと牢に戻れ」
ヴルネス「シャワーは俺達囚人の安らぎだ、あんまり急かすんじゃねぇ。言われなくても」
ガリル「安らぎか、犯し足りねぇなら、そこのチェルでもどうだ?」
イラ「ガリルッ!!」
ガリル「るせぇな、静かにすりゃいいんだろ…?」
チェルシー「覚えときな、そのうちあんたの玉削いでやるからね」
(夜時間)
ヴルネス「本気かガリル?」
ガリル「…当たり前だ、電気椅子なんてまっぴら御免だぜ」
チェルシー「言っとくけどヴルネスとアタシは別に監獄ってだけで死ぬわけじゃないんだ、巻き込まないでくれるかい?」
ディデル「そうだね、ガリル。俺はそれに乗っかってもいいよ? どうせこのまま電気椅子にかかるんだったら脱走試みて射殺も悪くないよねぇ」
ガリル「自由のために準備はしてきた、これを見ろ」
ヴルネス「こいつは…」
チェルシー「…これは…ピストルを3つなんてどこで手に入れたんだい…?」
ディデル「勤務時間になれば監守の目を盗むなんて訳ないだろう? といってもどこにあったのかは話は別だね」
ガリル「コンベアーの管理室の奥には大量の銃が置いてある、そこからならいくらでも。隠しやすいこいつらにしたんだ」
ヴルネス「しかし、これだと一人分足りなくなる。どうする?」
チェルシー「あたしは別に脱走なんて馬鹿な真似をして終身刑を射殺に変えるなんて御免だよ、勝手にしな」
ガリル「チェル、お前がいなきゃ話が成り立たないんだ」
チェルシー「はぁ? 何言ってんだ、あんた」
ガリル「女のシャワー室の左から3つ目。ドライバーを隠してある」
ヴルネス「よく女のシャワー室に細工なんてしたもんだ」
ディデル「ガリルの競馬予想を見てればわかる、監獄通貨の持ちようがこいつだけおかしいんだ。買収工作、違うかい?」
ヴルネス「いくら払ったんだ? ガリル」
ガリル「3000ゼリ、なに。ここを出ればすべて紙切れだ」
ヴルネス「さ、3000ゼリ!?」
ディデル「声が大きいよヴルネス、しかし3000ゼリ…ドルに還元しても市販の酒100本は買えるよ…凄いね」
チェルシー「そうかい…。協力してやってもいい、だけど…万一人を切り捨てるような事態が起こったらあたしが最後。3人目はあんたらの誰かだ、いいね?」
ガリル「…あぁ、それで協力してくれるんなら構わん。二人はどうする」
ヴルネス「そうだな、確かにここで死ぬまで暮らすくらいなら賭けに出て死んじまう方がよっぽど良い」
ディデル「俺に関しては成功すれば死ななくて済むんだ、いいよ」
ガリル「っは、決まりだな。決行は明日の朝だ、説明する。ヴルネス、お前は…」
(朝)
チェルシー「っ…ふぁぁっ…今何時だ…4時半……! ガリル! ガリル、起きな!」
ガリル「っ…朝か……ヴルネス、ディデル」
ディデル「俺達はもう起きてるよ」
ヴルネス「あぁ。あとはイラの野郎が朝礼に駆り出しに来るのを待つだけだ」
チェルシー「あんたがやらかしたら成功しないんだ、わかってるね?」
ガリル「…あぁ、任せろ。イラの野郎は俺が殺す」
(少しの時間が経ち)
ディデル「もう5時だ、変だね」
ヴルネス「あぁ、あいつは5分前には必ず来る」
チェルシー「……あんたら…気づかないかい…? あたし達……今信じられない事態に置かれているのかもしれないよ」
ガリル「…あぁ?」
チェルシー「あたし達以外の囚人はどこ行ったんだ…?」
ヴルネス「! …本当だ…メイソンやカール達…いや…」
ディデル「…監守も…いない…?」
ガリル「はっ…はははははははっ! 都合いいじゃねぇか……」(ピストルを抜き)
チェルシー「な、なんだい? 何やってる!」
(ガギュンと一発鍵を撃つと)
ガリル「…イラから鍵を取るなんて真似しなくていいじゃねぇか! さっさと出ようぜ!」
ヴルネス「あ、あぁ…!」
