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俺は本気で女になりたい!  作者: あああああ
≪起≫俺の女な高校デビュー
3/17

俺の女な高校デビュー 其のⅠ

■◇♀


 門を抜け、少し歩くと玄関があった。

 玄関の前にはなにやら人が群がっている。

 俺も小走りでそこへ向かうと、どうやらクラス割の記された紙が張り出されているようだった。

「おれ・・・私のクラスは・・・ちょ、やめ、足踏まないで。踏むなよ。踏むなゴルァ!!」

 誰に聞かれているわけでもないが、女の子として来ている手前、口調には気を付けなければならなかった。

 なんとか男言葉にならないよう気を付けつつ、足を踏んだ男子に強烈な蹴りをお見舞いする。


 確か、一旦自分のクラスに行き、荷物を置いて待機。時間がきたら入学式といった流れだったはずだ。

 まずは自分のクラスを確認しようとするも、男女関係なく人が集まり押し合っているせいで中々見ることができない。

 さらに元々身長が低いせいもあって、やや背伸びになりながら張り出されている紙を見ようと必死にジャンプする。

 飛び跳ね続けること数分。次第に前にいた人がいなくなっていき、なんとか自分のクラスを確認することができた。

「私のクラスは1-Bか・・・確か2階だったわね。」

 まずは教室がある階へと行こうと階段を上る。

 階段を上りきり、そう長くない廊下を進むと1-Bと書かれた札が壁から伸びているのが見える。

「やばい・・・緊張してきた・・・漏れそう・・・」

 女の子らしからぬ発言だが気にしない。

 それだけ緊張しているのだ、許されるだろう。

 ついに教室の前までたどり着き、横にスライドして開く式のドアの前で深呼吸する。

「大丈夫だ、問題ない。一番いい装備で俺は来ている・・・」

 譫言のように呟きながら、手のひらに人という字を書き続ける。

 最早飲み込むこともせずにひたすら書き続ける俺。傍から見れば完全に不審者だろう。


 そんな俺の背後から肩を叩く一人の影。

 別の世界に行きかけていた俺は途端に我に返り、背後を振り返る。

「!?・・・っ、咲姫かよ・・・。脅かさないでく・・・ちょうだい。」

 振り向いた先には、俺の幼馴染でかつ相談役の天宮咲姫あまみやさきが立っていた。

 長い黒髪に高い背丈。凛とした顔立ちからは頼れるお姉さんオーラが出ている。

 実際に小さいころから俺はこいつに何度も助けてもらっている。本当に姉のような存在だ。

 姉なんて腐るほど家にいるのだが。


「全く、こんなところで何やってるんだか。緊張した時に書くのは『人』でしょ?『入』書いてどうすんのよ。あと、口調が危なっかしいわよ??」

 腰に手を当て、半眼になりながら俺のことを見る咲姫は俺の悩みを知っている。

 つまるところ、俺が実は男だということを知っている数少ない人間だ。

「ほら、こんなところで立ち止まってても意味ないでしょ。早く行くわよ。」

「ちょ、咲姫、やめて!まだ心の準備がうわあああああああああああああああああああ」

 咲姫に手を引かれ教室へ入る。

 教室に入ると、想像していた光景と違わない、ある意味期待を裏切らない光景が広がっていた。


 中学生からの友人なのか、それとも新たに友人を作ったのか、仲良さげに話をしている女子生徒。

 机に突っ伏し、寝ているふりをしているが明らかに起きているであろう男子生徒。

 他にも、本を読んでいる人やスマフォに顔を向け忙しそうに指を動かす人など、とにかくたくさんの人がいた。

 そのすべてがそれぞれ同じような服を身にまとっている。

 中学校と何も変わらない、ごく普通の教室だった。


「ふぇぇ・・・人がたくさんだよぉ・・・」

「急に女々しくなるんじゃないわよ・・・あ、女なんだっけ・・・」

 特別に人が多いことが苦手なわけではないが、状況が状況なだけに必要以上に緊張してしまう。

 右手右足を同時に出しながら、なんとか自分の席へ付く。

 苗字が若い順に席が決まっているようで、俺は教壇の目の前の席に座ることになった。

 ちなみに咲姫は前から2番目。咲姫の苗字は天宮・・・さすが五十音の特攻隊長と名高い『あ』だぜ!そこに痺れる、憧れるぅ!!


