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大罪庭園-taizai teien-  作者: A-est
第二章「嫉妬のダシング・ウィンド」
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第二十ニ話「四竜島討伐合宿」

「どういうことだ!」


マーリン達が休日の時を狙って、家へと押しかけてきたのはダシング・ウィンド。レケの古い仲だ。いつからなのか、夜をお供する仲になってた程度の関係ではあるが、彼氏では無いと思う。彼自身、他にも居るだろうしさ。


そんな彼は只の女ったらしではなく、レケの為に命さえ掛けたことがあり、そこそこ頼りにはなる。実力という意味では最近だとスカーラの方に役を取られてるせいか、仲間として悪魔狩りしたのはいったいいつのことだっただろう?


だからこそ、彼がこうして怒っているのも仕方ないことではあるのだが、何分こちらも大した情報はない。


「だから、私達も着いた頃には遅かったんだよ。」


マーリンが宥めつつ、状況の説明をするが納得が出来ないらしくこうして抗議されてるわけだ。所詮は彼もまだ子供だったらしい。身体年齢的な問題ではなく、脳年齢的な問題でだ。とはいえ、そこまで子供ってわけでもなく顔見ればわかる。


「クソッ!」


思いっきりテーブルに両拳を叩きつける。

苛立ちを抑えようとしてるのがよくわかる。レケが座っていた空きの椅子に足を組んで座る。セリエレが差し出したお茶を溢しそうな勢いで持ち一気に飲む。荒げてた息も少しずつ落ち着き、目を瞑る。少しずつ呼吸が整ってきたのを確認し、マーリンが声をかける。


「今日はもう帰ったほうがいい。それとも、レケの部屋でも見てみます?」


少し沈黙が流れたあと、目を開くと答えた。


「レケの部屋を見させてくれ。」


先程の燃え盛るような怒りから反転。静かに席を立つ。

そして、直ぐそこにあるレケの部屋の扉を開けた。その部屋を見て、どんな心情となったのかわからないが、一人にしてくれとその一言で察した。


一時間ぐらい感傷に浸ってるのかと思いきや、10分もせぬうちに部屋から出てきた。帰り際に謝罪をして帰ったところを見るに、もう講義をしてくることは無さそうだ。


実はあれから、レケの部屋はイシスもといアセトが使用している。もしかしたら、微かな臭いで気づかれなかったか少し心配だったが問題ないようだ。今の彼はそれだけで何かを仕出かしそうなほどピリピリ苛立ってたからだ。


今日は疲れた。だからこそ、何か依頼を受けるとしよう。寧ろ、疲れたのは精神的にだ。魔力奮発してストレス発散するしかないな。


       ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


全ギルドに通達がされたのは魔王討伐から四帝会議2回目を終えた日だ。Bランク以下は基本全員参加のイベントで、ポイント制のランキング形式。とある巨大無人島にて、悪魔や竜などが住み着き、人の移住は不可として長年放置されてきたのだが、この際に片付けてしまおうという魂胆だ。竜も子供だという話だし、ソロで挑もうとしない限りは死ぬこともない。


その総数8000人。その8000人の内Bランクは1000人くらいだろう。全員で竜に突っ込めば勝つこともできるが、残り7000人の生存確率は1%も満たなくなる。Cランクが統制して、生き残ることを優先にしても全員を助けられるはずが無い。皆が皆、助け合い精神など持ってるわけがない。目先の金に目が眩み仲間を売る輩も必ず居る。他にも大勢の多種多様な人々が居るのだ。


だから、これはある意味、1つの賭けである。


これだけは言える。彼等の中に参加しないという臆病風に吹かれたものはおらず、怠惰を貪るものもいない。理由は違えど全員参加が義務かのように集まった。


ちなみに、Aランクのマーリンとセリエレはお留守番して街の守護に当たっている。に対して、アセトは既にウィンドと組むことが決定されており、マーリン達も快く送り出した。別の意味で心配な部分はあれど、レケが居るのだから問題なかろう。


       ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


8000という武装軍団が別に整列してるわけでもなく、そのチーム毎のペースで目的地へと向かってる。最前列には今回の案内役のマスターランク回復術師が居て、あちこちにAランクの戦闘系が配置されることにより、安全性を確保している。基本的に一人の冒険者が多い為にもしかしたら悪魔の襲来時に助け合わない可能性も考慮してのことだが、流石にこの人数だったらよっぽどのことがない限りは誰も失うことはないだろう。


「にしても、島にこの人数どうやって運ぶのかな?」


アセトに対して素朴な疑問をぶつけてみるが、どうやらこの間の俺の抗議による一件もあり、あまり良い印象は受けてないらしい。さっきから無言だ。元から口数が少なそうな子だとは思ってたけど、ここまで無口だと少し気まずさがある。


いつもの俺ならこのまま他のメンバーを探したりするのだが、彼女と離れるわけにはいかないし、離れずにメンバーが見つかるとも思えないし、とりあえず、周囲の人々に時折声をかける程度だ。今の所良さげな相手は見つかっていない。まぁ、こうして気まずい空気を味わってるのだから居なくて当然とも言えるが、これを見て去った人も居たのでもう半ば諦め状態ではある。


ちなみに、先頭で案内役してるのは誰かとは言わずとも誰でも知ってるエレインちゃんだ。受付嬢として知ってるメンバーが殆どだろうが、彼女の回復に関する知識と技術は世界に並ぶレベルのものだ。美貌と実力により女神とさえ、揶揄されるほどだ。というか、真面目に可愛い。清楚系な見た目はやはり回復系だからこそなのだろうか?


