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大罪庭園-taizai teien-  作者: A-est
第一章「強欲のフェアツェルト」
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第十七話「欲深き王達」

セエレ編1-6「アザゼル&パイモン」

街の機能の殆どは破壊され、人類が懐かしき滅亡に至りかけていた。ここ最近はあまりに悪魔の活動が停滞していた為にこのような状況に陥るなどついさっきまで誰も思っていなかった。そんな中で遅ながらにも四方のギルドがそれぞれ緊急事態を察知し、動いてるお陰でなんとか、膠着状態が続いていた。

スカーラも自身の能力を使い雑魚悪魔とはいえ、神速で数を減らしていく。アーデルは魔王の一人に足止めを食らってる。主力の一人をそこに留めて置けるのだからある意味では街への損害を減らしてるだろう。マーリンとグランニャーノは共闘し魔王へ挑み、一方グランダは観戦へと決め掛かっていて、何を考えてるのかは不明。様々な思惑がぶつかり合う中でレケ達も必死に戦っていた。


その手に持つまだ名の無い愛銃で襲い掛かる悪魔を倒す。まだ、ギルドの応援が至ってないせいで、そこら辺の住民が襲われている。それの救援により、足止めを食らっているのだが、どちらにしろ魔王に出会ったところで何の役にも立たぬのだから、その救援こそが最善だ。


ただ、残念ながらその悪魔達はレケ達を誘導していた。故に辿り着いてしまう。魔王の一角であるパイモンの元へと。


「やぁやぁ、やっと来たんだね。セエレとお嬢さん。一応、初めまして僕はパイモン。今はアーデルと遊んでるんだけど、良かったら君も一緒にどうかな?」


「させません!」


かれこれ数十分の間、剣戟を繰り広げてる筈なのに息一つ無く、斬りかかる。ただ、常にのらりくらりと避けている相手に対して剣戟などと呼んでいいのかは定かではないが、今の所パイモンが攻撃する様子は見られない。周りで悪魔が他のギルドに殺されようとそんなことは気にしない。目的はただ一つであり、その為にアーデルをこうして留めてるのだから。


アーデルとパイモンのやり取りを軽く見てからどのような状況か把握する。ならば、取る行動は1つ。アーデルの補助だ。


「セリエレ、行くよ。」


「はい。」


レケがセリエレの手を握り、それと同時に能力を行使する。パイモンの背後に転移すると共に、その銃から《大地の支柱》を撃つ。その魔法が空中で固定され発動する瞬間に、更に転移する。

死角からの一発とはいえ、銃の弱点と言えばその音だろうか。パイモンもその音の方向性と魔力の感知でそっちに目を傾けることなくふらっと転けたかのように避ける。しかし、転けることなく一歩、斜め後ろへとよろけただけとなる。


レケ達のコンビネーションはそこから始まる。避けた先には既にセリエレが先回りしており、レケが更に放つ。瞬間、転移と共にまた撃つ。その銃から弾が無くなるまでそれは繰り返される。


ただ、その全てを360度に目があるかのようにゆらりゆらりと避ける。やはり、どんな攻撃も避けてしまう。それは最初から何をしてくるのかわかっているかのよう。まぁ、今の攻撃自体はアーデルすら避けられてしまうのだから、レケ達には力不足だ。


同時刻、変貌したアザゼルを前にマーリンとグランニャーノが攻撃を開始していた。間違いなくこのままここで倒せなかったら大きな損害となるとわかり、残りの魔力など考えず、もう一度禁断武具魔法で光の槍と氷の剣を生成して、それを持ち、自身に強化魔法を掛けて戦う。


翼を羽ばたかせて少し空へと飛んだかと思えば、そのままグランニャーノへと向かって落ちる。全力で回れ右して後ろへと逃げることにより、何とか当たることなく済む。その隙を狙い後ろから槍を一突きするが、大した傷にはならず、そのウネウネと地面を這う蛇に力を込め、その巨大な体をグルングルンと回す。それにより、建物が破壊され、その中に人だったものが破片として空を舞うが、そちらへは視線を向けられず、当たらないことに精一杯だ。


その足となってる蛇が邪魔だと判断し、グランニャーノがそこに向かって、《閉ざされた氷殻》を放ち、遮断する。その断面からは黒い炎が揺らめき、それが蛇の形となり元通りとなる。しかし、その残ったものは炎となり消滅したところを見るに、間違いなくダメージが入ったのは伺える。もしかしたら、周囲の魔力を吸収したかもしれないが、少なくとも自分達の魔力は吸われてないし、魔力探知でも少なくなった気がするので、先程戦った魔王のような不死身というわけではないと思われる。


どちらにしろ、超速再生を持たれてるのはなんとも厄介なことだ。体力か魔力かは定かでないが、その再生に使われるものが尽きて完全に倒しきらなければ、きっと常に万全の状態で戦わなければならない。非常に面倒な敵だ。と思いつつ、自身の魔力量を確認し、先に剣である程度減らすことを先決した。