ディデル「そうだね、誰もいないならむしろ好都合だ」
ガリル「チェル、隅に下がれ」
チェルシー「あぁ、頼むよ」
ディデル「…さて。これで俺達4人なわけだ、これなら堂々と出てもいいんじゃないの?」
ヴルネス「おいおい、ディデル。その眼鏡変えたらどうだ? 1匹いるだろうがよ」
(犬(?)のような手足が5本ある化け物が視界に)
チェルシー「まさか映画の主人公にでもなったなんて言うんじゃないだろうね?」
ガリル「…こんなんでビビるガリル様じゃねぇ、死ねッ!!」
(犬は起き上がると傷口から血を吹きながらこちらへ走り出し)
ディデル「大量殺人鬼ガリル様が、犬一匹殺せないとはね。情けない話だよ」
ヴルネス「俺がまだガリルぐらいの頃に見たゾンビ映画にでてきた犬みてぇだな? ずぁっ!!」
(走ってきた犬の腹を蹴破り)
チェルシー「強姦ってぐらいだから女相手に強いのかと思ったらそうでもないんだね?」
ヴルネス「酒に酔っちまうとコロッと変わるものでなぁ、普段は軍人だった。今じゃどうでもいい過去だがな」
ディデル「おかしいね、この島で飼われていた動物は人しかいないはずだよ、ヒヒッ」
ガリル「この島にまともな奴はいねぇ事ぐらい知ってるだろうがチェル。てめぇも常識人でいるつもりなら犬の目ん玉に火をつきつけるなんて真似はやめときな」
チェルシー「あたしはまともなんて言葉を使った覚えは無いよ、ディデルのほうがよっぽどネジが外れてるじゃないか」
ヴルネス「人が居ないなら居ないで構わん、だがどうする。このまま出るにしてもこの腕輪があるかぎり、俺達の居る中央棟から西棟へも東棟へも行けん」
ガリル「チョッパーって言ったな? 腕輪をしてるものがあそこを通ると頭と足を斬り飛ばされる」
ディデル「足はともかく頭は困るよねぇ」
チェルシー「ここから出るなんて想像もしていなかったからね、ここの構造には詳しくないよ。にしても、話を聞いてる限り。えらくぶっ飛んだ監獄島なんだね?」
ヴルネス「犯罪中の犯罪を犯した人間が来るのがここだ」
ディデル「ヴルネスの場合女犯したんだよね、フフフッ」
ガリル「話してる暇はなさそうだ、来てるぞ」
(先ほどの犬が4頭ほど西棟から走ってきて)
ヴルネス「チェルシー、お前も武器が無ければ不安だろう? ……ぬぉぁっ!」
チェルシー「鉄パイプ…あんたのその力、もっと別の事に活かせないのかい?」
ディデル「あのチョッパーを受けたんだ、頭を飛ばされてもなおのこと走ってるよ」
ガリル「クソがッ! 死ねッ…ヴルネス?」
ヴルネス「おそらくあいつらの弱点は腹についてる気持ちの悪い目ん玉だ。あいつを思いっきりぶち抜けばいい。変なタイミングで銃を撃つな」
ガリル「そうかよ…行くぞッ」
チェルシー「い、行くってどこにだい!」
ガリル「地下の図書室だ!」
ディデル「行ってどうする?」
ガリル「行く場所がそこしかねぇだろうが! ふんっ!」
イラ 『輪廻カラハ逃レラレン…!!』
ガリル「…何だ…何の声だ…!」
チェルシー「ボサっとしてんじゃないよッ!!」
(図書室)
ディデル「…まさか本当に誰もいないなんてね。脱出もいいけど、居なくなった監守や囚人はどこ行ったんだろう?」
ガリル「んなことが重要だってのか?」
チェルシー「重要かどうかで言えば重要じゃない、だが、知りたいかどうかで言えば知りたいね」
ヴルネス「確かにそれは気になる。だが、今気にしなくちゃ行けないのはこれからどうするかだ」
ガリル「一体何が起こってるんだ…?」
ヴルネス「それこそ、この図書室になにか資料があったりするんじゃないの?」
チェルシー「ギリシャ神話…インド神話…エジプト神話…頭が痛くなる本ばかりさ」
ヴルネス「! ディデル! 後ろだっ!」
(両目を失った囚人服を着たボロボロの男が壁から頭を突き出して)
