表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大罪庭園-taizai teien-  作者: A-est
第一章「強欲のフェアツェルト」
18/47

第十八話「存在の在り方」

セエレ編1-7「オウディオス」

フェアツェルト編1-1「レケ」

「「「「やっと来たか真打ちぃぃぃ」」」」」


大地の杭全てから消滅し、その蛇の表情が明らかににやりと笑みを浮かべるように歪む。後ろの顔達も歓喜していて、笑ってる。


「「「貴様を殺す為だけにセエレを餌にここまで来たのだ。」うれしーねー」ウレスィ」「アハハハハハ「ははは」「haaaa!」」


傷が塞がれそうになった瞬間、フェアツェルトは見逃さずに魔法を放つ。


《超圧縮・大地の杭》+《超圧縮・大地の杭》=《餓え枯れた土杭-スターブ・アーステイク-》


あまりにも圧縮し過ぎて周りの全てを取り込もうとする杭と成り果てた禁断混合魔法。周りにあるアザゼルの体はまさしく養分である為にそれを無尽蔵に吸い取り、少しずつ大きくなっていく、それを見て危機と感じ取ったのか、即座にそれらを引き千切り脱出を試みる。


「痛いなぁ。僕も多少は痛みに慣れてるけど、だからってこの仕打ちは無いんじゃないかなぁ。」


一種のうちに再生を果たす。それと共に今度はこっちの番だとでも言わんばかりに魔法の発動をする。魔王達はそれぞれが何かしらのオリジナル曲混合魔法を持っている。それぞれによって得意な属性が違うのでかなり特性もバラバラとなるのだが、彼の発動する魔法は《火雷神の双槍》が大々的な例だ。低コストで発動出来るので連射が可能な割に高威力を持つというものだが、《餓え枯れた土杭》は高コスト掛かる上に相当の追加能力も持っている。当然アザゼル本体が持つのは全く別の魔法だ。


《死王降臨》


過去に魔王となった者の中から二人をランダムに呼び出し、敵と戦わせるという魔法だ。元天使というのもあり、ちょっとばかしこの世界の真実にも触れている。それの応用をしたのがこの魔法。尚、どんな魔法を合わせたのかはわからないが、本人は過去に混合魔法と言っていた。


『名も忘れ去られし魔王』が召喚される。それと共に明らかにアザゼルの魔力が底尽きたのが見られた。つまり、アザゼルからはもう魔法が飛んでくることは少ないと見て良いだろう。


一人目の『名も忘れ去られし魔王』は体中から手で出来ている。黒いまん丸の顔に白く光る目らしきものがある。それ以外は無数の手によって構成された体を持ち、明らかに他の悪魔とは異質な存在である。その手にもつは柄が手の形をしている剣。高級そうなマントを羽織ってることからも貴族らしき風貌をしてる。


二人目の『名も忘れ去られし魔王』は4つの黒い翼を持ち、そこそこ格の高い様子が見られる。黒い鎧を身に纏い狐のお面を被っている。鳥の脚を持っていて、少し違和感のある見た目だ。その鎧に合うレイピアを携え、召喚魔法により操られてるとは思えない程に堂々とし、生前と変わらぬ威圧を持っている。


「ふふふ、どう?それじゃあ、ラストゲーム始めようか!!」キャキャキャ「ケラケラケラ」ハハハハハ」」


顔達が勝利の美酒に酔うかのように歓喜の声を挙げる。心底楽しそうに横に付いた6匹の蛇がうねり付く。少なくとも一人は既に魔王を倒している者がその中に居る。しかも、それと同等レベルの者が4人が居るにも関わらず、明らかな余裕を見せている。

確かにお邪魔虫が二人ほど居るには居るが、逃げるくらいなら可能だろう。よって、実質的なハンデはない。つまるところ、召喚した二人の魔王に絶対なる自信を寄せているということだ。


真っ先に動いたのはアザゼル。憎き相手のフェアツェルトの方向へと突っ込みに行った。その巨体が通ったのだから、真横にいた魔王は強制的に避けざるを得なくなり、その避けた先にいた者へと攻撃を仕掛ける。