先程からその顔の一つ一つに意思があるとでも言わんばかりに小言が煩い。皆が同じことを言うわけではなく、顔の何個かは泣いたり憤怒したり笑ったりと統率が取れてない。それがあまりにも気持ち悪くて、恐怖の象徴というよりは狂気の塊だ。そんな顔が突然黙ると共に、突然突進を仕掛ける。


すぐにグランニャーノもその脇へとロールし、避けることには成功したが、明らかに何処かへと向かっている。流石に逃がすわけにも行かず、その強化された肉体を存分に使い、二人は全速力で追い掛ける。


そのあまりの速さになかなか追いつけず、突然止まったかと思えば、そこにはアーデルやレケ達が魔王と戦っている途中であった。


「あらあら、来ましたか。僕も少し待ちぼうけしちゃいましたよ。そろそろ避けるのも飽きてましたしね。さて、自己紹介が遅れました。僕こそが本物のアザゼルです。僕の作ったそのアザゼルは楽しめましたか?全ての属性を無効化するとか流石にチートっぽく作っちゃったかな?とは思ったけど、ごめんね。なんたって作ったとはいえ僕自身だからさ。僕の装備品も受け継がれちゃったんだ。まぁ、結果的に僕は外してるんだけどね。」


その長い話をしてる途中も少しずつアザゼルが黒い炎となっていくのを見守るしかなかった。話が終わると共に、その声の先は馬鹿でかいもう片方のアザゼルの蛇の頭から聞こえるようになる。


「つまりこういうことさ、装備品なんて付けてたら合体できないしね!んじゃ、とりあえず、先ずは欠片を回収させてもらうとしようか。」


蛇がレケに伸びるが、その胴体をアーデルが切り落とし、新たに生成した槍をマーリンが後ろから放つ。それはある程度刺さるものの直ぐに消滅する。その傷跡は深くとも直ぐに再生され、何事もなかったかのように見向きもしない。後ろ足とも言える蛇にグランニャーノが氷剣で切りつける。セリエレはレケが狙われてることに最初から知っていたためにその能力を使い後方へと下がるが、アザゼルは回りながらレケへと突進する。それもセリエレは転移し避ける。


その避けた先はアザゼルの予想範囲内だったらしく、レケの背後から羽の生えた悪魔が体を持ち上げ空へと浮遊する。それに間にあわなかったセリエレは手を離してしまう。当然のこと、それをやすやす見逃すわけもなく槍を生成し、即座に放つ。禁断魔法を雑魚に使うほど焦った証拠でもあったのだが、アザゼルの多重障壁により止められてしまう。


レケが抵抗するものの、悪魔は気にすることもなく、銃を撃とうとするものの、その障壁により阻まれてしまう。


「少しだけやんちゃだなぁ。《完全拒絶障壁-レジェクションバリア-》!」


完全に外と遮断してしまう無属性の禁断魔法の障壁だ。それは魔力すらも完全に断ってしまいその体は魔力を肉体から剥離する。正に禁断魔法と言えるものだ。ただ、その遮断は悪魔の手足すら遮断してしまうものの、空間すらも遮断されてるせいで落ちてくることはない。悪魔の方はそのまま落ちる。


次第に空気すらも希薄となり、レケは意識を失い掛ける。今にも呼吸困難が起きそうだ。死すら有り得る。死んだとしても生き返れる時間帯は約1時間。それまでには決着をつけなければならない。


アーデルとマーリンとグランニャーノはその魔法を知っているがために真っ先にアザゼルへと殺到する。発動した者を殺せばその魔法も解除されるのでというのはよくある話だ。それは禁断魔法とて同じこと。


「はい、後は裏切り者のセエレちゃん殺したら、しゅーりょー♪」


セエレへと突進する。

契約者であるレケは現在隔離されてる為に座標操作が出来ない。そんなことを知らない周りもどちらにしろセエレへと向かうアザゼルを止めるべく攻撃する。アザゼルが聞き捨てならない言葉を発した気もするが、今はそんなことは関係ない。少しでも戦力は残しておきたいからだ。


だが、その巨体と再生能力は簡単には止まらず、3人の猛攻を振り切ってしまう。セエレもなんとか避けようと走るが、アザゼルの速さはそれを超える。どうやっても避けられないことが確定した。


《超圧縮・大地の杭》✕7


当たろうとした寸前、空より巨大な杭が蛇の全てに食い込む。本当にあと数十センチでセエレを轢いていたのだが、危機一髪だ。そして、その魔法を発動したものがセエレの前へと現れる。


「セエレ、後ろに下がってなさい。」


セエレはその者の姿を見て、目を大きく開きそして感激する。つい女性の姿へと戻ってしまう程に動揺が見られる。そんな彼女を見て、呆れ顔で頭を撫でる。それと共にアザゼルへと振り向く。


「アザゼル、久し振りだね。全く、ボクの大切な彼女二人に傷をつけようだなんて少し苛ついたよ。お仕置きが必要だね。」


その者こそ、4人目の魔王アマイモン。


──またの名をフェアツェルト。

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