ディデル「うぁぁぁっ!? でぁ!!!」
チェルシー「…今確実に首の骨をやった音がしたよ…なのにどうして動き回ってる!?」
ガリル「入って来たか! 腹だ、チェル!」
チェルシー「こいつを…くれてやる…よっ!! はぁっ…はぁっ…」
ヴルネス「…さっきゾンビ映画と話したが…こいつらはゾンビではない。俺たちの知るゾンビと一緒なら頭部を撃つなり折るなりすれば死ぬはずだ」
ディデル「どうする…? このままだとまたあいつみたいなのが来るかもしれないよ」
チェルシー「ガリル! 聞いてるのかい?」
ガリル「…これは…?」(オレンジのカードを手に取り)
ヴルネス「…カードキーか何かか? 何か書いてるぞ」
ガリル「エル、エー。…ラー? わからん、カードキーかどうかはさておき…この本…エジプト神話に挟んであった」
ヴルネス「他の本を調べてみるか?」
チェルシー「時間があるならそうすればいいじゃないか、だけど…今は無いよ」
ディデル「ガリル!」
ガリル「さっきの破られた穴か! 引き返すぞ!」
ヴルネス「このまま馬鹿正直に戻ってもチョッパーではねられて死ぬだけだ!」
ガリル「あいつらに襲われても死ぬだろうが! 俺にはわかる! あいつらはヤベぇ!!!」
チェルシー「どの道死ぬなら少しでも長く生きる方を選ぶのが当たり前だよ、さぁっ!」
ディデル「よいしょっと!」
ヴルネス「ディデル! マッチなんてどうするつもりだ!」
ディデル「今ここで放火しちゃえば多少は余裕もてるでしょ?」
チェルシー「調べきってない大事な何かが隠れてたらあんた責任取れるのかい?」
ガリル「お前が言ったとおりだチェル! 死ぬなら今死なないための判断に尽くすだけだ!」
チェルシー「もしこれで死んだら来世であんたのケツに煙草突っ込んでやるからね!」
イラ『何処ヘ行コウト同ジダ!!』
ガリル「…!?」
(1階中央棟)
ヴルネス「戻ってきたはいい、どうするんだッ!」
チェルシー「中央棟には調べる何かなんてないだろう! どうにかするにしてもガリルが見つけたオレンジのカードだけさ!」
ディデル「どうする!? 西か東、迷ってる暇は無い!」
ガリル「うるせぇぇぇっ! 俺にどうしろってんだ! どっちにいってもチョッパーが構えてるってんだ……クソッ!」
ヴルネス「来たか…っ! ぬうんっ! ずぁっ! っく! 持たんぞガリル!」
ディデル「ガリル!」
チェルシー「あんたら気持ち悪いんだよっ、死になッ!!」
ガリル「ディデル、お前がなんとかしやがれッ! 俺達で時間を稼ぐ! 考えろッ!!!」
ディデル「ふ、ふざけるなよっ! カードを押し付けられたって俺にわかるわけが…!! ……東だ…東棟だ!」
ヴルネス「間違いないのか!!」
チェルシー「間違ってても間違って無くてもそれで生き延びられるかもしれないならそうするだけだよ! 何回言わせるんだい!」
ガリル「信じるぞディデル! 走れッ!!」
ディデル「はっ…はっ………はっ……これが…キーを通す機械……頼む……!!」
(赤かったランプがピッと青色に変わり)
ガリル「これでいいんだなぁ!? 急に動きだしたりしたら許さねぇぞ!」
ヴルネス「つべこべ言うなッ! 行けッ!」
イラ『マダワカラナイノカ?』
ガリル「うるせぇ…うるせぇぇぇっ!」
(資料室)
チェルシー「さっと入っちまったのが資料室かい。ディデル、あんたの手柄だ。しかしどうして東だと思ったんだい?」
ディデル「…俺もびっくりしたよ。まさか合ってるなんてねぇ。エジプト神話に挟まれた「La」と書かれたカード…これはエジプトの神、ラーの事だと思ったんだよねぇ。ラーと言えば太陽神、太陽は東から顔を出す、顔を出す…つまり東から行け。と勝手に俺が解釈しただけさぁ? 別に頭がとんでも脚が飛んでも正直どっちでもよかったけどねぇ」