レイピアの魔王の踏み込みは秒を軽く超えており、レイピアの鋒がアーデルの目と鼻の先にまで近付いたのに気付いたのは、頭蓋骨の丁度中心へと刺さる0.1秒前のことだ。人間の反応速度ならばもう避けることは叶わない。もしかしたら、マーリンなら避けられるかもしれないが、マーリンのように数百年生きた一種の化物ではなく、まだ生きて間もないアーデルには不可能に思えた。但し、アーデルの体が半分光で出来ていなかった場合に限る。


そう、既に自身の愛剣の能力により半光体にしてある。完全な光となると相当の維持魔力費が掛かるのと体力も消耗するのだが、半分なら必要毎に使えば問題ない。最も見える速度は常に普通の人より圧倒的にゆっくりなのだから、彼女から見たその神速は初速度は見辛かったものの、そこから貫く瞬間に少し速度を緩めてしまったことにより完全に見切っていた。


軽く横に首を振り、左手の盾で上に弾く、流れるように右手の剣を左上から斬る。バックステップにより、その剣をゆうに避けて、そのまま軽く踏み込み、剣が下へ振り切ったことを確認しつつ、神速のレイピアによる突きで残像が浮かび上がる。ある程度のランクの持ち主でもそのどれが本物なのかは見分け辛いだろう。


実際はそのどれも本物で、当たった瞬間にそれを止めそのまま抉ってくるのは間違いない。ただ、それも最初から見ている状態から始まるのならアーデルにとってはステップを踏むようなもの。タイミングよく盾を前に出しその全てを捌き切る。軌道が変わっても盾をくるりと回したり、斜めにしたりなど工夫をする。


それだけ軽快な盾なら既に壊れてもおかしくはないのだが、流石は竜から作られた盾だ。魔王の攻撃とて壊れる様子はない。魔王種と竜種はあらゆる面において拮抗しているというわけだ。いや、竜種の死骸なのだから、竜の方が一枚上手かもしれない。


もう一人の王はグランニャーノへと向かう。不気味な片手剣を携えて、突然躓く。それはグランニャーノにとっても予想外の出来事であったが、その王にとっては予想範囲内のことだったようで、横に倒れた瞬間に腰から恥骨辺りに伸びていた腕がたった一本で体を支え、真横の状態で静止するとともにそのまま足を切り取ろうとするかのように剣を横薙ぎする。


そんな今までに見たこともないような攻撃にもグランニャーノは無表情で対応する。障壁を張り斬撃速度を遅めつつ上に跳ぶ。ただ、壊されることはすでに予測していたがほんの数枚の障壁では彼の剣の速度を下げることは叶わず、完璧に真っ二つにされ、軽く踝を斬られる。


歩く分には問題ない程度なので、特に気にすることもなく、そのまま下に居る魔王に向かって氷の杭を放つ。その反動で自分は後方へと下がる。杭は障壁を貫通し、魔王の横腹を抉った。それと共にその周辺の手が臍辺りを中心に開き、その杭が全くのダメージとして加算されていなかったことに気付く。


寧ろその杭を横腹にあった腕がそれを引き抜き発射してくる。手にある氷の剣でそれを弾く。強度がありすぎて原則と軌道の変更までにしか至らなかったが、周りの戦闘メンバーは無傷であるし、何の問題もない。


その杭の攻撃でわかったのは、恐らく発射系統は基本的に無駄だろう。鉄処女さえも、複数の手を総動員させて、奪った杭を他の杭に当て、結果的に無傷という状況になりかねない。それに複数の手を全て開いた時点で大抵の杭は体をすり抜ける可能性もある。可能性がある以上、魔王相手には使えない。となると、使うべき魔法はただ1つ。


もう片方の手にも氷の剣を生成し双剣とする。彼女はもとより双剣使いの魔法剣士なのだから、最も得意な戦法で行くのが正しい。

余った魔力の全てを防具とする。


《冱て乖く氷の化身》


自身を氷と化する。自身の体を普段から擬似的に光化としてるアーデルと少し似ている。彼女の場合は剣の能力である為に魔法名を固定せずともその剣が媒体となっているのだ。だから、剣が無ければ化身シリーズの魔法を発動していただろう。