おっ、遠くから悪魔がこっちにやってくる。こんな行列のギルメンに向かうとかなかなか勇気あるな。俺だったら間違いなく見なかったことにして、180度回転するぞ。あぁ、早速攻撃した弓使いの男が射抜いちゃった。しかも、付属効果で焼却までしちゃってる。


そんなやり取りが何回かあって、お昼にはその島へと続く海岸に辿り着いていた。どんどん集まっていく中で、広大な海岸に踏み出すものが居なかった。それもそのはず、そこに居たのはグランニャーノ・アトランニ。ギルドマスターだ。空気的に行きづらい。


今日は空気が不味いな。非常に不味い場面が多過ぎるだろ。


ある程度集まったのを見て、グランニャーノが魔法を発動する。



「……………(《死滅の氷都》発動。)」


その海面が次々に凍りつき、島の方へと道が出来る。

そのあまりの魔力量にこれから修行に向かう者達が唖然としている。そんな中で真っ先に動けるのは、それを比較的見たことがあるBランク達であった。相変わらずチートだわ、などと文句言ったり尊敬の眼差しで見詰めたり、人によって反応は違えど次々渡っていく。その道を渡ろうとするのは当然人だけではない。向こうから早速悪魔がやってくるが、グランニャーノの氷の支柱によって次々薙ぎ払われる。


人が居ることによって支柱が打ち出せなくなってくるとチームで組んでるBランクや単独Aランクが討伐しに行く。大半は魔法。たまに飛び道具。近接系はどうしようもない。この弾幕の中で敵に向かうという自殺行為は遠慮した。


全員が渡り終えたのを確認すると共にグランニャーノは遥か向こうの岸で魔法を解除する。これにより、帰ることはできず、特定の日にちまで迎えが来なくなった。なお、空を飛べるものは仕方なし。まぁ、基本的には居ないとは思うが……おっと、ここに居た。俺の風魔法使えば一発で空など余裕である。


だが、そんなことはAランク達がさせないだろうし、俺も使うのはやめておこう。ここからは四方向にチームが分かれる。山ゾーンと森ゾーンと草原ゾーンと氷ゾーンがある。氷ゾーンなど却下だ。食べ物の見つけやすい森ゾーンが簡単そうだが、竜は四方向に1体ずついるので、難易度的にはそんなに変わらない。周辺の魔物も相当強いものでない限りは生きて行けぬからだ。


「んーと、何処にする?」


「何処でもいい。」


「んじゃ、森にすっか。」


ということで、森に決定。


「はいはーい。森に向かう方はこのままここで待機して下さい!」


Aランクの方も四分割されて、残った中でリーダーを決めたらしく、赤髪の剣士の女性が声を上げる。ちなみに、エレインは氷担当となった。やはり、一番辛そうな環境に回されるのは必然だっただろう。そもそもエレインの得意な魔法は水だ。いざとなれば、戦うことも可能だろう。


結局、その場に残ったのは3000人くらい。皆楽がしたいようだ。残りの5000人はAランクの者達がブーストかけて、全員で走って外周の砂浜を伝って安全面を考慮した上で向かったようだが、体力のない者からしたら早速修行となるな。


「んじゃ、この比較的簡単に見える森を選んだお前らに悲報だ!この森はこの島で最も難易度が高い!だから、楽しんでいけよ!」


ニヤリと笑った。

その言葉に絶望した者達が多数居て、中にはさっき分かれた別の方向に行こうとする者も居たが、Aランクが逃がすはずもない。


「おいおい、話はきちんと聞けよ!どうして、ここに10分近く待たせたと思う?もう最後尾すら見つからねーよ。寧ろ、死にたくなけりゃここでチーム作って死物狂いで頑張れ。当然、解散後に他のゾーンに向かうのはお前らの勝手だが、その場合はギルドはお前らの生存を保証しないからな!」


それを聞き、向かおうとする馬鹿も居なくなり、素直に聞くようにし始めた。中には未だに呆然としてる者もいるが、大半が低ランカー。周りのBランクやCランクが宥めている。


ある程度、マシな顔になったのを確認して、改めてその女性の声を待つ。


「はい。では、改めて自己紹介させていただきますが、私はお前達の生存を第一に任されてるAランクのフレイラス・ハーディです。お前達がこの島で何をしようと知りません。ただ、殺し合うようであればその原因を私達が先に殺すと思っていただければ幸いです。ですので、仲良く皆で助け合い己の研鑽に励みましょう。とはいえ、最高難易度のこのゾーンで絶望をした低ランカーの方々に朗報です。この先に100人が入れる共同住宅があちこちに建っています。余程のことがない限りは結界によって魔物が入ることはないので、隠れたい方はそこで1か月の間怠惰を貪って下さい。私達はその方が楽ではありますからね。ただ、そんな方々はいないと信じてます。な?」


学校の校長先生の話は長くて眠くなるというが、彼女の話も実に長かった。中には寝かけているものがいる。実力に自信があってのことだろうが、その態度につい本音で最後に脅す形で一言多くなったのは彼女の性格からしてまだ持った方だと言えよう。


「それじゃあ、早速行こっか。」


「どこに?」


「そりゃあ、先に風魔法で家は見つけておいたから、風魔法使って誰よりも早く着けば、寝床くらいは確保できるだろ?」


「流石、私達の家系が重宝していたダシング家ね。」


「褒め言葉として受け取っておくよ。」


「ふんっ。」


どうやら機嫌を損ねてしまったらしい。女性の扱いはやはりまだまだ慣れないな。

本当は全体的に見て、修正を重ねて、頑張ろうと思ったんですけど続き書きたかったのでつい………(笑)

ということで、第二章です。

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