ヴルネス「勘であったとしても俺達が助かったことに変わりはない。見事だ」
ガリル「……ディデル、それは?」
ディデル「ここの監獄島の地図みたいだね。ほとんどかすれててわからないけど」
チェルシー「…なんだいこれ…信じられないくらい広いじゃないか…」
ヴルネス「東棟の1階にあるのはここの資料室と食堂だが…」
ガリル「…おかしくねぇか? この地図には資料室がねぇ」
チェルシー「そういえばこの監獄島は80年前に改装されたとか聞いたねぇ。それより前の地図ってことならありえるんじゃないのかい?」
ディデル「資料室のデスクに乗っているような地図がそんなに古いものだとは考えにくいけどね」
ヴルネス「今重要なのは次どうするかだ、地図。消えた囚人。気になることだらけだが、考えるたびに止まっていてはキリがないぞ」
ガリル「ヴルネスの言う通りだな。食堂に向かうぞ」
イラ『聞こえないフリか…?』
ガリル「っ!!」
チェルシー「…さっきからあんた、調子が変だよ」
ガリル「…さっきから声が聞こえるだろ……あれがうっとうしいんだ」
ヴルネス「声? 俺には聞こえんぞ」
ディデル「気が参っちゃってるだけじゃないの? ほら、行こう」
(食堂)
チェルシー「お腹減らないかい?」
ガリル「減ってるに決まってるだろ」
ヴルネス「奴らの気配も無い。腹ごしらえをして行こう」
ガリル「……何を読んでるんだ、ディデル」
ディデル「刺さってた新聞だよ…変だね」
ヴルネス「何がだ? どうした」
ディデル「この新聞、2013年に発刊されたみたいだよ」
チェルシー「なにぼけたこと言ってんだい?」
ガリル「見せてみろ……。!! 何だ…これは」
ヴルネス「ガリル?」
ガリル「…あの事件から50年……監獄島、デルデリアから脱走した4人の囚人…だと?」
チェルシー「ガリルまでなに言ってんだい…? いくらおかしな状況だからってあんたらまでおかしくなる必要は無いんだよ?」
ヴルネス「チェルシー、こいつらの言ってる記事はこれだ……脱走した4人の囚人。ガリル=サルディ…チェルシー=デリンズ…ヴルネス=ダネール…ディデル=ネイジー…俺達の名前まで…」
チェルシー「そもそも今が何年かを忘れたんじゃないだろうね!? 1963年だよ、気は確かかい! 50年後の新聞? ばかばかしいよ」
ヴルネス「落ち着け。騒いだところで何も生まん」
ディデル「正直これが50年後の新聞かどうかなんてどうでもいいんだよ」
ガリル「どういう意味だ」
ディデル「問題は記事の内容さ」
ヴルネス「脱走した4人の囚人…俺達の事だな、確かに理解ができん…ただ、問題とは?」
ディデル「仮に発刊ミスで50年後になってたとしよう。だけどね、それだとおかしいんだ。そもそも僕たちが目覚めたタイミングで、監守も他の囚人も居なかった。じゃあ誰が僕たちが脱走したと広報したんだ?」
チェルシー「確かにそれはそうだね…あたし達が脱走計画を知ったのは昨日だ。仮に昨日から脱走についての記事を書いていたとして、実行したのはついさっきだ」
ディデル「もう一つ。何より僕たちより先に居なくなった囚人たちが脱走として取り上げられなければおかしいんだ」
ガリル「……なるほどな、だけどよ。てめぇの考えは確かにスジが通ってるしわかりやすい、だがな。だったらなんだ?」
ディデル「やれやれ、殺人鬼は脳まで鬼なのか?」
ガリル「あ゛ぁ!? 今すぐてめぇを撃ち抜いてもいいんだぞッ!!」
ヴルネス「やめろガリル!」
ガリル「チッ……」
ディデル「…はぁ。僕はつまり何が言いたいかって、この新聞が本物である可能性を考えるべきだと言いたいんだよ」
チェルシー「結局そこに行きつくんじゃ意味ないじゃないか」
ディデル「意味は無い。だけど、問題はいくつも浮上する」
ヴルネス「問題?」