フードの全てが白く染まっていく。元から無表情ではあったが、どんどん氷と化していく度に人間味がより消えていく。そして、歩く度にその箇所が一瞬にして凍りつく。とある者が氷の女帝と称したが、それに相応しき風貌だ。


体の全てが氷の魔法によって力が増してるせいか、踏み込むと共にその魔王の真横へと瞬時に跳躍し、腕を一本切り落とす。切断面は凍りつき再生をさせない。如何にも再生力のありそうな敵であった為にその付属効果は相当聞いただろう。実際のところ、凍結されてなかったら間違いなく腕と腕がくっついていた。


魔王も気付けば一本落とされた事実に基づき、グランニャーノへの対応を迅速に考え直す。自分より下のものではなく、同等の相手だと認識し直す。即座にその周辺の手を使ってグランニャーノの体を捕まえる。それは早計の判断だ。その手は凍りつき手にはもう感覚がないだろう。触れる事ができないとわかると共に初めて後方へと下がった。その瞬間に忘れずに剣を横薙ぎする。その剣の速度は目に見えており、片足を1歩後ろに下がることにより、ギリギリの差で掠めることもなく避ける。


そんなグランニャーノを見てアーデルは自分を恥じた。少しでも自分の手を見せぬようにしていた卑劣な自分に対して。少々高潔だとは思うがそれこそが彼女であり彼女の強みでもある。


慎重になどならず、即座に敵を倒すことを先決する。光化の深度を深めるが、完全にはならず次を相手できるようにはしておく。更に速度を増したアーデルは魔王のレイピアを受け流すだけに留まらずその間を縫って、反撃を返す。それにより、魔王も仕方なしに攻め手を減らし、防御に回ざる得なかった。


少しずつではあるが、拮抗が崩れ始める。魔王とはいえ今は操られの身。強制され意志のない攻撃など次第にボロが出て当然だ。防御にも手が回らなくなってきた辺りでアーデルの勝利は確定と化する。


更に深度を上げることにより、完全に相手の一手先に立ち、完全に自分の攻撃が2回に1回は当たるようになる。そして、終わりはあっさりとつき、トドメの一撃を入れる。


その特徴的な翼を使わなかったことからも本気が出せていないことが伺える。アザゼルによる魔法のせいなのか、その魔法が不完全だったのかはわからないが、他の者へと救援に行かなければならないので助かった。


グランニャーノが少々梃子摺ってるのを確認し、手が沢山ある魔王へと向かった。


「マーリン、積もる話もあるだろうけど、今はゴメンね。」


「いや、構いませんよ。フェアツェルトに出会えただけでとりあえずは満足です。」


「はいはーい、話「終了!」折角「久し振り~!」に会えたってのに、僕と「鼻鼻鼻ハナ」さないだなんて、「ヒッど~イナァぁぁ」!!」


「話す暇も与えてはくれませんか。」


アザゼルの機械というか奇怪というか耳を劈くようなそのうるさい声を聞きうんざりとするような顔でマーリンが返答する。友との感動的な再会を遮るのがよりによって、面倒な相手というのは実に不愉快であるのだが、今は守るべきものが出来たし、時間もあまり無いのも確か。感動のあまりレケを一瞬でも忘れていたのは実に恥ずかしい。我を忘れるなど幾年ぶりだろうか?


目の前にいるデカブツからは魔力はもう殆ど感じられない。つまり、最も弱体化しているということだ。今仕留めるのが好機である。


しかし、先程の超速再生が果たして魔力によるものだったのかだけでも確かめなければならない。よって、残り数少ない光の槍を使うことにも躊躇なく使える。


「其れは光の中でさえ煌々と感じる聖なる槍。……」


マーリンが詠唱を始める。その詠唱の最初の文を耳にすると共にアザゼルも何をしようか直ぐに察した。恐らくはアザゼルも過去にこの魔法で何かしらの嫌な思い出があるだろう。数百年も生きていれば必ず何人かは出会うものだ。その脅威を知ってるからこそ、マーリンへと突撃をしにくる。魔力がないからこその単純な物理攻撃だが、それでも障壁を壊せるほどの力の持ち主だ。マーリンとて強化魔法を掛けているとはいえ、激突すればひとたまりもない。


