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大罪庭園-taizai teien-  作者: A-est
第一章「強欲のフェアツェルト」
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第二話「夢の終わり」

レケ編1-2「セエレ」

「……!!」


「………レケ!!」


視界に差し込む太陽の光と共に現れたのは全身をフードで隠す長身のマーリンだ。

どうやら眠ってしまっていたようだ。珍しく居眠りした私の体を思って、起こさなかったが、時間が来たために起こしたと言ったところか。


「あー、ごめんごめん。」


私はハインツ家の統治するこの街のギルドで悪魔狩りをしている。人には言えない秘密があり、家族とも言えるハインツ家とは縁を切った身だ。故に、一時期一緒に住んでいた者の名を借りてレケ・フェアツェルトとして今を生きている。


一緒に住んでいた友との約束の為にも人と悪魔の共存を目指し、知能がありそうな悪魔と出会ったら交渉を仕掛けて、無理そうなら殺す。そんな血生臭い日々を送っている。本当なら自分の話し相手になって欲しかったりもするので、共存というのは約束だけでなく孤独であった頃の名残でもあるかもしれない。一人という寂寥感は嫌というくらい知った。だからこそ、争う姿を見るのは嫌いなのだ。だが、獣のように考えることを諦めた悪魔は殺すしかない。説得を悪魔一人にしている時間の猶予は人間の自分には残されていないからだ。


ギルドで偶然出会った同じ思想の持ち主である魔術師マーリンとパートナーとして組めたのは幸運と言えよう。本来なら時間の効率を考えてバラバラで行動するのが正しいのだろうが、家の問題と自身の弱さの問題によりパートナーとして組まざるを得なかったわけだ。


昔住んでいた山奥の家は燃やしてしまった。当時大騒ぎになっていたが、死んだことにしてくれた方がこちらとしては良いのだ。元より邪魔者であったのだ。死んでくれた方がハインツ家もさぞ嬉しかろう。だから、マーリンの仮住居にお世話になってるのだが、1つだけ気になってることがある。

家の中ですら脱がないフードの中はどうなってるのだろうか。ハスキーな声からして男なのはほぼ間違いないが、魔法でも掛けているのかどの角度から見てもフードの中は真っ暗なのだ。

とても気になる。


「レケ。行きますよ。」


マーリンに呼ばれ我に返り、今は仕事中だったことを思い出した。昨日から続く聞き込みの調査に疲れて、カフェで休憩中に昼寝をしてしまったのだが、起きたばかりのせいか精神の覚醒までは至ってないようだ。まだ少しぼんやりとする。


頭の回転を早める為にも今の依頼について思い出してみる。もしかすると見逃している情報があるかもしれない。


この辺りで通り魔連続殺人事件が起きた。

最初の事件は真夜中だった。その死体は人間だったとは思えないくらいぐちゃぐちゃだったらしい。後ほど、人の形に戻そうとしたとき血肉は殆どなく、骨が残ったことから悪魔と断定される。だが、真夜中であったことから目撃証言がなく、調子に乗ったと思われる悪魔は、朝方や昼にまで伸ばし見境無く食い散らすようになった。


その悪魔はやり過ぎた。


墓穴を掘るとはまさにこのこと。

目撃者も多数居て、どんな人間へと変装してるのかまで特定済だ。力は中級に追いつきつつあるも派手なことをしたがり墓穴を掘るのは低級悪魔の起こす事件でよくある話。

だからこそ、低級はある意味危険とも言われてる。

自らの欲に純粋に従うその姿は感情の傀儡だ。

中級ならある程度知能がある故に基本はボロを出さない。

ボロを出さないということは起こす事件も少なく、飢えも状況によっては我慢する。

上級以上だとそもそも人間に紛れて暮らす方が少ない。


今回の標的は珈琲屋を営む40代後半の髭面のおじさんだ。本人はまだ気付いてないが、最近珈琲屋に来てくれるお客さんが減ったのも他の人々はその正体を薄々わかっていたからこそだ。


