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大罪庭園-taizai teien-  作者: A-est
第二章「嫉妬のダシング・ウィンド」
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第三十一話「深淵の少女」

私は深い深い闇の中に沈んでいた。

光なんて一切見ぬ深淵。

何度藻掻いても手を大きく伸ばしても鉛のように重い水を掻き上げることはできなかった。少しずつほんの少しずつ浮遊してるのがわかる。もしこのまま何もしなければ一年もあれば、この意識の海底からも出られるだろう。


まさか、自分の駒であるフェアツェルトがこのような手段に出るとは思わなかった。少なくとも死んでいないようだし、眠らせたのだろう。記憶が何とも曖昧だが、時期にそれも思い出せる。ここでは私の能力も限定されるみたいだしね。


ただ1つ、フェアツェルトには誤算があった。確かに私の能力は必ず相手に対して触れなければならない。しかし、その対象は自分でも可能なのだ。よって、私は私に対して解毒プログラムを刻み込んだ。解毒というのはあくまで思ったままに付けただけでその対象は自身に掛けられたあらゆる状態異常をも解析し解除する。フェアツェルトは無駄に強く掛け過ぎたせいで少し時間が掛かってるみたいだけど、この調子なら一年も必要はない。もう目が覚める。


レケが目を覚ましたのはウィンド達が島へと旅だってから僅か1週間後のことだった。1年は目を覚まさないと伝えられていたのもあり、なかなか部屋に人が来なかったが、点滴を変えに来た回復術市の腕を突然掴む。当然、驚かれすぐに他の人達を呼ぼうとするが、即座に能力を発動する。その回復術士は実はレケの味方で今はこの病院にて潜伏をしていたのだ。そんな彼女へ与えた任務はこの病院内に居る全ての人間をレケと接触させるというものだ。だから、彼女はそれを忠実に守る為に、寝た振りをしているレケの前にタイミングを計らって同僚を二人ほど連れてくる。一人が近づいた瞬間にその手を掴み能力を行使。もう一人はレケの味方の回復術士ニ人が拘束し、レケは容易に能力を発動する。その現場を偶然目撃した回復術師を捕らえるために三人が迅速に拘束魔法を使用し部屋へと招き入れる。だが、流石は回復術師。催眠か洗脳の類だという正解に辿り着き遅延魔法による魔術破棄範囲魔法を放つ。しかし、最初(・・)からレケの下僕である三人にそんなものが効くわけがなく、回復術師は四人目の下僕であったことを思い出す。


そうして、僅か数日のうちにその病院に居る回復術士は全員レケの下僕であったことを思い出したのだ。レケとしても、記憶喪失であった彼等彼女等を助けられたことは嬉しい。だから、今度は患者やその家族にも思い出して貰わなければならない。だが、その前に目が覚めたのだからマーリン達に会いに行かなければならない。きっと、心配してる筈だ。


それに道中では沢山の人だかりが出来ている。マーリン宅かギルドまで帰る最中で100人くらいは思い出してくれる筈だ。実に嬉しい限りだ。こんなにも人(独)の為、世(余)の為になっているのだから。


マーリン宅に着いた。正確には私の家でもあるのだが、玄関から中に入っていくと、そこに居たマーリンとセリエレが驚いてた。先ずはマーリンに抱きつく、セリエレも手招きして一緒に抱きつき、能力を発動する。すると、突然、マーリンったら私を突き飛ばしてきた。


「今、何をした?レケ?……いや、お前は誰だ?」


何を言ってるのだろうか?私は私だ。それ以上でもそれ以下でもなければ、過不足ないわけでもない。哲学的な話となるかもしれないが、私という存在は彼女、マーリンと出会ったときのまま同じ識別番号だと思われる。それとも記憶が戻ったことにより少しばかり性格に変化が生じていてそれについて指摘してるのだろうか?それならば、率直に言うしかない。


「私、記憶が戻ったの!だから、もし雰囲気が変わってたらこれが本当の私ってことよ。」


「気付かないとでも思ったのか?お前の魔力は明らかに悪魔と同じ。確かに人のカタチを取ってるようだが、レケとは遥かに魔力量も質も違う。もう一度問う。お前は誰だ?」


なるほど、確かに魔力を底上げはしてたし、元に戻せばマーリンも流石に私だとわかってくれるだろう。私の能力を私に対して発動する。それによって、元の貧弱な魔力量と薄い魔力質へと変化する。その瞬間を感じ取ったマーリンが即座に対応する。


(セリエレ!私とアーデルの元へ座標移動だ!)


セリエレとマーリンが忽然と消える。

それを見てレケは感心する。


(セリエレは座標移動の一段階上を手にしたのね。ということは、マーリンと契約したみたいね。流石はマーリン。私のセリエレをここまで育ててくれて嬉しいわ。でも…私の能力がマーリンに効かないというのは少し厄介ね。流石は聖杯の魔術師。あらゆる現象の無効化は所持してるようね。)


レケは魔力探知で即座に向かった先を検索する。自分の体に能力発動して、天井をすり抜け屋根へと飛び立つ。そのまま、もう一度自分の体に能力を発動し、屋根から屋根へと超マッハで追いかける。


一方、レケから逃げ切ったマーリン達はギルマスの部屋で業務をこなすアーデルの前に出現した。突然出現したマーリンに対して真っ先にアーデルはギルマスとして対応する。本来ならマーリンにベタベタしたい気持ちも多少はあったかもしれないが、鋭い眼光でマーリンを見る。見られたマーリンは即座に伝えるべきことを話す。


