鳴成十矢
テスト。ぐぷぉ。
「なんと言うか…」
歯切れの悪い言いようである。
それも其の筈。
「確かに、ももちゃんの命を救ったのは救ったんだ。でも、心臓に手を当ててご覧?」
ももは、心臓のあるあたりに手を当てた。
控えめな膨らみに触れただけでトクン、トクンと脈を打ち続ける器官は其処になかった。
「ごめんね、ももちゃん。本当は君の命を救ってあげたかったんだ。」
ももは、心臓があった位置から手をそっと放した。
自然と涙が流れ落ちた。
「何で、何で、私は生きてるんですか…?」
問うたその瞳には強い意思があった。
「我々、狂った研究者達というチームはね今Aプロジェクトというモノを進めていてね。その第一段階にSプログラムというモノがあってね。君にはその、何と言うか、実験体になってもらったんだ。」
(Aプロジェクト?)
その言葉を聞いた時何故か、背中がゾッとなった。何故か、だけれど。まあ、いいか。
「続けてください。」
ももは鼻を啜りながら言う。
「君の身体の半分、いや半分以上は機械だ。いわば、改造人間だ。まぁ、改造人間の定義からは遠く離れているけど。君には、その身体で生き続けて欲しい。はっきり言って君の情報は喉から手が出るほど欲しい。我々の、Aプロジェクトには絶対不可欠なんだ。」
「お兄ちゃん…」
「まあ、でも、どんな形であれももちゃんを助けたのは事実だし、もちろん協力してくれるよね?」
鳴成十夜、熟がめつい男である。
「は、はぁ。協力させて頂きます。」
ももは狼狽したが何とか応えた。
「えーっとね、この資料読んで同意してくれる?」
タッチパネルが渡される。
「えーっと、」
その資料にはいろいろ書いてあった。
「柏井ももの存在を抹消…。」
胸の奥がツキンと痛くなる。別に自分が好きとかじゃないけど15年の人生を全否定されたような気分になった。
「ごめんね、それでももともとももちゃんは消えてしまう運命だったんだよ。」
鳴成は、ソッと目を伏せた。
「代わりに名を鳴成十矢と名付けることとする。」
最後の一文を読み終え一息、
「鳴成?!」
つけなかった。
「ああ、うん。僕が、このプロジェクトの最高責任者なんだ。」
とても、そうは思えない。
「随分お若い最高責任者なんですね。」
「いやいや、滅相もない。これでも三十路を10年前に超えている身だよ。」
「いえ、冗談はよしてください。如何考えても二十歳の間違えですよね?お兄ちゃん。」
「3ヶ月前に、アラフォーを迎えたよ。」
「あらやだ、オカマだったんですか。」
「いやいや、まあついに四十だよ。人間歳は取りたくないモノだね。」
「嘘はやめてください。お兄ちゃんからお父さんにしますよ。」
「嘘じゃないのでやめてください。お兄ちゃんって呼んでください。」
「じゃあ、生年月日言ってください。」
「1974年3月12日!」
「死んでください、お父さん。」
「何で?!」
生年月日を即答したことで認めたらしい。
「何でお父さんは40歳なんですか?」
「歳を取ったからだよ。あと、お兄ちゃんって呼んでぇ…。」
「うるさいです、爆発してください。」
「ここに、実験施設ごと爆破出来る1945年に落とされた爆弾の200万倍の威力の爆弾がありまーす。」
和やかに応える鳴成お父さん。
「パパ!早まらないで!」
「くっ、娘よ。こうするしかなかったんだ。」
「好い加減茶番やめていただけますか、Dr.」
突然現れた女性。
「そして、切腹してください。」
「何でそんなに辛辣なの…?!」
物凄い、言われようである。
「初めまして、私は赤崎神麗緒と言います。この変態の助手をやってます。」
※尚、目が覚めたらの麗緒ちゃんと関係あるかはわかりません。ばぁむ自身も。
あと、西暦とかは2014年に合わせてますけど全く違う歴史を辿ったと思ってください。寧ろ、鎖国なかったぐらいに捉えてください。ええ。