「ここが例の珈琲屋ですか。」


見た感じ古くからありそうな建物だ。

内装は木で出来てるようで、洒落ている。

基本的にはカウンターで珈琲を楽しむようで、店内はカウンターとテーブルが手前と奥に1つずつ。

小さいからこそ知る人ぞ知ると言った雰囲気の店だ。


ギィ


少し傷んだ扉を開け店内に入る。

店長がこちらに気付いたようで、いらっしゃいませと一言。

顔を見て、本人だと確認を一瞬の間で済ます。

レケは懐にあった奇妙な形をした銃を取り出した。


「ギルドの者です。貴方を殺しに来ました。」


スマイルと共に相手の言葉も聞かず発砲。

それに全力で避ける店長。

またもや墓穴を掘った。その身体能力は一般人の枠を明らかに越えている。元々ギルドメンバーだったならまだわかるが、もう既に調べはついているので、彼が戦闘経験が無いのは知っている。

頭の良い悪魔ならば現在変装した者の可能な範囲内で力を抑えただろう。そこが低級と中級の決定的な違いとも言える。

マーリンが後ろで小声で詠唱を完了したのか、魔法陣が手に表示され、指を鳴らす。


《火の支柱-ファイア・パイル-》発動。


その悪魔の地面から火柱が立った。

その火が体中を覆う前に、壁に穴を開けることによって逃げられた。悪魔も咄嗟のことではあったが、力を増していることが功を為したようでギリギリ反応が出来た。それもマーリンの詠唱が聞こえたのも1つの理由ではあった。

レケ達も流石にこんな場面は何度も出くわしたことがあるので、それを慌てて追い掛ける。綺麗に拭かれていたそのテーブルへと足を乗せて、そのまま悪魔の開けた壁の穴から外へ出る。右へと逃げて行ったのを見ていたので、その路地裏へと目線を移す。運が良いことに真っ直ぐ続く路地裏だ。銃を使うレケにとっても、魔法使いのまーりんにとっても非常に狙いやすい。


レケは愛銃を片手で数発撃ちこんだ。

大きさと反動だけならデザートイーグルと変わらないのに、その反動すらも計算に入れた上での発砲だ。実際に頭の中で計算しているわけではなく、経験の上の勘だ。ここをこのタイミングで撃てばここに着くと体が覚えているのだ。


その弾の軌道は確かにその悪魔の片足、片手、頭を狙っていたのだが、その悪魔は俊足飛行型だ。

食らった人間の数が多かったからなのか、報告書の仮定能力値よりも更に強くなっている。所詮は仮定とはいえ、明らかに数値のズレが激しい。もう少しランクの高い専門家が見ていればこれもきっと予測していただろうが、今回は安月給の専門家が担当したのが運の尽きだったようだが、レケ達にとってはそのズレは実力でカバー出来ると踏んだ。


逃げてる途中に後ろから飛んでくる弾丸を避けるなどその悪魔にとっては今となってはあまりにも容易であった。そこでより調子に乗らざるをえなかったのは仕方のないことだ。その程度の脳しか持たないのだから。


だが、レケにとっては避けようが避けまいが関係ない。

悪魔も避けた際に気付いたのだが、その弾丸は普通の弾丸ではなかったからだ。

レケの弾丸は全て術式が組み込まれている。

その術式を解くタイミングは作った本人に任される。


《大地の支柱-ガイア・パイル-》発動。


弾丸から魔術が解かれた瞬間に長さ1mの大地の柱が現れ、レケの視界から位置調節され、計算した後に避けた悪魔に向かって発射される。


幾ら避けるのが得意な悪魔であったとしてこの現象が起きたのは僅か0.125秒のことである。認識したとしても体がそれについていけるかはまた別の話である。弾丸のように小さなものならば最低限の動きのみで避けられてもそれだけ大きな物体を避けるには全くもって足りず、そのまま体の大半をえぐりとった。


レケにとって、こういった救いようのない者への罰はいつだって厳しい。悪魔に限った話ではないが、この世界にはそんな救えない者は沢山存在する。そういった者に生きてもらうと困るのだ。だから、こんなにも共存という道が塞がったままなのだ。共存を望んだものを迫害しようなどと呆れた考え方が湧いてくるのもこういう屑のせいである。

本当に悲しい限りだ。


悪魔の体を貫くその支柱から大量の血が飛散する。木製の壁に沢山の血が飛び散るが、次第に空気へ溶けていった。


倒した後の悪魔は体の崩壊が始まり次第にそこには何も残らない。だから、その悪魔の衣類品などを保存用の袋に入れ、状況を紙に纏めて提出し、数時間待つと報酬が貰えるという方式を取っている。

今回の相手は初級から中級近くまで進化していたことから、最初に提示された額より多めにもらえることだろう。


この世で生きるには金が必要だ。

だから、少しでも多く貰えるなら貰っておかないと損だろう?