「レケの格好をした魔神クラスの悪魔を発見!即座にギルマスの集結を!」


「わかりました。即座に伝令を言い渡します。」


マーリンの魔力はアーデルも知っている。故にそのマーリンが何のアポも取らず突然押し掛けてきたというその事実だけで信じるに値する。即座に部下を部屋の外に出して、皆に伝えに行かせる。だが、何故か部下は直ぐ様戻ってきた。


「どうしたの!?」


「いえ、大したことではないんですけど、私のご主人様がアーデルさんに会いたいそうでして。」


その者が入ってくる前からマーリンとアーデルは嫌な予感が体中からしていたのだが、その部下の言葉とその後ろから部屋の中に入ってきたレケの存在により即座に確信すると同時に攻撃する。アーデルもその魔力の質から魔神クラスと判断したらしい。元々のレケの魔力質を例えるなら大地の魔力だ。だが、今のレケは闇の魔力というわけだ。


「Schutzrittar・Schwert開放。光となりて敵を討つ!」


レケは懐にあった愛銃を取り出し、闇の魔弾をアーデルに撃つ。即座にその魔弾を切り、レケへと詰め寄る。詰め寄るまで僅か0.1秒未満でレケの知覚を圧倒的に超えていて、触れることすら叶わない。そこから0.1秒経つまでの間にレケの体を刻む。だが、それと同時に光化を解かれる。光の速さを失ったアーデルは呆然としている。


「Schutzrittar・Schwert開放!Schutzrittar・Schwert開放!Schutzrittar・Schwert開放!」


何度やっても自分の愛剣発動しない。それどころかレケの体は空中に浮いたまま時間が巻き戻るかのように服に傷すらない状態へと戻った。泣き崩れそうなアーデルに対して手を伸ばしつつ一言。


「その剣、ごめんね?」


触れようとした瞬間、その間をセリエレが割り込みレケの触れる対象を変更させる。先程、効かなかったことは既に検証済。そして、レケの能力が不明なまま、唯一わかったのはあまりにも強大すぎるという点だけ。よって、マーリンとアーデルを対象に座標操作を行い、スカーラの元へと行く。


「あ~あ、また逃げちゃったね。ナルヘーちゃん。」


「そうですね。アーデル様はどうしてご主人様に攻撃しようとしたか全く持って理解不能です。」


「よねー。ホント、不思議ね。でもまぁ、お疲れ気味みたいだし、少し休ませてあげるわ。元気になったアーデルが好き。だから、少しだけよ。」


「では、他のメンバーも呼んできますね。」


「お願いね♪」


そう言ってナルヘーは他のメンバーを呼びに行った。その後、北のギルドメンバー達はレケが主であったことを思い出して、代理のマスターとして業務に励むことにした。アーデルが居ない間に少しでも楽にさせてあげる為に仕事頑張ろうという計らいだ。


       ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


西のギルドへと入ってきたアーデル達を目撃し、周りがどよめく。しかも、横の執事に支えられながら入ってきたとなるのその異常事態がわかり、即座にスカーラが登場した。いつものおふざけ無しでだ。


「こんなところに来るなんて珍しいねアーデル。外傷はないようだけど、どうしたの?」


少なくともいつのような覇気がないことから、傷つけられたとしたら内面で、精神系の魔法でも食らったと予想するが、状況の説明をされて、スカーラはギルマスとして即座に行動した。


「警戒レベルは最大で、全ギルドに魔神襲来、洗脳や催眠を使うも伝えろ!それと、一般人含めて仲間である僕らの誰とも接触をするな。このギルドはたった今廃棄して、痕跡は一切残すなよ。行け!!」


流石は暗殺軍団。音もなく忽然と全員が消えた。これにより、街全体で今回の事態が伝えられるだろう。少しでも早くギルマスに伝わると良いのだが…。


「アーデルはどうすんの?」


「私は……。」


顔を伏せてるアーデルに対して頭を掻きながら柄もなく珍しくも叱責を飛ばす。


「アーデル、お前はギルマスだろ?なのに何故顔を伏せてる?下を向いてる?能力が1つ使えなくなったからと言ってお前はその程度の実力なのか?………僕はギルマスとして、皆を助けに行くよ。」


そう言って、音もなく消えた。


すぐにでもレケが迫ってるかもしれない。アーデルを連れて、グランニャーノの元へと座標操作を行う。グランニャーノが暗殺者によって説明を受けている場面に遭遇した。マーリン達の出現により、グランニャーノも本格的に動き始める。この調子ならグランダも今頃説明を受けてる頃だろうが、念の為セリエレに座標操作の指示をするが、移動しない。


「どうしたセリエレ?」


「何故かはわかりませんが、グランダのイメージが沸かないのです。それどころか、座標の確認時に阻害を受けました。」


最強の男は名ばかりではないらしい。まさか魔術の対象にすら出来ないとはあまりにも強過ぎる。最悪、暗殺者も見つけられない可能性すらある。実際に、あれからグランダの魔力が街から見つからないのだ。完全に魔力を遮断してるらしい。だが、これは好機でもある。レケの体を模したあの魔神が如何なる能力を所持してるかはわからないが、少なくとも無効化できることはこの身で立証済。ならば、グランダも恐らくは効かないと思われる。


とすれば、次の手は私とセリエレの手で魔神を討伐する!

ウィンドとアセトが修行中に、レケがまさか目覚めて魔神と勘違いされ?マーリン含めて街のギルマス全員?を敵に回すという事態へと発展。

レケの能力って何かわかりますか?


次回もお楽しみに!

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