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34奴目 レイクの場合。

 ――それは同日の夜のことだった。


「お前、本当にそんなところで寝るのか?」

 就寝前、俺はシングルベッドに寝転がりながら、床にせっせとシーツを敷くリフォンに問いかけた。

 何でも彼女は床で寝るらしい。


「はい。牢でも床で寝てましたし。それにベッドで寝るとか、落ちそうで怖いじゃないですか」

「まあ確かにな。実際落ちたことはあるけど」

「でしょう? ところがどっこいイクトさん、床で寝れば決してベッドから落ちることはないのです」

 ドヤと言わんばかりのリフォン。

 ただそれは何と言うか、ちょっと違わないだろうか。

 まあリフォンの考えそうなことではあるが。

 そのうちこいつ『転ぶと危険なので歩きません』とか言い始めるぞ。


「イクトさんもどうです? 床でわたしと一緒に雑魚寝しませんか? 実はわたし、雑魚寝ってちょっと憧れているんですよね」

 彼女は俯き加減で呟いた。

 憧れというのは、一家団欒的な意味合いでだろうか。

 確かに一家揃って川の字になって雑魚寝というのは、なかなか温かみのある絵ではある。

 それに憧れを抱いていると言うのであれば、少しくらい付き合ってあげても――


「だって雑魚って、わたしにぴったりじゃないですか。ふふっ」

 前言撤回。少したりとも付きやってやらない。


「俺は遠慮しておくよ」

「そうですよね。わたしなんかと雑魚寝するなんて嫌ですよね」

「それじゃあお休み!」

 長くなりそうだったので俺は急いでランプを消し、頭から布団をかぶった。

 しばらくしてリフォンの声は聞こえなくなり、部屋はしんとなる。どうなったのだろうとそっとリフォンを盗み見ると、月明かりに照らされた彼女はスヤスヤと寝息をたてていた。

 翼があるからもちろんうつ伏せになって寝ている。その姿は何とも愛らしい。


「夜這いはやばいよイッくん」

「――――っ!?」

 突然のことだった。耳元で声がした。

 驚いて顔を上げると、ベッドの傍にはにやけ顔のレイクが立っていた。


「おぉ何してるんだレイク」

 ビックリさせやがって。


「え、してないよ?」

「え?」

「え? だって本番前なのにわざわざそんなことはしないよ」

「え……?」

 何だかいまいち話がかみ合ってないような気がするが、まあそれはいつものことだからいいとして。


「レイク、その本番ってのは何だ?」

「もーイッくんてばとぼけちゃって。今からリフォンちゃんと気持ちいいことするんでしょ? だからそれにまぜてもらおうと思って、わたしはここに来たんだよ」

「ちょっと待て、気持ちいいことなんてしないけど?」

「どうして?」

 どうしてって聞かれても……。


「なーんてね。知ってるよ、イッくんは奥手なんだよね。しょうがないなあもう。しょうがないから、わたしがちょっとだけお手伝いしてあげる」

 そう言うとレイクは、俺の腹の上に馬乗りになった。

 そして更に、お尻から生えた触手で俺の手足を拘束していく。


「ちょ、レイク、何をするつもりだ」

「安心して、すぐに気持ちよくなれるから」

「き、気持ちよく?」

「そう、粉を吸うんだよ」


「待て待て待て待て、何だそのイケナイ感じの粉は!」

「イケナイ感じの粉じゃないよ、イケル感じの粉だよ」

「意味が分からない! 放せ!」

 必死でレイクの拘束から逃れようとするが、さすがは亜人、ただの人間である俺の力ではびくともしない。

 そしてこれはあくまで拘束であり攻撃ではないとみなされているからか、魔法も発動しない。


「いくよ、イッくん」

 やめろと叫ぶ俺の頭上で、レイクは数度、頭を強く振った。

 すると彼女の頭から伸びた花から、キラキラと輝く粉が飛び出してくる。

 その粉はもろに、俺の顔へと舞い落ちた。


「お前、これって」

「そう、わたし、マンドレイクの花粉。微力の媚薬効果アリだよ」

「ぶぇっくしゅんっ!」

「うわ、イッくん精液飛ばすのはいいけど唾液飛ばすのはやめてよね」

「そんなこと言ったって俺は花粉症なんだよ! はっくしょんっ! ふぇっきしっ! あーもー目も痒くなってきた!」


「何だか大変そうだね……」

「誰のせいだ誰の! へっくしゅっ!」

「え? せっくす? やる気になってきたんだね?」

「何でもいいけどとりあえず目をかかせてくれ!」

「マスをかかせてくれ? 媚薬の効果は抜群だね!」

今日も読んでいただき、ありがとうございました。

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