 俺が一人で小芝居をしていると、時計の針が重なる音と共にチャイムの音が響き渡る。

 教室中に散らばっていた生徒は各々の席に座り、静かに連絡を待つ。

 

 待つこと数分。


 教室のドアを開け入ってきたのは、背の高いスラッとした外国人の女性だった。

 眼鏡をかけ、長い金髪の髪を揺らしながら教壇の上に歩いてくる。

 胸がバインバイン揺れる。眼福です。


「おい、この人先生?」

「もしかして担任じゃない?」

「まじかよ、俺超好みなんだけど!」

「ば、バインバインですぞ!!」


 クラス中が一気に騒がしくなる。

 そりゃあそうだ。こんなに美人な先生が登場したのに騒ぐなという方に無理がある。

 湧く男子一同と、嫉妬する女子一同。

 俺はどちらにつくべきなのか謎だが、仮にも男なので湧いておく。

 だって俺の方が可愛いもん。

 

 しばらくの間続く喧騒。

 すると、突然美人先生が声を発した。


「Hi there! This is Abby Quinn homeroom this class! Best regards!」

(訳・こんにちは!このクラスの担任のアビー・クインです!よろしく!!)


 一瞬で騒がしかったクラスが静かになる。

 どうやら、この先生は外国語の教師らしい。とてもなめらかな英語で何かを喋った。

 しかし、俺たちは仮にも高校生。この程度の英語なら楽々訳せてしまうのである。

「えっと・・・は、はろー?」

 楽々とか言ったやつ誰だよ!俺だよ!!

 どうやら本場の英語というやつはあまりに発音がきれいすぎて頭に入らないらしい。全く理解できない。

 しかし、周りの人たちは皆意味が分かっているようでそれぞれが好き放題適当な英語を口にしている。

 え、もしかして分からないの俺だけ??


「It is the entrance ceremony from now. I will go to the hall side by side in the hallway. Please side by side in the seating arrangements in the hallway.」

(訳・今から入学式です。廊下に並んでホールに行きます。廊下には席順で並んでください)


 な、長い・・・!だがしかし!!多少は理解できたぞ!!

 言われたとおりに廊下へ並ぶ。

 周りの人たちも同じ行動をとっているところを見ると、正解のようだ。

 これでもちゃんと試験を受けてこの学校に入ったのだ。むしろこのくらいできなくては困る。

 しかし、俺はここで重大なミスを犯した。

 

 どうやって並ぶのかを、しっかり聞いていなかったのである。

 

 いや、聞いてたんだよ?聞いてたんだけど、さ・・・。

 途中からちょーっと訳分かんなくなっちゃったかな!!


 人の流れにのり、廊下へ出る。

 くそっ!探せ!!何かヒントになるものを!!

 並んでいる列を見ながらキョロキョロと挙動不審な動きをする。

 すると、後ろから知らない女の子の声が聞こえる。

「席順だよ、急いで!」

 もうすでにほとんどの人が並び終えている。

 俺は声の主に振り向かず、小さく「ありがとう!」とだけ言うと走って列に入った。


 入学式は、案外すぐに終わった。

 実際はそうでもないのかもしれないが、自分の名前が呼ばれるまではボーっとしているだけだったし、特に長いものだと思っていた校長のお話は夜の5分ニュース顔負けの速さで終了した。

 校長の話というと良い事を言っているのだろうが何の話なのかよく分からなくなるほどに延々と喋り続ける魔の時間だったはず。

 やはりあの校長は何かが違うのだろう。

 そんなことを考えていたからか、その後のことはあまり覚えていない。

 あとは諸説明を受け、聞いたこともない校歌を歌って入学式は終了した。



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