だからこそ、フェアツェルトが横槍を入れる。

大地の杭を弧を描くように発射し、逃げ道を無くす。よって、必然的に跳ぶか多重障壁のどちらかになる。アザゼルがそらに跳ぶという選択をすると共にそこに向かって大地の杭を連射する。落ちる瞬間も見逃さず撃ち続ける。その全てを残りカスの魔力で耐え忍ぶものの次第に掠る程度の杭は見逃すようになり、マーリンまで至近距離へと接近すると共にマーリンの魔法が発動する。


「《煌き穿つ聖槍-ザ・サン・スピアー-》!」


完全詠唱の魔力上乗せは破棄して湖に放ったときの数倍に達しており、アーサーのときと同じ威力を持っている。アーサーは特殊な方法で躱したが、本来ならそんなことは不可能なレベルでの物量なのだ。当たれば必殺。当たらずとも必中。地形を変える程の力がアザゼルの巨体へと投げられる。


光り輝く槍がアザゼルの体内に入ると共に体中から光が零れ落ち、次第に周りの全てを光で覆われる。光が止み、そこにはもうアザゼルの姿は無かった。これにより、操られていた魔王達も死を取り戻し消え去るだろう。


気付けばフェアツェルトは消えていた。しかし、それよりもレケを覆っていた障壁が消えて落ちていく。それに真っ先に反応出来たのはセリエレであった。その後にフェアツェルトが居なくなったことにも気付いた。


そんな安心からか『名も忘れ去られし魔王』が未だに動いてることにグランニャーノは気付けなかった。その片手剣でグランニャーノの腕を狙う。その間をアーデルが愛剣で突くことにより、盾の代わりとなりぶつかる音に気付いたグランニャーノが即座に氷の杭で反撃する。


「アザゼルは死んだ筈なのに…何故生きてるんですか!?」


(召喚魔法の仕組みが違うかも…。)


「幻故不滅也。幻王オウディオス、見参。」


剣で切りかかる。それだけのことなのに、手から手へと持つ手を切りかかる途中で変更する。そんな荒技により何処から来るかわからない斬撃が可能となっている。明らかに先程とは別人。召喚魔法に縛られていたのは間違いなく、今のこれこそが本来の攻め方なのだろう。


       ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦


マーリンがレケに応急処置を施している。少なくとも呼吸が止まってから数分は経っている。まだ間にあう段階であるので、回帰魔法を心臓に掛けて呼吸を促す。その効果は直ぐに現れ、自分自身で息をするようになるまで回復した。全くもって余裕とはいえ、自身の大切な友人の一人が死にかけたのだから平静でいられるはずも無い。


一息ついて、未だに顕現している謎の魔王へと参戦をする為に立ち上がろうとすると、レケが起き上がった。


「レケ!怪我はありませんか?」


いつものように声を掛けるもののレケに反応はない。それどころか、突然セリエレに命令をした。


「主レケの名において命ずる指定の位置まで移動せよ。」


強制的に命令させられたことにより、セエレの意思関係なく座標操作を行う。見える範囲内でしか跳べないとはいえ、レケの魔力が遥か彼方へと移動したのは間違いない。


同時にレケの意識が戻ってないように窺えたことから、最悪の可能性が頭に浮かび上がった。唯一、動いていない死んだままの名も忘れ去られし魔王。アレは本当に死んでいるのだろうか?


「セエレ!レケを追いますよ!」


その言葉に正気を取り戻したセリエレがマーリンと共に先程飛ばした方へと瞬間移動する。その座表に移ったにも関わらず、レケの姿は既にない。只、長年一緒に居たのだから魔力の質くらい覚えてる。微かに残るその魔力を辿る。


普段のレケにしては明らかに異常な速さで街の外へと消えていく。そのレケが向かった先こそ、クロノスの塔。古代時代に建てられた塔で未だに不明な仕掛けが多数残っており、今とは比べにならない程難解な魔法のもとに建設されたオーパーツだ。真名は残っている為に用途はわかっているのだが、成功例は今の所ない。


そんな塔の真名とは《死と再生の塔》。

死者蘇生が出来ると言われてる塔である。

久し振りの投稿ですねー。

マーリン編突入なのです!

次回もお楽しみに~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