ディデル「そう、僕達が認識している通り確かに…今は1963年のはずだ。だけど、新聞の存在をもし認めるとしたら…僕たちは50年もの間何をしていたのか? 今こうしている僕たちはなんなのか?」
ヴルネス「ディデル、お前の考えはある程度的を射ている。だが、どうしても50年後の新聞。そいつが理解できない」
ガリル「ヴルネスの言ったとおりだ、俺達は映画の主人公でも何でもねぇ。人間だ! てめぇのその妄想に付き合ってられねぇんだよ」
チェルシー「…あたしはディデルの話が気になるね」
ガリル「チェル! てめぇ! さっきまでは信用できねぇってぬかしてたところだろうが!」
チェルシー「さっきから追っかけてくるあいつらは何なんだい! どう考えてもこの星の生き物じゃないよ! 目玉のない囚人に犬、首を飛ばされても走り回って……こんな意味の分からない状況にさらされてるんだ、未来の新聞があってもあたしは驚かないね!」
ディデル「騒ぎ過ぎだ…」
ヴルネス「どうするんだ、また来たぞ…ッ! 30はいる…」
ガリル「死ねッ! 死ねッ! クソッ、弾が足りねぇぞ!」
チェルシー「ハンドガン一本でどうにかなるわけないじゃないか…! どうするんだい!」
ディデル「地下だ! 地下に武器庫があるはずだ!」
ガリル「生憎だなぁ、その地下からあいつらは湧いてきてんだぞ!!」
ヴルネス「武器庫があると分かった以上無理やり突っ切るしかない! ぬぉぉぉぉぁぁぁっ!」
ディデル「ヒヒヒッ…楽しくなってきたね」
チェルシー「しつっ…こいねっ! 死になっ! ふんっ!!!」
ガリル「クソッ! 鍵がかかってやがる! どうすんだ!」
チェルシー「モタくさしてんじゃないよ! そこまで来てるんだ!」
ディデル「あははははははははははっ血の匂いがするっ僕もやる気出てきたよおおおおおおお!!」
ヴルネス「どけっ! 簡単なカギだ! 撃てばいい…!! 開いた!」
ガリル「武器! 武器…! なんだこりゃぁっ! 宝の山だぜ…うっほぉぉぁぁ! なんでもいい、殺せっ!!」
ディデル「ふひっ! ふひっ! ぷっ…ぶはははははははっ! 血! 血ぃぃっ!」
ヴルネス「死ぬほど弾薬はある! とにかく凌げ!!!」
チェルシー「死ぬほどって、死んじゃダメなんだよっ! ディデル、壊れちゃったのかい…!?」
ガリル「死ねカス共!! 銃を持たせちゃ勝ち目ねぇぞォ!!」
ディデル「はぁっ…はぁっ……何なんだろうね…あいつら…」
ガリル「くっそ……一発貰っちまった…肉削がれるとはな」
ディデル「大丈夫?」
ヴルネス「…さっきとはまるで雰囲気が違うな、ディデル?」
ディデル「そう? こんなもんだけどね」
ガリル「これくらいの傷…なんて事ねぇ…」
チェルシー「いつまで続くんだい、これは」
ガリル「あぁ?」
チェルシー「話の途中だったろう? これからどうするんだ、凌いで凌いで話を先延ばしにしてるだけで何も解決してないじゃないか?」
ヴルネス「ここから脱出することが解決になるとは考えられないのか?」
チェルシー「ヴルネスの言ってることもわかるさ。脱出することで解決するならそりゃあいい、でもね。ここは監獄島って言われている以上、島なんだ。仮に施設から出ても船があるかなんてわからないよ」
ガリル「なら一生ここで逃げ回ってろ、そう言いたいのか?」
チェルシー「あんたねぇ、いい加減その寝起きのナニみたいな硬い頭やめた方がいいよ」
ガリル「てめぇ、馬鹿にしてんのか?」
ディデル「脱出することで解決できそうにないからほかの解決策を探すって話だよねぇ?」
ヴルネス「何をどう解決するんだ? わからないことが多すぎる! 新聞、消えた囚人。襲ってくるあいつら…悪夢だ……」
ガリル「ヴルネスの言う通りだ、お前らが言う解決って何だ?」
