森の仲間 きつね坊のトレードマーク
「ねえ、坊。トレードマークの赤い襟巻き、どこにやったのさ?」
きつつき少年が横目で坊に問う。
「ん〜?」
ふふっと微笑んで、丸っこい手を器用に口の前に持っていって坊は答えた。
「内緒」
語尾には音符が跳ねている。
狐目がより一層細くなると、それは悪巧みをしている狐にしか見えない。なんて、内心少年は独りごちる。でも、きつつき少年は、こうも思う。きつね坊の目尻が優しげに揺れたから、何かひと策を打ってからトレードマークを置いてきたのだろうな、とも。
「ねえ、坊。上手くいくといいね?」
坊は黒くて細い目を見開く。そして満面の笑みを浮かべて、うん、と頷いた。
少しの肌寒さと優しい風が吹き抜ける、秋のお話。
優しいきつねと、これまた優しいお友だちのお話。