最初は共存の為に全てを助けようとした。

でも、マーリンの助けが無ければ死にかけることが度々増えた。そして、悟ったのだ。

共存という大義名分の為ならば、少数の犠牲はやむを得ない。

救えぬものを無理に救おうとする偽善よりは殺した方が得をするのだ。なんせ、善意を騙る為に共存を掲げている訳ではない。この所業を正義だとは思っているが、決して法の前では正しいとは思ってない。寧ろ、今の法律は変えるべきだとも思っている。そんな腐った法を作った王国の関係者もその内殺さなければならないだろう。


マーリンは自らの考えを滅多に明かさない為、本心ではどう思ってるのかは定かではない。この行動も実は心の中では醜いと思ってるかもしれない。だからこそ、この先敵になるかもしれない。


いや、出会った時から敵だったかもしれない。


出会い頭に言われたのは「幼女かわいい!」。

見た目に反した、その台詞に私の中の理想像が崩れた。そんな内面でも同じ思想を持つが故に、こうして家にもお邪魔させてもらってる故に、服を用意するのはマーリンだ。

最初の頃はゴスロリとかゴシック系を攻めてたのだが、最近は男物じゃないのか?と思うような活かした服を用意するようになった。

白いシャツにジャンパーとジーパン。十字のネックレスと片耳に十字のピアス。白い髪は束ねて普通に結んでるだけ。

胸はそこそこあるが、その見た目的に寄ってくる男は基本居ない。


その行動に軽く殺意が芽生える。

ただ、そんな生活も慣れてしまった感じはある。

かれこれ毎日のようにマーリンと過ごしている。

恐らくはこれ以上のパートナーは居まい。孤独からも救ってくれる優しさもあるしね。寝床どころか部屋まで貰えてる優遇も感謝してる。


そんなことを考えながらギルドへ向かっていると広場に一人の女性がいた。周りは不気味にも静けさが漂っている。昼頃なのに誰も居ないのは明らかにおかしい。音も静寂に包まれている。時が停まったと表現してもいいくらいには異質な雰囲気である。

格好から推測するにどこかの貴族だろうか。しかし、あまりにも古い文化の服だ。コスプレとして着る者は居たとしても、社交場で来てくる者は居ないだろう。つまり、この状況では人間かさえ怪しい。


その女性と目が合った。


「あら……そこの貴女。」


背筋がゾッと寒くなり、まるで剣で刺されたかのような錯覚をした。まさにその殺気にも親しい視線がこの心に突き刺さった。


そんな私の姿がその女の目に映ると共に突然、不気味に笑い出した。


「ふふふふははははは、あぁ……懐しい香りがするわ。貴女、もしや何処かでお会いになったのかしら?♪」


楽しそうにくるりと回りつつ私に対して問う。見ててこちらも楽しくなるようなものではなく、吐き気がするような狂気的なものだ。本当なら何も答えずそのままここから立ち去りたいのだが、周囲を見渡す限りそれをさせてくれる相手でないことはよくわかる。だから、率直に答える。


「さぁ?私は少なくとも知らないわ」


女性はくるりと横を向き、片手で顔を覆い被さり、その目からは涙が溢れて来た。感激した。あまりにも嬉しくて、泣きながら笑ってる。

仕草や行動、言葉の一つ一つが狂気に満ち満ち満ち溢れていた。そこに意味など求めてはいけないのだろう。感情のままに大きく口を開ける。


「嗚呼、あゝ!お久し振りです。」


久し振り?何を言ってるのだろうか?会ったのはこれで初めてだ。少なくとも今の私は……ね。


「地の王よ。」

さて、2話目でいきなりの展開。

タイトル名の終わりも何を指してるのか。

矛盾しているように見える謎。

では、次の話をお楽しみにー!



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