チェルシー「…それはあたしにもわからないよ。なんなら、死ぬかい?」
ディデル「よしなよ、チェルシー」
チェルシー「あんたらも気づき始めてるんじゃないのかい?」
ガリル「気づく…? 何をだ」
チェルシー「いい加減にしな……ぇ……っ」
(ディデルに撃たれて)
ディデル「よせって言ったろ?」
ヴルネス「ディデル!? 貴様!」
ガリル「どういうつもりだ…おい!」
ディデル「死ぬかいって言ったから撃ったんだけど…あれ…? おかしなことしたかな?」
ガリル「いい加減にしろッ!! てめぇも死にたいのか! あぁ!? なんなら今すぐその頭ぶち抜くぞ!」
ヴルネス「やめろガリル! おいディデル、自分がしたことをわかっているのか!」
ディデル「君達さぁ、ものすごく偉そうだよねぇ」
ガリル「あ゛ぁっ!! 殺すぞ! 殺してやる! 離せヴルネス!」
ディデル「まぐれとはいえ東棟に来れたのは僕のおかげ、武器庫に来れたのも僕のおかげ。助けられてる立場のくせにさぁ。新聞の事であったり、なんでもかんでも意見の否定しかしない、これだから嫌なんだよねぇ。脳まで肉でできてる君達みたいなの、チェルシーの方がまだ利口だったよ…うぐぉぁっ!?」
(ディデルを殴り飛ばすヴルネス)
ヴルネス「死ぬかと言われたから撃ったといったな。つまりお前は死ぬに賛同したわけだ、俺達は既に罪を犯した人間、躊躇しない。貴様の言動はこれからの俺達に害でしか………っ?」
(ヴルネス、胸を撃たれる)
ディデル「嫌いだって…言ってるだろ……? けひひっ…が……が……あぎっ……」
(ディデル、ヴルネスに首の骨折られる)
ガリル「…何やってんだ…こいつら………馬鹿じゃねぇのか…!? はっ…こいつらが死のうと知ったことじゃねぇ……むしろ俺一人になって好都合だ…なんとしてでも脱出してやる…!」
イラ『永遠ニコノ地獄カラ抜ケルコトハデキナイ!!』
ガリル「誰だ…誰なんだお前はッ!!!! はっ…しまった……クソッ…来やがった…!!! 死ぬわけには…こんなところで俺は死ぬわけにはいかねぇんだアアアアアアアアッ!!!!!」
(追手に囲まれ喰い殺されて)
(そして繰り返される出来事)
ガリル「遅ぇ…」
ヴルネス「イラが起こしに来ないと話は進まないぞ」
ディデル「何か言いたそうだね、チェルシー?」
チェルシー「…あたし達以外の囚人はどこに行ったんだい…?」
ディデル「大量殺人鬼と言われた人が犬ッコロ一匹まともに殺せないなんてねぇ」
ヴルネス「脱走した4人の囚人…まさか俺達のことか?」
チェルシー「未来の新聞…? 冗談じゃないよ」
ガリル「武器さえあればどうにでもなるぜ…ひゃっほぉぉぉぉっ!」
チェルシー「あんたらも気づき始めてるんだろ?」
ディデル「君達のそういう態度気にくわないんだよねぇ」
ヴルネス「貴様も死ねディデル!」
ガリル「俺はこんなところでくたばるわけにはいかねぇんだァァァァァッ!!!!」
イラ『輪廻する運命…オ前タチハ永遠二償イ続けルのだ…!!』
ケイサツ「警部、整理していたらこんな事件の資料が」
ケイブ「デルデリア島脱獄事件か。もう50年も前か」
ケイサツ「なんですか? それは」
ケイブ「1963年、7月2日。300人を収容し、脱獄不可能と言われたデルデリア島。そこから突如4人の囚人が姿を消したんだ。本気で捜査を行ったが施設から出た形跡はなく、港の船も動かされていなかった。脱獄というよりは本当に姿を消した、と言えばいいか? はっはっは、そんな事件だ」
ケイサツ「変わった事件もあるもんですねぇ」
ケイブ「一番捜査に有力だったイラ監守も使い物にならなかったそうでな。確かこのページに…取り調べの内容が…これだ」
イラ「脱獄の手助け? そんなのするわけありませんよ、繰り返しても同じ事ですよ。出られないんですから」
終