回想
この庵にきて1年になる。そして明日仏門に入る。どうしてこうなったんだろう。
世情と離れるのを明日に控えけいこは1年前を振り返った。
京都の市街地から少し離れたところに私の勤め先があった。
30を過ぎて未だ寮に住んでいて、人付き合いもあまりない私をみんな変わってるって思っているようだ。
でも私はそんな事全く気にならなくて、1人独身を謳歌していた。
そう…あの日までは。
仕事も滞りなく。人に反感を買うこともなく、私は私のあるがままに生きていました。
ある日、寮の私の前の部屋に荷物が一つ届きました。
新しい人が入るんだな‥そんなことを思いつつ食事をすませ部屋に入ると、コンコンコン・・・ドアを叩く音がします。
誰だろうと覗くと見知らぬ女の子が立っていました。
「今度新しく此方にお世話になります。由宇といいます。よろしくお願いします。」
「あぁー、わざわざどうも。此方こそよろしくね」
簡単な挨拶を済ませると彼女は自室に入っていった。
ふーん、若そうやのにちゃんと挨拶できるんや、そんな事を思いながらその日は眠りについた。
人が入ろうが辞めようが私に直接関係ないことには、殆ど関わらなかったし、関わりたくもなかった。
そうやつて生きてきた。
それでよかったし、それなりに幸せだった。
それなのに私は彼女に心を乱されることになる。