第1話 「龍の眠り:プロローグ」*
初めに、神が天と地を創造された。
地は茫漠として何もなかった。
闇が深淵の面にあり、神の御霊が水の上を柔らかに覆っていた。
神は仰せられた。
「光あれ」
こうして、光があった。神は光を見て、良しとされた。
一日目
暗闇の中、神は光をお創りになり、昼と夜が生まれた。
二日目
神は空(天)を創られた。
三日目
神は水を分けて、陸と海を創られた。地には草や木が生え、種々の実りが生まれた。
四日目
神は太陽と月と星を創って天に置き、昼と夜とを支配された。
五日目
神は魚と鳥を創られた。
六日目
神はもっと複雑な生物、ありとあらゆる種族をお創りになった。
七日目
神は地上と空の様々な生物を天上から眺められた。そこには、美しい者も、醜い者も、神に似た者も、似ていない者も、全てが等しく存在していた。神はすべてをご覧になり、自分の子らとして愛された。すべての仕事を終えた神は、満足して仰った。
「私の望みのほとんどは既に叶った。これ以上求めては、やがて世界を滅ぼすことになるだろう」
そして、自らの力を龍の形をした盃に込め、地の底にお埋めになると、安息の地にてお休みになった。
―――古のエルフの伝承『創世の章』 より。
次話より、本編が始まります。